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神様の作り方  作者: 水宮
第2章・レムリアへの転移
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9・追いかけて千里眼




ルーカスが砂漠に入ってから、もう2時間~3時間くらいは走っているんじゃないの?速度もだいたい一定で、時速30~40kmってところかな。


ルーカス凄いじゃん。これ人間としての肉体能力を超えちゃってるから特異技能スキルだろうね。私の住んでいた世界と違って、こちらの世界は特異技能スキルなどというとんでもないものがあるからなぁ。


特異技能スキルさえ持つ事が叶えば、いくらでも人間離れした力や技を発揮する事ができるとかって。改めて考えると凄い世界だよ。世界トップクラスのアスリートも、こちらの世界では赤子同然になっちゃうんだもの。



ルーカスが今使用している特異技能スキルは多分、肉体強化系。

耐久とか俊足とかの特異技能スキルを持ってそう。


ルーカスのステータスを見られればいいんだけれど、それには鑑定とか看破などの特異技能スキルを持っていないと駄目。


あいにく今のあたしはそんな特異技能スキルは持っていない。神力を使えば特異技能スキルなんか足元にも及ばないほど莫大且つ精密で読み解かれた情報を得られるけれども、神力が少ない今のあたしには怖くてとても使えない。


特異技能スキルならこの世界のシステムの力を借りられるから、神力の消費が無くていいんだけど。今度ベステトが目覚めたら、色んな凄い特異技能スキルをいっぱい使えるようにしてもらおっと。



ルーカスのあとを見つからないように追うあたしの今の能力値はというと




セリカ(源氏名・ピンクジェム)


種族・神ネコ科?


レベル・1。

魔力・0

体力・99。

速さ・100。

力 ・95。


特異技能スキル

目視・レベル5。

俊足・レベル5。

跳躍・レベル4。

爪かき・レベル3。

噛みつき・レベル3。

毛を逆立てる・レベル3。


特記事項・解析不能なシステム外の未知の能力を所持。




となっているけれども。

色々とツッコミどころ満載だな。


黒い仔猫に変身した途端にこれですか。

あたしの名前の欄にある源氏名って何よ?あたしはキャバ嬢か?

まだ中学生だっつうの。


特異技能スキルの項目の爪かき、噛みつき。思うところはあるけれども、まだ良しとします。でも何ですか。最後の毛を逆立てるって?毛を逆立てて何か役に立つわけ?こんなしょうもないものをわざわざ特異技能スキルの項目に入れるなよ。


種族の欄はネコ科獣人から神ネコ科に変わっている。相変わらず?マークが付いているけど。正解なんだから自信を持っていいんだよ?



追走しながらステータス画面に向かって独り言を呟いていると、ルーカスが速度を落とし始めた。しまった!あとをつけているのがばれた?


慌てて走るのを止め、見えないようにしゃがみ込む。

ルーカスの走る速度はどんどん落ちて、ついに立ち止まる。


ドキドキしながら様子をうかがっていると、何やらズボンを脱ぎ始めた。

えっ?なっ、何なの?!



おしっこだった。

すぐに目をつむったからはっきりとは分からなかったけれども、危うく男の子の大事なものを見ちゃうところだった。追走がばれたかもしれないと思ってドキドキしていたのが、違う意味でドキドキしちゃったよ。



恥ずかしさのあまり必死に目をつむっていたら、いつの間にかルーカスが居なくなっていた。今度は見逃しちゃいけないところを見逃したー。


目と耳を動かし、向かったであろう今まで進んでいた方向に意識を集中すると、ルーカスの砂上を走る音と姿が見えた。


この時、あたしは気づいていなかった。耳は反射する音も聞き分けるから聞こえても不思議はない。でも目は砂の隆起に視界を塞がれている所もあったはずなのにちゃんと見えている事を不思議に思わなかった。


焦って、ルーカスを探す事に集中していたからそこまで気が回らなかった。

特異技能スキル千里眼せんりがんに目覚めた瞬間だった。




それから2時間くらい走ってルーカスは休憩をとった。

正味4~5時間は走り続けて、さすがのあたしも疲れたよ。


ベステト本来の姿だったなら、全然余裕だったろうけれども、今のあたしは神力の省エネ形態だからパワーもちっちゃいし、スタミナも無い。それでも走りづらい砂の上を時速30~40kmで見つからないように走り続けられたのだから、この仔猫の形態も普通じゃない。



ルーカスがチーズと木の実、野菜を挟んだパンをもぐもぐ食べている。

美味しそうだなぁ。あたしも一緒に食べたいなぁ。


ルーカスの昼食を見ていたら、お腹が小さな音をたててしまう。

その瞬間、ルーカスが食事の手を止め、辺りに視線を向ける。


え?こんな仔猫の小さなお腹の音に気がついたの?ルーカス、耳良すぎ!

