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✿ 桜の華 ― *艶やかに舞う* ―   作者: 設楽理沙


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96 ◇淡井恵子の番外編6  




 この春の異動で技術監理部へやってきた市川達也と総務部の米本美晴は、仕事上接触することが多いこと、更にはお互いの上司が仲が良かったことで、ここ半年の間にすでに3回ほどカラオケバーなどに赴き、課員たちは親睦を深めていた。



 市川達也にはすでに交際している女性がいると聞く。


 これは酒の上でのノリで自分の上司が市川に『米本はいい子なんだ。

 付き合ってみれば……』と勧めた時に聞かされたことだった。


 彼は「あーっ、僕に彼女がいなければお付き合いさせてもらいたいところですが、

そういうわけですみません」と上司に向けてこう言った。


 そして私への気遣いも忘れず「もう少し早く出会いたかった~」と

言ってくれた。



 残念ながら? 彼氏候補から外れてしまったけれど、この時の遣り取りで

私の市川さんへの好感度はupした。


 もしも私が市川さんに対して恋心を持っていたとしたら、悔しさが勝り

そんな感想なんて持っていられなかっただろうけれども。


 私がいいなって思っているのは新井さんだからね。

そう、淡井さんが狙ってる? 新井さん。


 この勝負?

 新井さんと同じ課の淡井さんが断然有利なのよね。


 時々、二人がいい感じに話してる時に割り込んで二人の距離感を

チェックしてる。



 だけどチェック止まりなのよね。


 今回の全部署含めてのイベントで新井さんと話せる機会があればいいなぁ~と

思ってたのに、病欠で不参加だなんて。シクシク。



 しゃぁ~ないから適当に普段仲良くしてる先輩の女子社員と会話しつつ、

一塊になりつつある独身者たちの言動を見ていた。



 へぇ~、結構市川さん人気あるじゃないの。


 えっえーっ、あらま、てっきり新井さん狙いかと思ってたら淡井さんが

市川さんを塊から引き剥がして? ロックオンしてる。



『もしもーし、淡井さん、そんな欲張りなことしてたら、両方逃しますよ』

 



 さて、周囲とそつなく人間関係を築いている米本美晴だが、実は……彼女は

淡井恵子があの日関わった事件を直に目にしていた一人だった。



 世の中悪いことはできないものである。

 そして当時の淡井恵子の立ち位置をも把握していた。



 そう、あの日衝撃的なシーンを目撃するまでは美晴にとって恵子は

朝夕会えば挨拶を交わす程度の存在だった。



 だが、あの日から恵子の男子社員に対する態度が気になるようになって

しまい……気がつくと、彼女のことを観察している自分に気付き、苦笑する

しかない。


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