『上位個体の蹂躙、あるいは絶望の深度』
「……ぁ、がっ……」胸を貫かれた傷口から、熱ではなく「虚無」が流れ込んでくる。目の前のリッパーは、先ほど刻んだ個体とは明らかに違っていた。纏うプレッシャーが、密度が、存在そのものが別次元だ。「戸惑っているね。説明してあげよう」リッパーは、動けない湊の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。「先ほどの個体は、あくまで観測用の『低スペック端末』だ。だが、君という重大なバグをデリートするために、設計者はこの座標の演算リソースを三倍に引き上げた。つまり――」あいつは無造作に、湊の異形化した右腕を、ただの「指先」で弾いた。パキィィィィィィィィィィン!!「……っ!? ぁあああああああああああッ!!」鉄をも断った湊の鎌が、ガラス細工のように粉砕された。「今の僕は、君が戦っていた個体より遥かに『強く』設定されている。これが設計者の力だ。バグが進化すれば、システムもまた、それを上回る速度で進化する」逃げ場も、勝ち目もなかった。刻めば刻むほど、次はさらに強大な絶望が降ってくる。リッパーは、泣き叫ぶ白雪を足蹴にしながら、湊の耳元で甘く囁いた。「君の右腕の毒……これ、実は設計者が欲しがっていた『新しいサンプル』なんだ。君が暴れれば暴れるほど、システムは君を学習し、より完璧な魔法少女を作れるようになる」「……なんだ、と……?」「そう。健太くんの死も、君の反逆も、全ては僕たちのアップグレードのための『実験データ』に過ぎない。君は、地獄へ叩き落とすどころか、地獄の床を補強していたんだよ」湊の瞳から、ついに光が消えかける。復讐さえもが、敵の糧になっていたという残酷な真実。「さあ、仕上げだ。君を解体して、その『毒』を正式な機能として組み込ませてもらおう」リッパーの純白の手が、湊の胸の『核』を抉り出そうと、ゆっくりと食い込んでいく。肉を裂く音と、骨が軋む音。その絶望の淵で、湊の脳裏に、巴先輩のあの日の声ではなく――消えたはずの健太の、ノイズだらけの笑い声が響いた。『――湊、まだだ。計算を、バグらせろ』




