7 そうだ、働こう
人も魔族も分け隔てなく暮らす商業の町
町はどこも活気にあふれていた
見たこともない工芸品や装飾に目移りしていると
アルマのお腹がなった
イア「お腹すいた?」
アルマ「う、うん」
とりあえず、食べ物を売っているところを見つけようと
あたりを探っているところで気づいた
お金がない...
これは由々しき事態だった
お金がなければ宿にも泊まれず買い物もできない
イア「ど、どうしよう」
ポツリと漏れた言葉を聞いてアルマは言った
アルマ「どうしたの?」
イア「そ、その、お金が...」
黙っていてもしょうがないのでイアは正直に言った
アルマは少し残念そうな顔をしたが、掲示板を見てこれだ!という感じで
「ねーねーこれみて!」
と、掲示板に貼ってある一枚の紙を指差した
イア「住み込み従業員募集、まかないあり?・・・」
アルマ「ね!いいでしょう!」
(なるほど、これならご飯も食べれて住む場所も手に入る)
イア「行ってみようか」
アルマ「うん!」
イア「えっと、場所は..すぐ近くみたいね」
イアとアルマは大通り沿いにある宿屋「猫猫亭」へと向かった
扉を開けるとカランコロンと言うベルの音とともに中の活気が響いた
店主「いらっしゃい」
大柄の店主が言う
どうやら獣人のようだった
店主「宿かい?それとも何か食べるか?」
微笑む姿は優しげだった
イア「あ、あの、大通りの張り紙を見たんですが」
店主「お、従業員募集のか」
「ちょっとまってくれ」
「おーい!ニリャ!ちょっときてくれ」
店主が呼ぶと、活発そうなかわいい猫耳の少女が奥から出てきた
ニリャ「なに~父さん」
(と、父さん!?)
イアは少し驚いた
(顔が違いすぎる...)
店主「顔が違うとか失礼なこと思ってないか?」
図星を突かれたが
イア「そ、そんなことないですよ」
否定はしたものの、やはりまじまじと見てしまう
店主「こいつは母親似でな、人間と獣人のハーフなんだ」
「いやぁ、母親に似てくれてよかったぜ」
「俺に似ちまってたら看板娘なんてできたもんじゃねぇからな」
店主は豪快に笑った
ニリャ「父さん、そういうのいいから、用件を言ってよ」
少しジト目で父親を見ながら言った
店主「おお、そうだ」
「この子が募集の張り紙を見て来てくれたんだが」
「わしはいいと思うぞ、可愛いし」
「だがまぁ、一応お前の意見も聞いときたくてな」
ニリャ「ふ~ん」
ニリャはイアとアルマの体を探るように見た
ニリャ「その仮面、なに?」
イア「あ、その、昔強盗に斬られて、隠してるんです」
ニリャ「あ、なんかごめん」
「まぁ、うん、そういうことなら」
「いいよ、採用で」
店主「おおそうか!」
「良かったな!」
「ところで、名前聞いてなかったな」
イア「イアです。この子はアルマ」
アルマ「アルマです!よろしくね!」
店主「おう、わしはラオ、この店で店主をやっとる」
「で、こっちが娘の...」
ニリャ「ニリャだよ、よろしく!」
「いやぁ助かるよ」
「この前ホール係がやめちゃってね」
「うちは見ての通りおかげさまで繁盛させてもらってるんだけど」
「やっぱ2人じゃきつくってさ」
ニコリと笑うニリャには看板娘らしい華やかさがあった
ニリャ「住み込みだったよね?じゃぁ部屋に案内するからこっち来て」
イアとアルマはニリャの後ろについて三階に上がった
一番奥の扉の前につくとニリャは振り返った
ニリャ「ここだよ、ちょっと狭いかもしれないけどね」
中に入ると、日当たりの良い窓と綺麗に整備されたベッド、小さな棚が見えた
イア「いいんですか?こんなきれいな部屋」
ニリャは早速ベッドにダイブしているアルマを楽しそうに見ながら答えた
ニリャ「いいのいいの、前いた子が使ってたとこだし」
「住み込みの子はここに住んでもらうことになってるから」
ニリャ「あ、それと、そこに従業員用の服置いてるから」
「それに着替えて下に来てよ」
指差した方を見ると幾つかの服がかけてあった
二リャが部屋から出ると、イアはまず白皮のローブを戻した
そして、置いてある服を手に取る
完全にメイド服だった
イア「...着なきゃ、だめ?だよね」
ふとアルマを見ると、すでに着替えてニコニコ笑っていた
イア「ふぅ~...」
溜息をつくと、自分のサイズに合う服を着た
下に降りると客の男たちから歓声が上がった
客「おお!いいねぇ~、前の娘より美人じゃねぇか!」
客「お前ナンパするなよ!どうせ振られるんだからな」
客「うるせぇ!」
客「お、そっちのちっこい娘もかわいいね!」
客「お前、犯罪だぞ」
客「そこまで落ちぶれてねぇよ!」
様々な人種の客たちに歓迎され、イアとアルマは
「「よろしくお願いします!」」
と、声を揃えて言った
ニリャ「早速だけど、アルマちゃんはこっち、厨房を手伝ってよ」
「イアは注文とって料理運んでくれる?」
イア、アルマ「「はい!」」
ようやくお客さんもいなくなり、ようやく閉店時間になった
ふたりともへとへとになり椅子に座った
ラオ「お疲れさん、ほれ、これでも食べな」
店主のラオは豪華な食事を出してくれた
イア「え?こんなに豪華な食事、いいんですか?」
ラオ「いいってことよ!お前さんたちのお陰で大繁盛だ」
「これからも、よろしく頼むぜ」
イアはこの世界で初めてとなる食事をした
どれもこれも美味しく、幸せとともに噛み締めた
ふと横のアルマを見ると、ものの数分でたいらげていた
満腹になった二人は、ニリャが沸かしてくれた風呂に入り、就寝した
(優しい人たちでよかった、明日も頑張ろう)
疲れていたイアはすぐに眠りに落ちた
宿屋の雰囲気が好きです
でも働くのは嫌です
異世界で働くなら絶対鍛冶屋になる




