第1話 『変身! ブルームピンク!?』
自分のホームページで公開している魔法少女戦隊ものの作品「YumeBloom」を、小説として書いてみました。
よろしければお付き合いくださいませ。
それでは、どうぞ。
その日は、オレにとってとても印象に残る一日だった。
オレ――桃山あおいは、ヒーローに憧れる中学2年生。
小さなころから特撮ヒーローが大好きで、ネットでいろいろな古今東西の変身ヒーローの動画を見ながら日夜研究をしている。
そんなオレの趣味はパトロール。 困っている人が居たら積極的に助けるように常に心掛けて過ごしている。
そうすればきっといつかオレもヒーローに……
「ただいまーっ!」
そんなことを考えながら自分の部屋に入ると、オレのベッドで寝ている女の子が一人……。
それも今とても人気の売れっ子アイドルだった。
「ふあぁ~っ。 ……あ、アオイ、お帰り~」
そういうと彼女――アリサは、薄着でベッドから起き上がる。
「姉ちゃん、なんでオレのベッドで寝てるんだよ?」
「え? そりゃあ、気持ちいいから?」
「気持ちいいって……、姉ちゃんもう人気アイドルなんだし、自分の部屋のベッドで寝なよっ!」
「え~? アオイってば、私で興奮してるの?」
「するわけないだろ! 双子だよ、オレたち……」
オレと同じ顔をした双子の姉――桃山アリサは今を時めく人気アイドルで、普段家に帰ってくることはあまりない。
「姉ちゃん、仕事は?」
「これから行く。 そろそろ愛しのソー君が、迎えに来てくれるはず」
「はあーっ。 人気アイドルがプロデューサーとデキてるなんて知ったら、いつかファンに刺されるよ」
「そんな、○しの子みたいな展開、あるわけないでしょ? ……っと、迎えが来たみたいだから、そろそろ行くね」
「うん、行ってらっしゃい。 ……っと、オレも出かけようかな」
「もしかして、デート?」
「違うわっ! パトロールだよ!」
「ふーん。 まだヒーローごっこなんてしてるんだね」
「ごっこじゃない! こっちは本気なんだよ!」
「はいはい……。 んじゃあ、私、もう行くから」
そんな感じでいつものように喧嘩をしたような感じで姉ちゃんは出て行ったが、オレも姉ちゃんも別に仲が悪いわけじゃない。
* * *
オレのパトロールは曜日によって行く方向が変わっている。
今日は夢猫町中央公園のほうへ行く予定だ。
「あら? あおいくん?」
オレが夢猫町住宅街から夢桜里駅方面へ歩いているところで、声をかけられ、思わず立ち止まった。
「静流姉ちゃん。 今、帰り?」
「そうよぉ~。 あおいくんはパトロールかしら?」
「そ、そうだよ……」
静流姉ちゃんは、近所に住む大学生のお姉さん。
いつもオレに優しくしてくれるきれいなお姉さんだ。
「あおいくん、最近困ったこととか無い? おねえさん、いつでも相談に乗っちゃうわよ」
「大丈夫。 今日も街は平和そのものだよ!」
「……あおいくんのことを心配してるのよ。 アリサちゃんが居なくて困ってない?」
「姉ちゃんはさっき仕事に出かけたよ」
「あら、今日は会えたのね。 じゃあ、アリサちゃん成分を充分補充できたのかしら?」
「?」
「うふふ……。 まだ中学生のあおいくんには早すぎたかしら?」
「よく分かんないけど、もう行くね」
「ええ、何かあったらお姉さんに言うのよ。 なんでも相談に乗ってあげるから」
そう言うと、ひらひらと手を振りながら、静流姉ちゃんは去っていった。
駅前はとても賑やかだ。
ニャスコも近いし、この夢桜里の街で一番栄えていると言っても良いんじゃないかな。
「あ、お兄ちゃんだ!」
そう言ってトテトテとオレのほうに駆け寄ってくる少女が一人。
「あっ!」
少女が駆け寄ってくる途中で思いっきり転びそうになるところを、オレが駆け寄って支える。
「えへへ~っ。 お兄ちゃんだぁ~!」
「もう、いつも危ないから走っちゃダメって言ってるだろ? すず……」
この子は、すず。
いつもオレのことをお兄ちゃんと慕ってくる一つ下の女の子だ。
初めて出会った時もこんな風に転びそうなところをオレが助けたら、それ以来いつもこんな感じだ。
「うん、ごめんね。 お兄ちゃん!」
そう言って、すずは満面の笑みを浮かべる。
「すずは今、塾の帰り?」
「そうなの。 ホーテー式? ってのが全然分かんなくて……」
「あー、オレもそれ苦手」
「えへへ~。 仲間だね♪」
なんていうやり取りをしてから、すずと別れた。
駅前から夢猫町中央公園までは一本道だ。
途中、オタクショップ街を通り過ぎるのが少し緊張する。
メイド喫茶とかに大人の男の人が吸い込まれていくように店に入っていくところを何度も見かけた。
中で何が行われてるのか、オレにはまだわからない。
そんな駅前のオタクショップ街を抜けて公園に差し掛かったところで何か青いものが道端に落ちているのに気が付く。
「? ぬいぐるみ……だよな? これ……」
青い色をした猫のような姿で悪魔のような羽が生えた変なぬいぐるみだった。
「誰かの落し物かな? とりあえずここじゃ危ないから……」
オレは、ぬいぐるみが誰かに踏まれないように公園入口の塀の上に置くと、その場を立ち去った。
――ミツケタ!
