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僕らは、それぞれに

澪は、その日、後からシーイが合流するという高岡の言葉を信じて、那須の別荘へと向かった。

そこは、ペット可能のキャンプ場もあって、たまに、アポロンを遊ばせたいと、澪が以前から希望していた場所でもあった。

「ワンコ達が、入れるレストランやスパもあるんです」

同じ企画室の子や、サロンで聞いていて一度は、行ってもたいと思っていたのだ。

澪は、意外と行動的だった。

確かに、視覚障害と言う行動範囲が狭くなりそうな障害は、持っていたが、もともと、行動的な性格で、事故に遭う前は、一人で、中華航空に乗り、旅費を抑える為、中国で、24時間、空港で、乗り換え待ちをやってのけた。

Tシャツに、ジーンズという服装で、過ごす彼女は、いつも、現地の人間と、間違われた。だから、白杖や盲導犬がそばに居ないと、健常者と同じ扱いを受けてしまい、かえって、危険な目にあってしまう事もあった。

「湖や湿地もあるから、気をつけてくださいよ」

目的地に着くと、企画室の女の子達は、しつこく注意した。

「大丈夫。大丈夫」

澪は、適当に返事した。

キャンプ場は、森の側にあって、その向こうは、湿地帯だ。湿地帯の手前が、小さな湖。湖畔には、釣りをしている人達がいる。小高い丘の斜面には、ドックランがあり、そこで、アポロンを遊ばせたいと思い、企画室の後輩が、付き添っていた。

「行動範囲広すぎですよ」

「この位、大丈夫」

「高岡さんも心配していますよ」

「心配させておいていいわよ。ところで、シーイはいつ、来るの?」

「シーイ?来るって、言っていました?」

「高岡さんが、シーイとキャンプ場で、対談するシーンも入れるって」

「来るって、聞いていないです。来る予定なんですか?」

澪は、珍しく不機嫌になった。あの日、シーイ事、海と一瞬、感情が通じた気がしたが、今日の事は、何も、話をしていなかったのだ。

「じゃ・・・来ているのは」

「企画室と広報。高岡さんと澪先輩と、私達の10名にも、満たない位ですよ」

「何しに来たの?」

「次回の撮影の下見って聞いています」

「下見なのに、泊まりなの?」

「日没後の撮影になるから、直に確認したいって」

「誰が、考えたの」

「高岡さんです」

そう後輩は、言うと、澪のブラウスの袖を引っ張った。

「ほら、噂をすれば、来ましたよ」

遠くから、歩いてくる気配がする。高岡のよくつけているコロンが、鼻の奥をくすぐる。あまり、好きではない香。

「私達、行きますね。高岡さん、澪さんと話したいみたいだから」

「ちょっと、待って」

澪は、引き留めたが、高岡に気を使い、後輩は、その場を離れてしまった。

「澪さん」

高岡は、上機嫌で、澪の前に立った。

「おつかされ様です。調子は、どうですか?」

やけにテンションが高かった。

「日程を調整したんですけど、シーイが、都合が、合わないって事で、下見という事に変更させてもらいました」

「そんな大事な事、どうして、早く言ってくれなかったの?」

「言いませんでしたか?」

「聞いてないわ」

「そうでしたか」

高岡は、ハハハと笑って、誤魔化す。

「まぁ・・・せっかく、いい所に来たんですから、ゆっくりしましょう」

澪の白状を持つ手に触れる。

「段差があって、危ないですから、僕が」

「大丈夫」

澪は、手を払って、自分で歩き出そうとした。

「澪さん!」

その先に、切り株があったらしく、高岡は、慌てて、澪の手を引いた。

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