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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第三話『その加減知らない馬鹿みたいなお人好し、僕は君を昔から知っている気がする…』とても不器用ないいやつ→友達
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30「キス二十ニ回目、恋の相談と花より団子その一」


★☆


八月六日


 取り引き二十二回目。

 

 気温がバカ高い昼間、照りつく陽射し、熱風が通行人の体力を奪う。

 普段なら俺も項垂れているだろうな。

 しかしながら本日は色々とイレギュラーなことが起き平常運転じゃない。

 

 落ち着いた木目調で統一している店内、何処かで聴いたことある琴のBGM、目立たないよう均一に配置してある植物。

 チョロチョロと循環している水がししおどしへ溜まり、重みから落下して鈍い音が響く。

 定期的に打ち水もしてあり、クーラー掛かっているわけでもないのに涼しい。


 純和風喫茶。

 ダルい暑さとは無縁である侘び寂びの世界。

 そんなテーブル席には俺とシックな格好をしたポニーテールの美人が静座していた。

 畳を敷いてある椅子からはイグサ独特の馥郁たる香りがする。


「こいつは困ったぜ……」

「ああ、非常事態かもしれない。僕は侮っていた」

「右に同じ。その証拠に会長……乙環さんから相談受けてなんだが、この店へ心惹かれて集中できねえ」

「これほどダイレクトに感銘を受けるとは……」


 俺と乙環さんは休みを利用して和風喫茶という名の甘味処でくつろいでいた。

 ……が、内心は雷に打たれたような衝撃で呆然。

 後学の為と軽い気持ちで決めたことを後悔する。


 古民家を改装した和風テイストの店内、けして外国人受けを狙ってない質素な空間作り。

 りんご亭が気取らない昭和ジャズ喫茶ならここはさしずめおもてなしに特化した茶室。

 更に抹茶は本物の茶碗へ注がれていた。


 客層もデート中のきどった若者達か、着物やお出かけ用コーディネートのマダム達で、買い物帰りのカジュアルなおばさんやドリンクバーで何時間も粘る学生が多いファミレスとはダンチ。


「くず餅も生菓子も手作り、抹茶もみえるところで点ててくれる。敵ながらあっぱれな演出。喫茶店にも負けないライブクッキングだ」

「うん。あんみつも絶妙に美味い。彩り豊かな手作り寒天を筆頭に、アズキが甘すぎず、餅を水飴でよくこねた求肥と程よくマッチしている。ちょっとお値段高めだがこのボリュームにこの品質で抹茶のセット料金、五品まで甘味を注文可能なのは恐れ入った」


 元々は迷える乙女の恋愛相談に乗る為訪れたが、飲食店に務める者のサガなのだろう、あれは素晴らしい、これはうちが勝っていると一喜一憂している。

 これではただの敵情視察だな。


「とても勉強になる。あとでノートに纏めておくか」

「いいアイデアだ。僕も便乗しよう。それにしても君と僕は似た者同士だな。よく近親憎悪に陥らない」


 確かに気が合うなと俺は苦笑。

 だが、たぶん根っ子の部分は全くの別ものかもしれない。

 そんな気がした。


「そんだけお互いりんご亭の仕事に夢中じゃないのか?」

「ああ。正直比較ができて楽しい。君はどう感じた?」

「ここの雰囲気は好印象だ。気軽に来れる喫茶店にはない心配り。まるで高級料亭か三星の天ぷら屋だな」

「堅苦しい気もする。あ、今の子可愛かったな。接客も上手い。若いのに作法がよくできている」


 配膳の女の子がにこりと微笑む。


「ああ、でも乙環さんの方が上だぜ」

「身内びいきはよせ。あの大和撫子に始めたばかりのウエイトレスで対抗できるものか」

「関係ねえ。大正モダン着物女給さんに対抗できるのは太古よりポニーテールウエイトレスさんしか存在しないぜ」

「えらい力説だな神無月……」


 萌えを信仰しているオタク達が証明してくれている。

 

 それにどうやら俺はポニーテールメイドが好みらしい。でも、揶揄われるから言うまい。


「それはそうと乙環さん、最近ポニテに凝っているよな?」

「べつに他意はない。この方が動きやすいだけだ。あと学園生に気づかれない為の変装も兼ねている」


 などとかっこいい黒のワンピースを着こなすクール系美少女は語る。

 結構量あるあんみつをぺろりと平らげるギャップは圧巻だがな。

 二杯目。

 デザート好きなのは伊達じゃない。


「そういうことか。てっきりうちの店で好評だからしているのかと」

「学園内は威厳あるイメージを第一にしてきたので髪を降ろしていたけど、動き回っている僕的には髪を結っている方が断然いい」

「言われてみれば活発な会長にハマっているぜ」

「神無月はその……こっちの方が好きなのか?」


 痛っ!

 発言が癇に障ったのか予告なしに俺へ蹴りを入れる乙環さん。

 なので第二発目を避ける為裏の裏を読む。


「そうだな。俺はハキハキとして活動的な女子が好みだぜ。しかも普段みない姿を目の当たりにするとグッとくる」

「たわけ、誰も女性の好みは聞いてないわ。でも安心しろ。プライベートでこの姿を披露しているのは神無月だけだ。彼方にもみせたことはない。今だけは独占できるぞ」


 俺らはこうやって軽口を叩けるほどは信頼関係を構築したようだ。

 出会った頃とは大違い。


「初めての相手ということか。光栄なことだ。ならば乙環会長をよく観察して心のメモリーカードに永久保存しておこう」

「キミハイミワカッテルイッテイルノカ?」

「え?」

「いや何でもない……」


 やはり店内の涼だけでは十分に気温下がらないのか紅かった乙環さん。

 何処か不機嫌だな。

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