7 思いもよらないプロポーズ
読んでいただきありがとうございます!お楽しみいただけましたら嬉しいです。
辺りは夕闇が徐々に濃くなって来ている。紫とオレンジ色のグラデーションが美しい。静かな丘の上にぽつぽつと星が瞬き始めた。
「暗い顔をしないで、可愛い顔が台無しだよ。馬鹿なことを考えるのは止めなさい。誰もローズマリーを駒なんかにしようと思っていない。幸せになって笑ってくれるのが一番嬉しいんだから。ね?」
「ウイルフリード様は心が読めるのですか?」
「読めないけど、顔に書いてある。叔母上に聞いたけど、今でも夜、魘されているらしいじゃないか。辛すぎて苦しいのなら私と婚約しよう。腕の中にいればいつでも守ってあげられる」
「それは同情からでしょうか?」
一瞬寂しそうな表情がよぎったが直ぐに何でもない顔になった。
「最初は同情だった。でも今は好きなんだ。気づけばいつもローズマリーのことを教えている」
「どうして私なのですか?ウイルフリード様にはもっと高貴で綺麗な令嬢がお似合いだと思います。私なんかでは釣り合いません」
「私なんかと言うのは止めなさい。ローズマリーは芯のある素敵な女性だよ。
私の唯一になって欲しい」
「でも……次期公爵様の隣は私では務まりません。マナーも教養も圧倒的に足りていません」
「私のことが嫌い?叔父上のところでしている勉強は公爵家で通じるものだ。この先も家庭教師が教えてくれる。何より君が側にいないと寂しい」
完璧貴公子のウイルフリード様の切なそうな目はずるい。
その瞬間、胸を撃ち抜かれた。
この人の傍にいたい。愛されたい。
それは数年間誰にも必要とされなかったローズマリーの渇望だった。
「ウイルフリード様、お慕いしております」
涙の膜が張った。
「嬉しい!大好きだよローズマリー。二人で幸せになろうね」
「はい…ウイルフリード様」
この人の隣に立っても恥ずかしくない様に頑張って勉強しよう。相応しい女性になりたい。
暖かな大きな腕で抱きしめられローズマリーはひどく安心した。
嬉しさと愛しさで我慢が出来ないウイルフリードは頭頂に額に頬にとキスの雨を降らせた。
腕の中の人は真っ赤になってしがみついてきた。可愛すぎる。
ポケットから小箱を取り出したウイルフリードは蓋を開けた。それは紫色のアメジストの指輪だ。
「これを着けていて欲しい。ローズマリーが私のものだと見せつけたい。牽制の意味が大きいけどね」
「私を狙う人なんて誰もいないと思います。これウイルフリード様の瞳の色ですね。嬉しいです」
「君の指に合うように作って貰ったんだ。指を出して」
もうかつての手荒れはどこにも見られない。白魚のようになった手をおずおずと差し出した。そっと指輪を嵌められた。
暮れなずむ丘で見る指輪はキラキラと輝きを放っていた。
「愛しているよ。私の天使」
ぎゅっと抱きついてきた愛しい人は壊れそうなほど華奢だ。
※※※
「君に公爵家の護衛を付けるよ」
「えっ?もっと必要ですか?今もお義父様が付けてくださっていますが」
「私の婚約者になったんだ。狙われることが増えると思う。どんなことをされるか分からない。守らせておくれ」
そう言ってウイルフリード様がつけてくださったのは女性騎士二人だ。
キリっとした美人のミモレと可愛い感じのロロだ。
確かに男性の騎士では化粧室までは付いて来れない。
どこまでも心配症な婚約者にローズマリーは頷いた。
お読みくださりありがとうございました。




