第53話「暗殺②」
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「ぐわぁ」
私は目の前が真っ暗になった。
リゼットに顔を地面に押し付けられて。
何が起こったか説明すると、ナイフの投擲を見たリゼットが、私に低い姿勢を取らせる為に、咄嗟に頭を押さえ込んだのだ。
これだけなら護衛として優秀なのだが、流石のドジっ子ホルスタイン。
押さえた時に、勢い余ってそのまま私を地面へと叩きつけてしまい、お陰で情け無い声を上げてしまった。
その上、そのままの状態を保とうとするものだから、目の前が真っ暗と言う訳だ。
と言うか、さっきからグリグリ押し付けられ続けて凄く痛いんだけど!?
しかも、勢い良く押し付けられた時に地面と激しくキスしたぞ!
全く、ファーストキスが地面で、初めてのキスは土の味とか、嫌すぎる……。
あと、皮肉なことに私がリゼットに地面とキスさせられる直前、超反応した赤騎士がナイフの軌道上に立ち塞がり、剣でナイフを弾き飛ばすのが見えたし、レオニーも同じく私の前で鞄に偽装したシールドを持ってスタンバイしたのが見えた。
つまり、私の地面とのファーストキスは無意味だったのだ……。
まあ、リゼットが悪いわけではないのだが……ツイてないなぁ。
それにしても、一体いつまで地面とキスしていればいいんだよ!?
「むぐぅ!むぐぅ!」
私は抵抗を試みるが、
「殿下!まだ安全が確認されておりませんし、新手がいる可能性もあります!今暫くそのままご辛抱下さい!」
私を地面に押し付けている張本人は至って真面目にそう答えた。
ふざけるな!殺す気か!
この天然ホルスタインが!
それより、このままでは私が本当に死んでしまう……誰か、誰か助けて!
と、その時、ごつん!と凄い音がして私は解放された。
「ご無事ですか殿下!」
赤騎士だった。
どうやら私の命の危機を察して助けてくれたようだ。
流石は赤騎士、私は後で何でも好きなものを褒美にやろうと心に決めた。
と、そこで横を見るとさっきまで私を押さえ付けていたリゼットが、頭を押さえながら蹲っていた。
「酷いですよぉ〜、赤騎士様ぁ〜」
「何を言っているの!私の殿下に何てことをするのよ!」
そして、赤騎士様は激怒した。
「何ってぇ、ナイフを投擲されたので殿下に低い姿勢をとって頂いただけですよぉ〜」
「それはいいの!でも、やり過ぎなの!」
「そんなぁ〜」
そうだそうだ!もっと言ってやれ!
「地面にめり込む程に護衛対象を下に押し付ける護衛がありますか!?ブチ殺しますよ?」
「ひぃ〜申し訳ありません〜」
リゼットは土下座して謝罪を始めた、赤騎士に。
「全く!レオニー!」
「はい」
今度は怒りがレオニーに向いたようだ。
「貴方は部下に一体どのような教育をしているの?」
「大変申し訳ございません」
と言いながらレオニーはリゼットをギロリと睨んだ。
「ひぃ〜、申し訳ありませんでした!レオニー様、セシ……ぐはぁ」
「もう黙りなさい」
遂に怒りが頂点に達した赤騎士がドジっ子リゼットにゲンコツをお見舞いした。
だが、ちょっと可哀想なので助けてやろうか。
「まあまあ、私の為にやったことだし、その辺に……」
「殿下がそう仰るなら……」
赤騎士は私の言葉で溜飲を下げたようだ。
ただ何故、被害者の私が加害者のリゼットを庇っているのだろうか?
「ありがとうございますぅ〜、殿下ぁ」
目をウルウルさせながら私に感謝するリゼット。
と、そこでレオニーが何かに気づいた。
「ところで、殿下。お顔に傷が……」
「む?さっき擦ったかな」
そう言えば顔がヒリヒリする。
思わず手で触ると、指に少し血が付いていた。
別に私はこれくらい気にしないのだが……。
直後に横でブチっと何かが切れる音がした。
「リゼット貴方と言う人は!殿下のお美しい顔に傷を付けるなど……万死に値するわ!」
ガシッとリゼットの頭を鷲掴みにすると赤騎士はそのまま彼女を何処かへ引きずって行った。
「ひぃ〜お〜ゆ〜る〜し〜をぉ〜」
さらばだ、リゼット。
もう会うことは無いであろうリゼットを見送っていると、
「殿下、大変申し訳ございませんでした。部下の不始末は全て私の責任でございます」
レオニーが、謝罪した。
「いや、私の方こそ我が儘を言って結果、こんな事態になってしまったんだ。申し訳ない。それに……」
「それに?」
不思議そうな顔でこちらを伺うレオニーに私は悲しい事実を告げた。
「私の所為で暗部員を一名失うことになってしまったのだから」
と、その時何処からか悲鳴が聞こえてきた。
「ひゃあああああああああ!命ばかりはお助けをおおおおお!胸が千切れますううううう!」
「「……」」
なんか意味不明な叫びが聞こえたような……。
ま、いっか!さあ、帰ろうか。
「……レオニー、撤収だ」
「……はい」
ああ、今日も疲れたなぁ。
お読み頂きありがとうございました。




