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奇跡を見たもの。


「信じられない」

彼は目の前で起こった事に、驚愕するしかなかった。

そこでは息をのむほどの踊りが踊られていて、それと同時にあたりに漂っていた瘴気が消えたのだ。

顔はわからなかった。自分が茂みを揺らした途端に、その誰かは別の茂みに飛び込んで逃げてしまったからだ。

彼は身動きが取れなかった。

春の大陸の温かさや恵みを感じさせる空気ではなく、厳しく何物も寄せ付けない、どこまで行っても許さない冷たい風が、あたりに吹き渡ったせいだ。

「冬の神が降臨したのか……?」

彼は呆然とそう言った。

この春の恵みの大陸に、死と消滅の冬の神が降臨する。

その異常性が分からない彼ではなく。

「冬の大陸は瘴気が寄せ付けられない……のきなみ消し去ってしまうからだったというのか」

彼は呆然とし、そして続けて現れた仲間がこういうのを聞いた。

「さすが聖女様が来ると、瘴気が浄化されるな!」

違う、と彼は言えなかった。何故ならば。

「私の祈りに、神が答えてくれたのね!」

嬉しそうに笑う聖女が、そう言ったからだ。

彼はどこかで納得した。聖女がこの地上に降りている神に助力を乞い、瘴気が浄化されたのだろうと。

先ほどの踊り手は、ただ踊っただけなのだろうと。

それでも、目にその踊りは焼き付いて離れなかったが。

「行こうぜ、聖女様が瘴気を浄化したんだから、この森に用事はないだろ。聖女様を安全な所に連れて行かなくちゃ」

「そうだな」

彼らは知らないのだ。

……この春の大陸の瘴気が、春の大陸の神ではどうにもできない物になり果てているという事実を。


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