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67 ◇私だって幸せになりたい

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◇私だって幸せになりたい

―― 水野俊をホテルのラウンジに呼び出した恵子はその時…… ―――




「今日は来てくれてありがとう。

桃に私たちのことがバレちゃってから会えなくなって寂しかったのよ」



「淡井さん、約束忘れましたか? 

妻との間で僕とは今後一切会わないと約束してますよね? 

それで妻はあなたから慰謝料取ることを止めたのですから」



「分かってるわ。

だ・か・らぁ~、こうして会うだけでいいのよ。


たまにこうしてお茶して、お話をして、それだけ。

デートを楽しむだけなんだから。


以前のようにホテルに入るわけじゃありません。

桃だってこれなら文句言えないんじゃないかしら。

だいたい、こんな素敵な人(水野俊)を独り占めするなんて

桃は心が狭すぎるのよ」



「淡井さん、この際桃のことは関係なくてですね、僕の気持ちなんですよ。

僕はあなたとのことをものすごく後悔しています。


桃に許しを請う日々の中で例え昼間のただのデートであっても

許されない行為だと捉えていますし、許すだとか許されないだとかと言う前に、

僕が……僕自身が妻だけを想っていたいのです。


僕は妻を愛しています。


今も、そしてこの先も愛するのは大切に想うのは妻の桃だけですから、

今後あなたと会うことはできません」



「もう、水野くんったらぁ。

そんな建前はよそう? 分かってるって。


だってこうして会いにきてくれたんだもの、桃の手前そう言うしかないのは……ァッ」


なんとか分かってもらおうと話し合いに来たというのに、目の前に座る

おかしな女は的外れな返事しかせず、困った人だなぁと思っていたら、

彼女は突然前方を見つめたまま、次の言葉も発せず固まってしまった。



誰か知り合いでも見つけたのかと彼女の視線の先にいる人物を見るために

俺はそちらを振り返った。



すると桃がいて、こちらに向けて歩いてくるのが見えた。


いけないっ、ちゃんと説明しないとと思い俺は席を立ち


「桃、違うんだ、聞いて……」と話しかけた。



手が届きそうなところまで桃が来た時、彼女が無表情で俺の腹辺りに

拳か何かで叩くようなつつくような仕草をしたように感じた。



怒ってるんだろうなぁ~、けど仕方ないよなぁ~、後でちゃんと

説明しなきゃなーとか考えていたらブアッと足元から力が抜けて

スルスルと自分の身体が床の上に崩れ落ちるのが分かった。



この時自分の腹の辺りに刺さっているナイフを見て、初めてさっきの衝撃は

手の拳などではなくてナイフだったことを悟る。



とうとう自分の不注意で、刺されるほど桃に嫌われてしまったことを知り、

ただただ悲しみに暮れながら俺は意識を手放した。





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