61 ◇見舞い客
私が目覚めた翌日、両家の親たちが『お見舞い』という体で、病室を訪れた。
「桃、記憶が戻らないって聞いたけど、私のことも思い出せない?」
入室するなり私に質問を投げかけてきたのは実の母親なのだろう。
私は、はっきりと答えることができなかったため、何と言えばいいのか分からず、母に返事をしなかった。
……とはいえ、母親と父親の顔は眺めているうちに徐々に思い出してきた。
それと共に、その時そんな風に振舞う私を見ていた4人が、4人とも陰気臭い
表情をその顔に貼り付けているのが見えた。
彼らの顔を眺めながら、徐々に病院に来る前のことが少しずつ靄が晴れてゆくように……眠って凍結されていた記憶が、彼らと面会するという負荷によって溶け出してゆく感じで戻ってくる。
誰か女に自分が低音で囁いている映像が頭に浮かんだ。
私は警察が来て自分を連行していくだろうことを予想していたようで
大人しく拘束され、一緒に建物から出て車に乗った。
私が何やら囁いていたあの女はあれからどうなったのだろう。
あの女は一体誰だったのか?
一旦記憶が途切れたところで私は女医から質問を受けた。
「ゆっくり療養すればおいおい失くした記憶は取り戻せると思います。
2~3日で退院可能ですがどうされます?」