と思っていたら違った。


ひたひたと静かに忍び寄る微かな音があたしの耳にも届く。

テリトリーに侵入してきた獲物を狙う魔性の気配。

迂闊だった。ここはもう魔物の領域だ。


耳と目を使い、しのび寄る魔性の気配に集中する。

数は5。ううん、違う。6だ。

6つの不吉な気配を感じ取り、そちらに目を向けると居た。

食屍鬼グール


皮膚も肉もただれ堕ち、臓物を引き摺りながらゆっくりと近づいてくる6つの死塊。死肉を好物とし、そこに己の分身である死んだ胎児を産み付けるこの禍々しい魔性は、始めから死んでいる胎児が死肉を依代として分裂と成長をする事によって爆発的に増殖する。


そしてまた、生ある者を襲い喰らう。消化器官など働いていないのだから生き物を殺して食べても栄養にはならない。ただ、命あるものの生を奪いたいという本能のみで動く不浄の意識が具現化したもの。


それが砂漠の死肉喰い死肉産みと呼ばれる食屍鬼グールだ。




食べかけのパンを撒き葉に包み直しリュックの中に入れると、ルーカスはゆっくりと黒鋼の盾を左手に持ち、がダークグリーンの槍を右手に持った。そして、しのび寄る魔性を刺激しないように静かに立ち上がる。


ルーカスは目をつむりじっとして動かない。

そこに食屍鬼グールがひたひたとゆっくり近づいて来た。


今のあたしじゃ、ルーカスの助けになるか分からないけれども心配でここまでついて来たんだ。このまま見捨てる事なんてできるわけがない。


あたしはルーカスの助人に入る機会を窺う。

ルーカスに恐れの色は無い。心音も脈拍も安定している。体からは勇気が炎のようなオーラとなって揺らめくのが見えた。


それを見たあたしは理解した。いつの間にか、自分は瞳に何らかの特異技能スキルを得たのだという事を。そして耳もまた、尋常ならざる聴力を得た事を。


その手に入れたばかりの特異技能スキルが教えてくれる。

今はまだ、ルーカスの助人をする時ではないと。今行くのはルーカスの戦いの邪魔をする事になるだけなんだとあたしに伝えてくれていた。


だから待つ。

あたしがルーカスの元に向かってもいい瞬間を。その時を。




2塊の食屍鬼グールがルーカスのすぐ側まで歩み寄った。あと1歩踏み込めば、血管と崩れ落ちそうな筋肉が見える食屍鬼グールの腕がルーカスの頭を掴む。肩を掴む。


まだ?まだなの?!

焦燥に駆り立てられながら、あたしは必死に飛び出したい気持ちを抑える。


食屍鬼グールの腐って裂けたあぎとがガバッと開き、中から黒々とした鋭い犬歯をのぞかせる。目の前の獲物を噛み裂き、血潮を啜れる喜びを確信した愉悦が食屍鬼グールの目の中で光った。


食屍鬼グールの鋭くもドス黒い爪先がルーカスの髪に、肩の衣服に触れる。


刹那。

風が巻き起こり空を切る。

砂漠の砂が巻き上がり煙のように視界を遮った。


しかし、あたしには見えた。

砂の煙幕に隠されたその奥で、ルーカスのダークグレーの鋼槍が2塊の食屍鬼グールの頭部を粉々に粉砕して吹き飛ばすその様を。



強い。

あたしは感嘆した。


強いよ。

この人は強い。

これで本当にDランクの冒険者なの?


この強さはDランクを超えている。

ベステトの知識に照らし合わせると、Cランクの強さだよ。


なんでまだDランクなの?ランク昇格の申請をしていないの?



あたしがルーカスの強さに目を奪われている間。

それはほんの一瞬。瞬きすら許さない刹那の時間。

普通の人間なら、有るかも認識できない僅かな時間の間に、ルーカスは残る4塊の食屍鬼グールを槍の烈周一振りにてことごとく頭部を粉砕して決着を着けてしまった。




ぽかーん。

この言葉こそ、今のあたしには相応しい。






さらに進むと、また食屍鬼グールの小さな群れに襲われたけれども、ルーカスは手間にもならない短い時間で群れを殲滅。


あれ?これって、あたしが来た意味なくない?



