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95 淡井恵子の番外編5
しかしこの後も、時折一緒に食事をしたりお茶することはあっても
交際を申し込まれることはなく、時だけが過ぎていった。
そのため、少し先だがクリスマスが控えており、その頃までに進展がなければ
自分の方から休日のデートくらいは誘ってみてもいいのかもしれない、などと
恵子は思案した。
そのような想いに囚われていた頃、支店内で業績が伸びているのでと
いうようなことから、慰労会と称してイベントがあった。
まぁ、イベントと言っても食べて飲んで楽しく語るといういつもの親睦を
兼ねた会のようなものである。
このイベントは総務などが飲み物や口に入れるものを手配して社内でわいわい
食べたり飲んだりという形でスタートする。
この日、生憎新井は病欠だったため、このイベントには参加していなかった。
部署単独の飲み会は頻繁にあるが支店全体でというのは、年に数えるほどしかない。
例年なら女子同士でワイワイ話をして終わるところだが、今年は新井と共に
異動してきた若い衆が3名いるので自然独身の女子社員たちと互いに
磁石のように寄せられ、いい感じにすでに一つの大きな塊になっていった。
勿論、恵子もその中の一人だった。
新井を狙いつつも、気になっていたもう一人お目当ての技術監理部に
所属している市川達也がいたからだ。