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十九話

「~~~~ッ!!」

誰かの絶叫が遠くに聞こえる。


片足から力が抜け、受け身もとれずに地面に倒れこむ。

視界が歪んで頬を水が伝う感触が。


あぁ 私 泣いてるの?


そうか 私 鳴いてるのか。


強かに打った肩が痛い。

靴に染み込んだ液体が気持ち悪い。


「喧しいですね。」


鉄の錆びた臭いがここまで漂ってくるようで。

肩の痛みがより強い痛みにとってかわる。


「聞こえていませんか。」


痛い……イタイ?

足が熱いアツイあつい

まるで、赤くなるまで熱した鉄を踏んだかのように。

熱い。


涙で歪む視界にうつるのは、空っぽな赤い男と白い女。


「楽に殺してはいけません。あぁ、心臓を傷つけては駄目ですよ。

 それは、我等が神に捧げるのですから。」


なにか、いってる?

心臓の音がうるさくて聞こえない。

煩わしそうに女は私を指差し、男に言う。

なんだろう?

きっと、いいことじゃない。


にげ、なきゃ。

僅かに動こうとするだけで。

足の痛みが強くなり、思わず叫びそうになる。


右手にメスを握ったまま無事な足に力をこめて。

痛みに耐えながら、両手を地面について押し出すように体を持ち上げて。


「逃がしませんよ。」


無事だった、足からも力が抜ける。

続いて、左手も。


頭だけは庇って、再び地面に伏して。

左手からは、温かい液体がじんわりと地面に広がっていくのを肌で感じる。

神経が傷ついたのか、指に力が入らない。



「少しずつ刻みましょう。

 出血で死なないように回復しながら。」


右手が白くなるまで強く握られたメスが視界にはいる。

それだけで、少しだけ痛みが薄れて安心感が体を包む。


「反応がありませんね。

 気絶しましたか?」


なんで、こんな状況で安心するんだろう?

傷から忍び寄る、脱力感に身を浸しながら、思う。

眠い………なぁ。


うとうとしながら、ようやく、思い出す。


そっか。

メスがあれば。








この程度の傷、私なら直せるからだ。


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