T型人材(T-shaped Skills)〜専門バカからの脱却〜
深夜のオフィスの蛍光灯の下で、高橋新は頭を抱えていた。
「またですか……」
開発メンバーのベテランプログラマー、佐藤が腕を組んで突っぱねている。
「俺の仕事はバックエンドの設計までだ。テストコードの作成やUIの確認なんて、俺の専門外だ。他を当たってくれ」
新が担当するプロジェクトは、各自の専門領域に閉じこもり、作業の押し付け合いが起きていた。翌日、新は勉強中のPMPのノートを開き、青いペンで大きく**「T型人材」**と書きつけた。
【PMP試験の重要知識:T型人材(T-shaped Skills)】
概要: 横軸(アルファベットの「T」の上の棒)と、縦軸(Tの下の棒)をあわせ持つ人材のこと。
縦の棒(深い専門性): 自分の本業における高度な知識・技術(例:プログラミング、DB設計など)。
横の棒(広い協調性): 専門外の分野に対する最低限の理解と、他のメンバーを助け合える柔軟性。
試験での出題ポイント: アジャイル開発などの現代のプロジェクトでは、自分の専門しかやらない「I型人材(縦の棒だけ)」ではなく、お互いのボトルネックを補い合える**「T型人材」でチームを構成すること**が推奨される。
新はノートを見つめながら呟いた。
「佐藤さんは完全な『I型』だ。腕は確実だが、自分の領域の外に壁を作っている。だから工程の境目で仕事が滞るんだ」
新は翌日、佐藤の席に向かった。
「佐藤さん。テスト作業を全部やってくれとは言いません。テスト担当の若手がどこで詰まっているか、10分だけアドバイスをもらえませんか?」
「……アドバイスだけだぞ」
渋々応じた佐藤だったが、教え始めると若手の疑問に的確に答え、結果としてテスト作業は劇的に加速した。佐藤の「Tの横棒」が、ほんの少し伸びた瞬間だった。
「知識を暗記するんじゃない。Tの横棒を伸ばす……これがチームの目詰まりを無くす鍵なんだ」
新はノートの「T」の文字を丸で囲んだ。




