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✿ 桜の華 ― *艶やかに舞う* ―   作者: 設楽理沙


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56 ◇追跡

  


 この日の夕飯の食卓では、俊はこれまでよりも明るい表情で奈々子の相手を

しつつ私に……『これ美味しいよ、いつも美味しいの作ってくれてありがとう』

なんてことまで口にした。



「どういたしまして」と返したは返したが、私の心境は複雑だった。


 この人は、果たして……明日恵子に会いに行くつもりなのだろうか。


 再度のアバンチュールを楽しむために。

 まだまだ、私を苦しめるために? 


 私と仲直りしたげにしていたこれまでのパフォーマンスは、

 いったい何だったというのか?


 その日近々爪を切らなきゃと思っていたのだが、私は爪を切らずに

研ぐことに集中した。



 淡井恵子は身長150cm体重41kgの華奢な女だ。


 反して桃はというと、162cm49kgとスレンダーだが

見た目よりはるかに運動神経があり、身体能力が優れていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇




 そして翌当日、私は俊が出ていくのを見送った後、すぐに実家へと向かった。


 母親に家に来てもらえればよかったのだが、足の調子が悪いから

奈々子を連れてきてくれたら子守できると言われ、連れて行くことになる。



 それで少しわちゃわちゃしているうちに俊が出ていってから早30分が

過ぎてしまった。


 そのため、駅前まで出てタクシーを拾い、ホテルオークラ神戸を目指した。


 地下鉄とJRを使うのもタクシーを使うのも時間的に大差はないけれど、

1分でも早く着きたかった。



 それに暑い中、歩いて乗り換えをしたりする気にはなれなかった

というのもある。



 なのに、なんということ。休日ということもあり、桃の乗ったタクシーは

渋滞に巻き込まれてしまい、ホテルに到着したのは俊が家を出た時から

1時間半も過ぎてからのことだった。



 それでなくても暑い中での移動で、緊張と逸る気持ちから額からは汗が

後から後から吹き出てくる。



 私はタオルハンカチで汗を拭き拭き、ようやくホテルまで辿り着いた。



『はぁ~涼しい~』

と一息ついたけれど、休んでなどいられない。



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