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『割り切れない命、凍りついた正義』

「――知ってるよ。そんなこと、私に言われなくても分かってる」001の低く冷めた声が、湊の怒号を遮った。彼女は侵食された肩の痛みすら無視し、湊を真っ向から見据える。その瞳には、先ほどまでの無機質な機械性ではなく、どす黒く濁った「自覚」が宿っていた。「私だって、魔法少女なんだから。……この力の重さも、流した血の熱さも、吐き気がするほど知っているよ」湊の爪が、彼女の喉元で止まる。001は自嘲気味に口角を上げた。その表情は、湊が鏡で見る自分自身の絶望と酷く似ていた。「でもね、佐藤湊。誰かが割り切らなきゃ、世界そのものがパンクするんだよ。一人の願いを尊重してシステムを壊せば、その先に待っているのは数百万人の一斉デリートだ。……君は、白雪一人を救うために、この街の全員を殺せるのかい?」「それは……っ」「選べないだろう? だから、私たちが選んであげているんだ。誰を捨て、誰を残すか。感情を殺して、数字だけを見て。……そうしなければ、私はとっくに狂って、君みたいに無駄な叫びを上げているはずだ」001の手に持つ狙撃銃の残骸が、彼女の震えを隠すように強く握りしめられる。彼女もまた、設計者に心を売ることで、自らの崩壊を食い止めている「なれの果て」だった。魔法少女という地獄を知りすぎたからこそ、彼女は「割り切る」という名の防壁に閉じこもったのだ。「君の怒りは正しい。でも、その正しさは誰も救わない。……白雪が死を望んだなら、それを速やかに実行するのが、私にできる唯一の『慈悲』だったんだよ」「……慈悲だと? そんなもの、ただの言い訳だ……!」湊は吐き捨てるが、001の瞳の奥にある深い疲弊を見て、拳に込めた力が微かに揺らぐ。設計者は、憎むべき化け物だけを差し向けてくるのではない。かつての湊自身のような、折れてしまった「正義の欠片」を、最悪の刺客として送り込んできたのだ。「割り切れないなら、ここで私に撃たれて終わりなよ。……その方が、君にとっても幸せかもしれない」001が折れた銃身を捨て、隠し持っていたナイフを抜く。地獄を知る者同士、言葉はもう尽きた。互いの「魔法少女としての答え」を懸けた、最後の殺し合いが始まろうとしていた。

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