『引き鉄の正義、逆流する憎悪』
「……あ、あ……」湊の腕の中で、白雪の体が光の塵となって零れていく。胸を貫いた弾丸は、彼女を救うためのものではなく、システムの一部として「処分」するための冷徹な一撃だった。「お前……。何をやったか、分かってるのか……!」湊は喉の奥から絞り出すような声で、銃を構える少女――001を睨みつけた。だが、001は表情一つ変えず、淡々と報告書を読み上げるような口調で答えた。「何を、とは? 私は要請に従ったまでだよ。この個体――白雪は、私に銃口を向ける直前、回路の隙間から『殺して』という信号を発信していた。私はその希望を最短ルートで叶えた。……何か、不都合でも?」その言葉が、湊の脳内で爆発した。白雪が死を望んでいたのは、湊を傷つけたくなかったからだ。彼女の悲痛な「愛」の叫びを、この女はただの「効率的なデータ」として処理し、引き金を引きやがった。「殺してって言ったから……殺した、だと……?」湊の視界が、一瞬でどす黒い赤に染まった。巴先輩を喰い、健太を消し、白雪の最期の願いさえも土足で踏みにじる。設計者は、どこまで行っても、人の心をただの「数字」としか見ていない。「……ふざけるな。ふざけるなよ、お前らぁぁぁぁぁぁッ!!!」湊の右腕から、これまでの比ではない漆黒の衝撃波が放たれた。重傷を負っていたはずの体が、怒りという名の劇薬で無理やり駆動する。「効率? ログ? 希望? 全部知るか! 俺が今からお前に刻むのは、計算不可能な、ただの純粋な『痛み』だッ!!」右腕の黒い異形が、湊の顔半分を覆い、巨大な逆鉤の付いた爪へと変貌する。「ターゲットの感情的高揚を確認。……非論理的だね、佐藤湊」001が次弾を装填するよりも早く、湊は地を蹴った。理科室の床が、湊の踏み込みだけで粉砕される。「お前のその綺麗な設計図、俺の血で……一文字残らず塗り潰してやるッ!!」復讐の化身と化した湊の爪が、無慈悲な処刑人の喉元へと肉薄した。




