10
らすと!!
連続投稿です!
確か、サラリーマンはこう言っていた。
「この能力はね、互いの合意があれば譲渡できるから。」
きっと、彼が疲れたような表情をしていたのは今の自分と同じ理由だった。
人に疲れたのだろう。解放されたかったのだろう。
俊明は、心が読めるようになりたいと思っている人を探した。
その人は割とすぐに見つかった。女の子だった。
ーーー平田くんの心を知りたいわ。どう思われてるのか怖いけれど、それでも知りたいの。どうやったらわかるかな。ーーー
その少女は、ある少年に恋焦がれていた。
その人の心を知りたい、そしてあわよくば手に入れたい。
そんな切々とした気持ちが伝わってきた。
俊明は、畜生、拓のヤツ、モテやがらァと思いつつ女の子に声をかける
「...拓はやめとけ。」
「へっ?」
「君、拓のこと、好きなんだろ?」
俊明は少女に話しかけた。
「えっ、なっ、どして?」
「見てれば分かるよ。...拓はな、この前やっと片想いを成就させたんだ。諦めた方が楽だよ。諦めきれないってんならきっと、振ってはくれるだろうけど...」
君にはもっと、いい人がいるよ。
「それでも、それでも私はあの人の気持ちを知りたいの!」
「おすすめはしないけど、心を読みたいってこと?」
少女はうなづく。
「じゃあ、ホントに心を読みたいんなら、心を読めるようになっちゃう?」
「へ?」
「俺、心読める能力持ってんだ。俺はもういらないから、君がどうしても欲しいなら。」
少女はうなづいた。
「嫌になったらさ、誰かに押し付けたらいいよ。心読みたい人沢山いるから。...ごめんな、押し付ける形になって。」
「...私が望んだんだから、私がその結果に責任を持つのは当然だよ。」
俊明はもう一度少女に謝って、少女は心を読めるようになる能力を手に入れた。
この後の、俊明や少女の行く末は誰も知らない。
終わりました。お付き合い頂きありがとうございます。
駆け足感は否めないけれど。
この後の俊明ですが、人間不信こじらせますね。顔には出さないけど。
拓に依存しますね。精神的に。
拓はホントに悪口を言わない人、思わない人な設定です。
元ネタの方の拓?知るか。
心を読めるようになる能力という本来なら手に入れられない能力を望んだ彼は、結局この能力がないことを望むんです。
まさにないものねだりなのではないでしょうか。
私は個人的にこの話の元ネタが好きで、テキトーに組み立てていったんですけど、仄暗いですよね。劇には向かないかな。