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人の恋は蜜の味 after~ゲイバーママは推し騎士に愛されたい~  作者: めそこここ


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第9話 音楽文化革命

 翌日、ガブリエル・ランドンから会わせたい人がいると言われた。


 そこにいたのは、整った顔立ちに清潔感のある身なり、すらっと伸びた背筋……壮年男性が立っていた。


(筋肉があったらタイプ……)


「こちらは、私の友人で我がフォレスト国の宰相、テオドア・ハーデン公爵だ」


(なんか肩書き強そうなイケメンね)


「初めまして。飲食業をやっています、歌う人妻ジェーン・トライヴァルです」


(とりあえず、宰相に対抗して肩書きは盛れるだけ盛っておくわ)


「歌う人妻?」


 テオドア・ハーデンが眉を上げる。


「はい」


「そうか……」


 すると、ガブリエル・ランドンが溜め息をつく。


「学生の頃から思っていましたが……あなたは、何でも素直に受け取り過ぎです。まず肩書きにツッコむべきでしょう!」


「そういうものなのか」


 どうやら、社長と宰相は仲が良いらしい。


「今日、あなたを呼んだのはジェーンさんの店について意見を聞きたかったからです。実は……」


 ガブリエル・ランドンが、アマテラスのコンセプトと店の状況を説明する。


「曲不足じゃない、知名度不足だね」


(あの身内モノマネって、宰相だったのね)


「まずは、歌を知ってもらう必要があります。歌詞カード販売、楽譜販売、街頭演奏」


「だが、それだけでは足りない。問題はメロディだ。歌詞は読めば覚えられる。楽譜も練習すれば演奏できる。だが、歌は耳に残らなければ広まらない」


「実際、この国は戦後復興の途中だ。娯楽が圧倒的に不足している。傷ついた兵士や、戦後の混乱を生きる国民に希望を与えるのも政治のひとつだ」


「我々も協力しよう!」


 テオドア・ハーデンが手を差し出した。

 とりあえず、イケメンから出された手は握っておく。


「『我々』って勝手に決めないでくださいよ!」


 ガブリエル・ランドンは頭を掻いた。


「ガブリエル、僕に声をかけた時点で計算高い君なら、この筋書きがあったのだろう?」


 テオドア・ハーデンが笑う。


「政治面で、あなたに何とかして貰おうとは考えていましたが……分かりました。私も国に仕える立場です。もちろん、協力しますよ」


 アマテラスは、フォレスト国宰相と財務大臣兼大商会代表というとんでもなく強いカードを手に入れた。



 ◇



「でも、どうやって広めるの?」


 すると、ガブリエル・ランドンが口を開く。


「まず、一般家庭は諦めましょう」


「えっ! ちょっと待って。アマテラスを会員制の高級クラブにするつもりはないわよ」


「違いますよ。一般家庭に再生機の導入は難しいということです」


 前世でもテレビが一般家庭に普及するまで、時間がかかった歴史がある。アタシは素直に納得した。


「不特定多数の人が集まる場所に設置します。『街頭音楽機』とでも呼びましょうか」


 即答だった。


「街頭音楽機?」


「ええ」


 ガブリエルは頷く。


「国民の多くが利用する場所に、音楽を流すのです。管弦楽団を毎日呼ぶのは金がかかる。しかし、機械なら一度設置するだけで毎日演奏できます」


 確かにその通りだった。


「客寄せにもなりますし、商売をやっている方なら反対する人もいないでしょう」


「なるほど……」


 テオドアも頷く。


「実は……これ、私のアイデアではないのです。昔、とある少女が国民の誰も知らない食品を広めるためにやっていた手法です。あれを見た時に、衝撃を受けました」


 ガブリエル・ランドンは懐かしそうに目を細めた。


「米の時だね、あれは本当に驚いた。同じ歳の少女が食糧革命を起こしたんだ。今回の戦争に関しても、国民や軍事の食糧問題が起きてないのは米のおかげでもある」


「その少女、商売上手だったのね」


「ええ、王妃陛下です」


「えっ」


(あの王妃、美人なだけじゃなかったのね……)


 無名だった食品を国民の主食に変えた方法、それを音楽に応用する。


(なるほど。だから、宰相と財務大臣が出てきたのか)


「旅人も立ち寄り、商人も訪れ、兵士も集まるのが、このルフェラン領です。そして、ここから国中に噂が広がる」


 二人が当たり前のように続きを言う。

 ガブリエルが微笑んだ。


「アマテラスだけで広めるのではなく、王都中に歌を流行らせるのです」


 その瞬間、アタシの脳裏に光景が浮かんだ。

 メディアで流れる恋の歌。

 誰かが口ずさむ。

 別の場所でも流れる。

 また別の人が覚える。

 そして、いつか――。


「みんなが歌えるようになる」


「その通りです」


 ガブリエルが満足そうに頷いた。


 テオドアが静かに言った。


「カラオケは歌える人がいて初めて成立する」


「まずは、音楽文化そのものを広めよう」


 あとがき


 今回は長編『ママじゃない~攻略対象の母に転生したので、破滅エンドを潰します~』を読んでいる方は「あの米の時ね」となる話でした。まだ、読んでない方や「そんなことあった?」と思った方は、この機会に『ママじゃない』を読んで頂けると嬉しいです。


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