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ナルシスト。狙います。

榊さん。僕は、結局、入団テストに落選した。

花子の期待に答える事もできないし、それでいいと思っていた。

寧大といる時の花子の雰囲気で、なんとなく、伝わっていたのは、2人は、

ただならぬ関係にあったって事。

きっと、元恋人同士だったのかな・・・と。

寧大には、聞けなかった。

僕らは、微妙な関係の友人だったから。

ライバル。なのか。友人なのか、ギリギリ。

自由奔放な寧大が羨ましかった。

だけど、その自由さは、女性関係のだらしなさが露見してしまう。

それも、才能だろうと僕は、笑った。

僕にとって、歌う事は、話をする事と同じ。

バイオリンを弾くのは、僕自身の心を癒す為だった。

言葉で表現できない事がある。

それを、素直に、心のままに、表現してくれるのが、バイオリンだった。

「才能のある奴には、わからないよ」

入団テストに落ちた僕に、寧大は言う。

「お前は、才能がある。俺とは、違う」

「なら、何故、落ちたの?」

「一人だけ、目立っては、ダメだろう?」

言っている意味がわからなかった。

僕は、あの時、声を掛けてくれた榊さんと同じ車に乗り、ある場所に向かっていた。

「新しくレストランを出そうと思っていてね」

最初、逢った時に、彼は言った。

「みんな、そこそこお金を持っている。そういう人達が、気軽に音楽を楽しめる場所を作りたいと思っていてね」

榊さんは、国内にも、幾つか、レストランを持つオーナーでもある。

「ピアノだけでなく、バイオリンを提供したいと思っているんだ」

食事をしながら、ピアノだけでなく、気軽に、バイオリンを楽しめるようにしたいと話していた。

「小さな贅沢をみんな、求めているんだ。確かに、youtubeとかで、音楽を聴く機会は増えたが、生の音楽に触れる機会は、少ない。都会のレストランにピアノとバイオリンがあるのは、珍しくない。僕が考えたのは・・・」

榊さんは、とめどもなく自分の夢を話し始める。

「僕は、事業に失敗してね。何も手につかない時があったんだ。その時行った、カフェで・・・本当に安いカフェなんだよ。そこで、聞いた生のバイオリンが忘れられなかったんだ」

小さな贅沢を提供したい。

僕は、榊さんの熱意に押され、バイオリンを弾く機会をもらったのだ。



今度こそは、決めたい。

高岡は、心に決めていた。

ずっと、社長の右腕として、活躍してきたつもりだ。澪の事は、何年も、見守っていたつもりだ。

「君にどうかと思って」

そう、社長に言われた時は、将来を約束された気持ちになっていた。

澪の周りには、黒い噂があった。

澪の叔母が、会社を狙い事故を企てたと誰もが噂をしていた。

だが、実際、彼女には、アリバイがあり。事件性はないという結果になっている。次に、疑われたのは、自分だったが、アリバイもあり、事故として、決着がついていた。

勿論、自分は、白である。

なので、本当に事件性があるとしたら、叔母で、澪と一緒になったら、自分が巻き込まれても、不思議ではなかった。

「いろいろあると思うが、君に任せたいと思う」

社長にそう言われた瞬間、不安は、全て吹き飛んだ。

「問題は・・・」

澪の強い拒否だった。

いくら、鈍い自分でも、澪が、自分に好意を抱いてないのは、わかっている。

「考えてみると、きちんと話した事がなかった」

視力のない澪が、安定した将来を望むなら、親の認める自分との結婚が、幸せへの近道ではないかと、高岡は、考えた。

高岡は、ナルシストだった。

澪が、自分を拒否しても、最後には、自分に靡くと、大きく勘違いをしていたのだ。

「絶対、決めます」

澪を、落とそうとしていた。

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