効率の神様、計算間違いですよ
不定期更新です。
夜の公園に、不快な咀嚼音が響く。
数秒前まで俺に笑いかけていた巴先輩が、今は巨大な異形に噛み砕かれている。
血の匂いと、耳を刺す骨の軋み。脳内には絶望の旋律――『葬送の重低音』が鳴り響いていた。
「やあ。彼女の絶望は、実に質のいいエネルギーになったよ」
闇から現れたのは、真っ白で耳の長いウサギのような生命体――『月兎』だった。
あいつは無機質な赤い目でこちらを見ると、地面に転がった先輩の残骸を、平然と食べ始めた。
「……な、なになになに、何やってんだよ、お前……ッ!!」
叫び声すら出ない。喉の奥からせり上がる吐き気を抑え、俺は後ずさりした。
人間を、食っている。あんなに優しかった先輩を、ただの「燃料」みたいに。
「ちょうど予備のエネルギーが必要だったんだ。それより、君には才能がある。僕と契約して、星の殉教者になってよ。願いを一つ叶える代わりに、君の魂を投げ出して戦うんだ。どうだい? 彼女の仇を討てるよ」
仇? 願い?
目の前で先輩をムシャムシャやってる化け物が、どのツラ下げて言っているのか。
「ふざけるな……。ふざけるなよ……ッ!!」
怒りで歯の根が合わなくなる。恐怖は一瞬で、ドロドロした憎悪に塗り替えられた。
「……効率だの何だの、機械みたいに……っ。いいよ、わかった。お前の言う『効率』ってやつ、俺が今から根本からぶち壊してやるよ……!!」
威勢のいい啖呵を切った。けれど、地面を踏みしめる俺の膝は、情けないほどガタガタと震え続けていた。




