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第26話 外注(アウトソーシング)の試練。――禁足地の魔導豆と、特攻野郎たち。

「……よし。俺はここで、温度パッチの受け入れ態勢を整える。……ガウル、お前が現場監督だ。ピヨを連れて、スカイエルフたちを率いて、『魔導イナゴ豆』を確保してこい」


 拠点の調理場で、俺は使い込まれた魔法のボウルを磨きながら命じた。


 本来なら俺が「間引く」のが最短ルートだが、エンジニアとして言わせれば、単純なリソース回収(素材集め)は自動化、あるいは外部委託アウトソーシングすべきフェーズだ。


「……主、本当に俺たちだけで大丈夫ですか? エルフたちが『呪いだ、バグだ』って震えてますよ」


 銀狼のガウルが、隣で膝をガクガクさせているエルフの若手狩人二人を見やりながら、不安げに耳を伏せる。


「……案ずるな。……ピヨがいれば、大概のこと(火炎放射で)は事足りる。……いいか、制限時間は三時間だ。それ以上遅れると、クレープの生地が乾燥するぞ」


「ピヨッ!」


 ピヨは、遠足にでも行くような軽いノリで、ガウルの頭の上に着地した。


「……くっ、やるしかないのか! 全ては、あの伝説の『チョコ・マシマシ』のために!」


「行くぞ! 呪いよりも、食いっぱぐれる方が恐ろしいッ!」


 おじさんの「報酬」という名の劇薬を打たれた一行は、決死の覚悟で山の麓、禁足地へと駆け出していった。

 一行が辿り着いたのは、枯れた巨木が歪にねじれ、紫色の魔霧が漂う『古戦場跡』だった。

 そこには、かつての戦争で放置された魔導兵器の残骸が、今や意志を持った魔物として徘徊している。


「……ヒィッ! 出たな、『スクラップ・ゴーレム』! 記録によれば、あれの装甲は硬いぞ!」


 エルフの狩人が弓を番えるが、恐怖で指先が震えている。


「……主なら、一瞥して『仕様が古いな』って言って粉砕するんだろうけど……。……俺たちがやるんだ! 主に、最高の素材を持ち帰るんだ!」


 ガウルが銀色の毛並みを逆立て、咆哮した。

 彼は銀狼としての真価を発揮し、スクラップ・ゴーレムの鈍重な攻撃を紙一重で回避しながら、その関節部へと爪を突き立てる。


「……ピヨ! 出番だ、援護しろ!」


「ピヨオォッ!!」


 ピヨが翼を広げ、神獣の真髄である『浄化の業火』を解き放った。


 おじさんの前では「便利なコンロ」扱いのピヨだが、本来は一国を焼き尽くす災厄の象徴だ。放たれた白熱の炎が、古戦場の霧と、ゴーレムの装甲を一瞬で「蒸発」させていく。


「……す、すげぇ……。ピヨ様、本気出すとこんなにヤバいのか……」


「油断するな、まだ来るぞ! ……あの、地中からの魔力反応は……!」


 ガウルの索敵能力(Wiki鑑定の応用)が、次なる脅威を捉えた。

 地面を割って現れたのは、全長二十メートルを超える巨大なサンドワームだ。その口は無数の牙で覆われ、あらゆるものを噛み砕く、禁足地の守護者。


「……くそっ、御子柴殿がいないと、こんなに世界は理不尽なのか……! ……でも、俺たちは『マシマシ』を食べるんだッ!」


 エルフの狩人たちが、恐怖を執念で上書きした。

 彼らはガウルの指示に従い、ピヨが作り出した炎の壁を背に、サンドワームの側面に回り込む。


 おじさんから教わった、「最も効率的な急所の穿ち方」――それを、彼らは自らの弓と矢で体現した。


「……今だ、ピヨ! ワームの口の中に、聖なる熱(最大出力)を投入しろッ!」


「ピヨッ、ピヨオォォッ!!」


 サンドワームが叫びを上げる間もなく、その巨大な口腔内へ、ピヨの放つ高熱の魔力が炸裂した。

 内側から焼かれたサンドワームは、巨大な炭の塊となって、その場に崩れ落ちた。


「……やった……。やったぞ、俺たちだけで、禁足地の守護者を『間引いた』んだ!」


 勝利の咆哮を上げる一行。

 禁足地を進むと、そこには鈴なりになった『魔導イナゴ豆』の群生地が見えてきた。ガウル達は、狂ったように袋へ詰め込んでいく。


「……よし、ノルマ達成だ! 急げ、主の『生地』が乾く前に帰還するぞ!」


 その頃、拠点では――。


「……ふむ。コウジ、石臼の回転速度がコンマ三秒遅い。……摩擦熱で豆の香りが飛ぶぞ」


「うるさいわ! 御子柴、自分で動かない分、口うるささが三倍になっておるぞ!」


 おじさんは、コウジと共に「受け入れ環境」を完璧に構築し、静かに一行の帰還を待っていた。


おじさんは、自ら動かず、周囲の「リソース(ガウル・ピヨ・エルフ)」を動かして、至高の素材を手に入れた。


遠くから、土煙を上げて爆走してくる銀色の影と、その上でバタバタと羽ばたく金色の小鳥が見える。


「……帰ってきたな。……想定より五分早いが、……まぁ、許容範囲バッファ内だ」


 泥だらけ、煤だらけになりながらも、エルフたちは勝利の雄叫びを上げ、漆黒の豆が詰まった袋を掲げた。

 それは、ただの素材ではない。

 彼らが初めて、おじさんの「チート」なしで勝ち取った、至高のスイーツへの招待状だった。

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