番外編 小学生編の年末。ある日のこと。
2017年末に活動報告に載せたものになります。
十二月某日。冬休みに入り、もうすぐ今年一年も終わる日の午前中。私はエアコンで程良く暖まっているリビングのソファに寝転がりテレビを見ていた。
「桐ー、お前今、暇か? 暇だよな」
兄がリビングの扉を開け顔を出した。そして、暇人認定をされた。むむむ…言い返せない。
「何、兄ちゃん」
むくりと起き上がり、兄の方へと視線を向ければ。
「悪いんだけど、コレ。出かけるついでに郵便ポストに頼むわ」
リビングに入って来た兄に輪ゴムでまとめられた年賀葉書を渡された。
「え? 私今テレビ見てるし、出かける予定も今日はないよ?」
葉書を受け取りつつ、首を傾げる。あ、何気に葉書を受け取ってしまってるよ私…!
「あれ? 桐、昨日…『明日は、この間は売り切れちゃってたNisijimaとレーソンコラボの限定プリンが入荷するって聞いたから買いに行くんだ!』って言ってたよな?」
……ハッ!?
「わ、忘れてたーっ!! 早く行かなきゃ、また売り切れちゃう!? い、行ってくる!!」
ソファから飛び出す様に飛び跳ねた私は、部屋着のまま…は、流石に止められたので、マフラーとコートを着てから、兄に小銭入れを渡され――…
「お前…年賀状を持ってくれてんのは良いんだけどさー、財布忘れてるだろ? コレ、持って行けよ」
それは兄の青い小銭入れだった。
「これ、兄ちゃんのだよ?」
「知ってるわ。おつかいの駄賃代わりに、プリン一個奢ってやる。ついでに俺の分も買えたら、買って来てくれてもいいぞ?」
「わあ! ありがとう、兄ちゃん! それじゃ、行ってきます!」
車に気をつけろよー、と言う声を背に。私は家を出てレーソンへと向かった。
「ありがとうございました〜」
ふふふ。年賀葉書をポストに入れて、限定プリンも無事に二個(ラスト二個だったよ!)買えて、ニコニコと上機嫌な顔で家へ帰るべく歩き始めたところで――…
「あら、桐ちゃん? こんにちは」
名前を呼ばれて振り返ると。
「あっ、結、おばさん。こんにちは!」
結と葛西さん家のおばさんが、停車したおばさんの車から降りてきた所だった。
「毎日寒いわねぇ。桐ちゃんもお買い物?」
「はい。兄ちゃ…兄に頼まれて年賀状をポストに。それと―…」
「この前、話していた…プリンを、買いに来たの?」
と、続いた結の言葉に。へへっと笑いながら頷く。
「そう、だったんだ。僕も、買ってみようかな、って思って…」
なんと。
「あ、そのプリン…私が最後の二個を買っちゃったんだ」
何だか申し訳ない気持ちになってしまう。
「あらまあ、そうなの。やっぱり人気なのねぇ。それじゃ、少し先の別のレーソンにも行ってみましょうか、結くん」
しかし。おばさんは全然気にしないと言った感じの表情と言葉で結に話し掛け、結もまた『はい』と頷いている。
「あ、そうだ! 良ければこれ! 一つだけなんだけど、あげる!」
ガサゴソと、ビニール袋からプリンを一つ取り出し、結に差し出す。
「ううん、大丈夫。そこまで、食べたいとは思って…なかったし…(あれば、桐にあげようと…思っていただけだから)」
けれど、結は首を左右に振り受け取らない。
「うん? ごめん、今何て言ったの?」
「気にしなくていい…こと、だよ」
「そうなの? まあ、そう言うなら…。じゃあ、はいっ!」
首を傾げてから。私は、ちょっと強引かもしれないけど結の手を取り(わ、車から降りたばかりだからかな? 暖かい!)プリンを一つ。その手に持たせた。
「後で感想聞かせてね! って、私が作った訳じゃないんだけどねー」
「え、えっ…?! 桐?」
珍しく慌てる結にニッと笑って『それじゃ、またね、結! 良いお年を! 来年もよろしくねー!』と、手を振って、おばさんに『失礼します』と言いながらペコッと頭を下げて。私は今度こそ、コンビニを後にした。
ちなみに。兄には小銭入れを返す際…私が隠し持…いや。保存しておいたお菓子の中から、新発売のポテチ(二つ買って置いた)の内の一袋を渡しておいた。特に何も言われなかったので問題はないみたいだ。プリンに関しては言うまでもない(と言いつつ、言っちゃうけど!)。美味しい、美味しすぎる、美味しかった…!!! また絶対買おう!!! である。
更に、ついでの話。兄の年賀状は無事に、三ヶ日中には友人達に届いたらしい。(せっちゃん談)良かった、良かった。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます!連載凍結状態ですみません…!