日が落ちると昼間の灼熱は冷たい冷気にとって代わられる。

明るい時は高温で、暗くなると寒気でそこに息づく生物の体力を容赦なく奪い取り、死へと誘う砂漠の本性。



ルーカスは寒くないのかな?

あ、ブルブル震えてる。やっぱり寒いんじゃん。


砂の上に腰を下ろして丸くなってる。少しでも体温を奪われないように手足を小さく折りたたんでいるけれどあれじゃ、熱を奪われるのは防ぎきれないよ。


ルーカス、可哀想。


何とかしてあげたいけれど、良い方法が思いつかない。

でも不思議な事にあたしはぜんぜん寒くない。

天然の毛皮に覆われているといっても猫は別に寒さに強い生き物じゃない。


どうして、あたしは寒くないの?


ベステトの記憶を照合。


答えが出た。

(神がこの程度の気温差でどうこうなるはずがないでしょ)だって。


何、その投げやりな答えは?

怒るよ?


(超高性能版クマ虫と思ってください。更に、あらゆる環境対応能力と加速進化適応能力も備えていますから)


難しい言葉を並べれば誤魔化せるとでも思うの?


(貴女もしつこいですね。粒子どころか、超弦レベルで環境に対応しているのですよ。生物や魔物とは適応する機能の次元が桁外れに違うのですから、この程度の気温差どころか絶対零度や1000万度の高温だって平気に決まっているでしょう)


しつこいって。

あんた、ただのベステトの記憶照合システムだよね?何で感情を持ってるの?


(・・・・・・・・)



あ、黙った。



(因みに・・・・・・)


唐突にしゃべり出した。


(今回のサンドワームの発見頻度の増加には、ある程度高確率な発生原因の予測が立てられます)


へえ。どんな予測?


(サンドワームはセリカのクマ虫劣化版ですが・・・・・・)


劣化版でも優秀版でも自分が虫に例えられるのはいや!


(サンドワームは1100度の灼熱でも平気)


あ、無視したな。


(-273度の絶対零度でも平気だし、2万5000気圧の圧力下でもなんのその。もちろん真空中でも生きられます。また、340万レントゲンの放射線もへっちゃらです。因みに人間の致死量は500レントゲンです)


何か、とんでもない生き物に思えてきたよ。サンドワームが。


(寿命は1万年以上はあります。宇宙空間でもしばらくは平気で生きられます。その高等適応力の基本は地球のクマ虫と原理が同じです。ハイパー・クリプトバイオシスを体全体で駆け巡らせます。活動、結界眠、活動、結界眠を超高速で行い生命活動を断続的に続けるために動けるのです。それを可能にしているのは、あの巨体に蓄積された莫大な魔力量と強靭な体)


うん。不死身の怪物だ。

ルーカスには戦ってほしくない。


(そんなサンドワームですが、唯一の弱点があります)


へえ。何なの?


(湿度のある快適な環境です)


ふぁ?


(劣悪な環境こそ、サンドワームにとっては一番すごしやすい環境で、人や動物が快適だと思える環境こそ、サンドワームにとっては死地そのものなのです)


なに、そのあべこべ生命体は?



(そして、サンドワームにとっては楽園だった砂漠の過酷な環境が広範囲で変わりました。雨が降って快適になっているのです。そこからサンドワームは逃げ出して、この辺りにも多く出没するようになったと推測します)


ふーん。砂漠に雨が降るって異常気象とか?


(異常気象には違いありませんが、それを引き起こしているのは人間ですね。正確にはサウス・セリアンスロープの獣人と人族だと思いますが)


ふーん。じゃあ、獣人と人族が自ら引き起こしている異常気象によって、サンドワームが移動して結果、この地方が危険に晒されているって事?


(その通りです)


何だかなぁ。


(ですから、その気象変化の元を止めれば良いだけです。それでこの問題はおそらく解決すると思われます)


でも、気象変化させるのにはそれなりの理由があるんでしょ?

例えば砂漠緑化計画とかさ。


(いいえ。まったくそんな考えはありません)


じゃあ、理由は何なの?


(気象を変化させられほどの巨大な魔力を持った獣人と人族の喧嘩です)


異常気象を起こしている原因がただのケンカなの?戦争とかじゃなくて?


(はい。それもこの国を治めている大統領と大統領夫人の夫婦喧嘩ですね。毎年の恒例行事みたいなもので。そのせいで地方の国民がサンドワームの脅威に晒されているのです)


夫婦喧嘩って。

何をしているのよ。この国の主と奥さんは。




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