9話
「映画面白かったわね」
「そうだね」
私たちはさっきまでお昼から上映予定の映画を観ていた。
薬を飲まされたことで、小学生になってしまった探偵の物語である。
「久しぶりにボナン君を見たわ」
この作品は人気コンテンツで毎年のように映画館で上映しているのだが、観るのは小学生の時以来かもしれない。
「俺もそうだよ」
もちろん2人で一緒に来ているのだから、座席は隣同士になるのだけど……思ったよりも距離感が近くて驚いた。
席に座った最初は横にいる彼が気になり、心臓の音がバクバクとうるさくて落ち着かなかったけれど、映画が始まればそちらに集中することができたのでよかった。
「そろそろお昼にしようか」
確かにお昼にはちょうどいい時間だ。映画の上映開始が11時からだったので、それから2時間が経って今は13時半まえ。
「ええ」
「オムライスとかどうかな? 深井さん何か食べたいものとかある?」
「うんん、オムライスがいい」
「じゃあ行こっか」
「うん」
もしかして私がこの前オムライスを好きって言ったから提案してくれた…?
だとしたら少しだけ嬉しいかもしれない。もちろんそれで私が彼を好きになるとかはないのだけど。
・・・
「いらっしゃいませ! 2名さまですか?」
「はい、そうです」
お昼時とあってお店が混んでいるんじゃないかという心配もあったが、ギリギリ並ばずに入ることができた。
「なに頼もうかな。深井さんはどういうオムライスが好きなの?」
「普通にスタンダードなオムライスも好きだけど、専門店に来るとシーフードが入っているのを食べることが多いかな」
「海鮮系が好きなの?」
「そうね」
「じゃあ次に遊ぶときは回転寿司に行こうよ」
「ええ」
うん?
今サラッと次回のデートの約束を取り付けられなかった?
なんという策士ぶり……これだからモテる男は…
やっぱりあれだけ女子生徒からの人気があると、遊び慣れてるのかな…?
なんかそれは嫌だな。
「ふぁー」
まただ……今日の彼は度々あくびをしていている。
彼は本当に私のことが好きなのだろうか?
朝からずっと眠たそうにしてるし、映画だって途中から寝ていた……
私といるのはそんなに退屈だっただろうか……デートしてみたらなんか違ったとか思われてないだろうか……そんな考えが頭をよぎり胸が痛い。
なんでこんな気持ちになるのか……意地を張っていたけど、本当は分かっている。
私は特に面白みのない人間だ……もし飽きたなら早く言ってほしい。期待するのは辛いから…
「眠いの?」
聞くつもりはなかったのに……思わず聞いてしまった
「え…」
「朝から何回もあくびしてるわ」
「あー、ごめん。昨日は今日のデートが楽しみすぎて全然寝れなかったんだよね」
「え…」
なにそれ…人を散々不安にさせておいて…ズルすぎる
さっきまでの気持ちが嘘みたいに晴れていく。
あー、可愛いとか思うな私。こんなことでドキドキして馬鹿みたいだ。
あー、もうこんなんじゃ本当に認めるしかないじゃないか。
彼のことが好きだって……