一瞬、だれかがそう言ったような気がするが、見回してもそれらしい気配は感じられなかった。
「ヒーローだったら、こういうのもすぐに見つけられるんだろうなぁー」
そう、呟かずにはいられなかった。
* * *
駅前に戻ってくると、軍服のような服を着て右目にはモノクルを付けた『いかにも怪しげな男』が何か騒いでいた。
「フハハハハ! 貴様ら、俺様に跪くが良い。 今ここで跪いた者には、やがてこの世界を支配する俺様の配下になる権利をくれてやろう!」
「ママー、変な人が居るー」
「しっ! 見ちゃいけません!」
「ああ、またあの人か」
怪しげな男だったが、街の反応は冷ややかだった。
いつもいる変な男の人。
その程度の認識。
このあと、いつもどおり警察が――。
「ムッ! 何故誰も俺様に跪かない? ……今跪けば、ただで俺様の幹部になれるのだぞ!」
「何かの撮影?」
「まあ、オタクショップ街も近いしね」
周りの反応が変わらないのに男がキレて、何か変な踊りを踊りだす――いや、どうやら本人にとっては地団駄を踏んでいるつもりのようだ。
「ええい貴様ら、このオルト男爵様に舐めた態度をとるとどうなるか分かっているのか! もういい! 貴様ら全員、俺様の力でねじ伏せてやる!」
そう言うと男は何もない空間から現れた錫杖を手に、それを天に翳してキーワードのようなものを唱える。
「来たれ! 天空に控えし我が機械騎馬兵たちよ! この街を跡形もなく滅ぼすのだ!」
男がそう唱えると、空に曇天の渦が広がり始め――そのまま何事もなかったかのように霧散した。
「……何だ? 俺様の魔法が失敗した……だと?」
突然の天候の変化に街の人々が騒然としはじめる。
「え? 今の、もしかしてマジもん?」
「やば……。 SNSに拡散しなきゃ」
慌ててパニックになっている人たち――には全く見えない。
さすが夢桜里というか、日本人というか、みんな危機感が少しズレていた。
そんな中、オルト男爵と名乗る男の目の前に、デッカイ金属の塊がズドーンという音とともに落ちてくることで、人々は今度こそ本当にパニックに陥った。
落ちてきたのは”黒い馬に乗った騎士”の形をしたロボットだった。
ただし、落ちてきた反動で壊れているっぽい。
「フハハハハ! なぜか1体だけしか召喚できなかったが俺様の機械騎馬兵よ! この街を蹂躙するのだ!」
オルト男爵がそう命令すると、機械騎馬兵が動き出し、槍を構えて人の多い方向へ移動し始める。
――突然の出来事に逃げ惑う人々。
何とかしなきゃ。
でも、憧れているだけで本物のヒーローではないオレに何ができる?
何か、何か手はないのか――
パニックになる人々を眺めながらそう葛藤するオレの背後から突然、「あるよ……」という声がしたような気がして――
パチン――
柏手を打つような音がしたと思うと、まわりの人々――オルト男爵と名乗る男本人も含む――の動きが止まった。
いや、空を飛ぶ鳥や子供の手から離れて飛んでいきそうな風船なんかも止まっているようだ。
どうやら時間が止まっているらしい。
「なんだ? どういうこと?」
オレだけが動いている世界でパニックになっているところを後ろから声をかけられる。
「どうやら緊急事態のようなので、君以外の時間を止めさせてもらったよ」
振り返ると――、オレがさっき塀の上に置いたはずのぬいぐるみが空を飛んで喋っていた。
「な、何が起きてるんだ?」
驚いているオレを尻目に、ぬいぐるみがオレに話しかける。
「時間がないから手短に言うけど……。 君、魔法少女にならないか?」
「……は?」
オレは思わず聞き返す。
――魔法少女って言った?
