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第79話:果てしない夢の半歩は、普段の努力から

 謎の違和感に、はて、とクエスチョンマークを浮かべる、アリア。


 (落ち着いたら落ち着いたで、痒みだか、痺れだか、痛みだか、何だかがするな)


 心中で呟き、首を傾げると、大の字で寝っ転がっていたベッドから起き上がり、床に降りたった。

 そして、違和感の元を確認しようとワンピースの首元に手を入れようとした。

 しかし、手を入れた時点でふとある懸念が脳裏を過り、そこからワンピースの首元を広げるのを止めた。


 (伸びたら不味いよな)


 始めて着た時から肌触りが男の時に着ていた服よりも断然に柔らかく心地よい感触であった為、金額を想像してそっと首元に突っ込んでいた手を抜き、降ろした。

 そうして、思い止まったアリアは、何か他に確認の為に良い物はないかと辺りを見回し、部屋の隅に置かれているお誂え向きの家具に目を止めた。

 違和感の元をすぐにでも確かめたいアリアはささっとその前に移動する。

一度耳を澄まして物音を確認したのち、ドアが閉まっていることも確認し終わると、ワンピースから腕を抜き、頭を抜いて、服の長い胴体から身体を全て抜く。

 そして、残るキャミソールをそっと刺激を与えないように脱ぐと、ショーツのみの姿を姿見の前に晒した。

 相変わらず成長の乏しい裸にため息が零れそうになるが、それは今は置いておくとして、つい先ほど気になりだした違和感の元の胸に意識を向けた。


 (う~ん。特に傷があるとか、赤くなってるとかはないかな)


 ほっと息を吐くと、脱いだ服に手を伸ばし、シオンが来る前に着てしまおうと考えた。

 この格好をシオンに見られたら、要らぬ心配を与えてしまうとの懸念からである。

 アリアは手にした肌着を裏返しになってないか確認した後、頭から被ろうとした。

 その時、ふとショーツのみの自身の全身を映した姿見が視界の端に映った。

 アリアは手にしていた肌着を床に戻すと、もう一度、先程よりも目を凝らして今も違和感が残る胸を見てみた。

 今度は意識を更に集中し隈なく胸全体からその中心にゆっくりと視線を向けていく。

 その結果、鏡に対して横を向いていたことも幸いしてか、先程は気付けなかったとても重大な変化に初めて気が付いた。


 「あっ!」


 驚嘆の声と共に、アリアはその変化に茫然と目を奪われた。

 そして暫くすると、今までの努力が報われた事に感極まり瞳から温かい涙が滴り、流れ落ちていった。これは、前のアリアから連綿と受け継がれてきた努力が実を結び、ようやく芽吹いた確かな成長の瞬間であった。

 身体が意識とは関係なく、喜びに打ち震える。

 アリアは涙を滴らせながら、一入の感激と共に今の気持ちを吐露した。


 「真っ平卒業の時です!!」


 果たして前と今どちらが零したものか、はたまた両方のアリアが零した言葉であったのであろうか。だが、今はそのような些末な問題などどうでもいい、アリアの追い求める大願成就への明確な一歩、いや半歩かもしれない、だがしかし明確に刻む、歴史的事象がここに相成った事への祝福だけでいいではないか。

 無駄な努力などない、今は目に見えて結果が現れていないかもしれない。けれども、目には見えていないだけで、僅かな成長はしているのだ。

 アリアは深い感動と大きな感謝を己が胸に贈る。

 ピリッと敏感に走る感触に気を付けながら、ゆっくりと己の身体を両手で抱しめた。


 「・・・ありがとう、お胸様」


 そう零すだけで精一杯の震える口から感謝を伝え終えると、感極まったままでも自身を戒めていく。


 「まだ、ちょっと成長しただけだからな、これからが本当の勝負になるぞ。never give up.パットに頼らない本物目指して、これからも弛まぬ努力を重ねていくぞ!!」


 感動に打ち震えながら叱咤激励をし終わったアリアは、喜びに綻んだ笑顔で姿見を感慨深く静かに見つめていくのであった。

 その大願成就した時の姿を思い浮かべて。



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