「言ったよ、魔法少女って……。 君にはその素質があるんだ!」
「いやいや……。 オレ、男だよ! 魔法少女なんて女の子がなるものだろ?」
「でも、最近は男の子の魔法少女だって居るじゃないか」
「…………」
なんで、このぬいぐるみはオタクカルチャーに詳しいんだ?
オタクショップ街が近いからか?
「いや、ならないよ! オレはヒーローを目指してるんだ!」
「人を助ける存在という意味では同じじゃないか」
「違うよ! 魔法少女なんてフリフリした格好してるじゃん! そういうのは女の子が着る服だよ!」
「まあまあ、この魔法少女変身セットは、あそこのオタクショップで税込5980円で買える高級品だよ!」
「おもちゃじゃないか!」
止まった時間で謎のぬいぐるみと謎の口論をしていると、ぬいぐるみが一言。
「もう、時間が無いんだ! この街が終わっても良いのかい? ヒーローになりたいんだろう?」
そう言ってぬいぐるみはベルトとカードを渡してくる。
仮○ライダーの変身ベルトみたいだ。 オレの食指がピクリと動く。
「へ、変身ベルト……だと?」
オレは吸い込まれるようにベルトに目を奪われた。
「ほら、これなら文句はないだろう?」
「あ、ああ……。 そういうのなら変身しても良いよ!」
渡された変身グッズでちょっとワクワクしてしまうオレ。
「で、どうやって変身するの?」
「心の中で思ったように変身するんだ! 君ならできる!」
――心の中で思ったこと。 やっぱりかっこよく変身したいよな!
「もうすぐ、時間が動き出すから気を付けて!」
「分かった!」
オレは、ベルトを装着すると、かっこいい変身をイメージする。
「変身!」
手をクロスさせてカッコいいポーズを決めながらそう叫ぶ――
渡されたカードをベルトについたカードスロットにセットする――
ベルトに装着されたギミックがかっこよく光りだし、ピンクの渦が地面からオレを包み始める。
これがオレの変身……。
「まわりの時間が動き出したよ!」
ぬいぐるみがそう言うと止まっていた時間が再び動き出し、周りの人々が黒い騎馬戦士から逃げ惑う姿が目に入った。
一刻も早く助けないと――
オレを包み込む光はやがてオレの姿をヒーローのそれへと変化させていく。
手が――足が――いつもと違うものになっていくのを肌で感じる。
何だか背が少し伸びた感じがして――
胸のあたりがきつく感じて――
オレの体が――徐々に変わっていき――
普段着ている学校の制服が消えたかと思うと、ヒーローの衣装がオレの体を包み込んでいった。
やがて変身が終わり、オレは自分の姿を確認する。
――胸が大きくなってる。
「なんで女の子になってるんだよ!」
オレの声がいつもより1オクターブ高くなってる。
……いや、まだ変声期前なのでそこまで変わってる気はしないけど。
着ている衣装を改めて見る――。
ピンク色をしたとってもフリフリの衣装だった。
オレは、どう見ても魔法少女になっていた。
「さあ、今こそ戦うんだ! ブルームピンク!」
オレ、桃山あおいが、魔法少女ブルームピンクに変身した瞬間だった!
【次回予告】
――あおいだよ! 突然現れた黒い騎馬戦士にパニックになる人々。
助けるために変身したのに、なんで魔法少女なの?
こんな格好で戦うなんて聞いてないよ~(涙)
次回、
「咲き誇れYumeBloom」第2話
『ドキドキの初陣! 魔法少女ってどうやって戦えば良いの?』
オレの初陣、見てくれよな!
咲き誇れ、YumeBloom!
【読者限定映像】
第1話を読んでいただいた方向けに、ブルームピンクの変身シーン動画を公開しています。
YouTube動画
「ブルームピンク変身シーン【咲き誇れYumeBloom】」
https://youtu.be/dBuKXbt10iU
YouTubeチャンネルには、YumeBloomのアニメOPをイメージした主題歌PVなどもあります。
また、ホームページ「蒼櫻幻想譚」では、YumeBloomや関連作品のキャラクター画像などを公開しています。
今後の展開に関するネタバレが含まれる可能性がありますが、この小説版に合わせて設定が変わる可能性もあります。
ホームページ「蒼櫻幻想譚」
https://sougentan.com/
なお、主人公あおいの姉・桃山アリサは、拙作『恋カス!(この異世界転生はなんだか損をしている気がする)』の登場キャラクターです。
更新ペースは、1週間に1話。
「日曜朝7:30はYumeBloomの時間」を目標にしています。




