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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
「磔の男」作戦
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「磔の男」作戦 8


 1958年 ドイツ第三帝国 ウィーン

 「うーん」

 大尉が頭を振りならフローリングにあるソファで起き上がる。

 昨日、ルセフが行きつけの酒場にて3人は、ウィーンの夜を満喫した後で彼の家でへと向かった。

 そのまま、ルセフたちと宅のみの二次会をした後に彼の意識はそこから途絶えていた。

 ルセフが住まいは、ウィーンの行政に努めている者とは慎ましものである。部屋には読み古した小説や最低限の家具、ぱっとしない衣服がかかったハンガーレーン、唯一の趣味なのであろうコーヒーを入れるためのミルやサイフォンが置かれていた。

 「昨日は気づかなかったが、何とも殺風景な住まいですな」

 キッチンのあたりで転がっていた、貴社が寝起きざまに呟く。

 「そう言うなよ。一泊の宿を貸してもらったんだから」

 大尉が記者へ苦言を述べていると、奥の方からギシギシと廊下板を踏みしめる音が近づいてきていると、続いて目の前のノブがひねられて扉がきしむ音が響いた。

 「おや、お二人ともお目覚めのようですね」

 大尉たちの顔を見たルセフが下の市場で買ってきた食材を抱えて入ってくる。後ろには、全国指導員の姿もあり、シャワーでも借りたのか、しっかり整えられた髪の毛とシャツで彼と動揺に荷物を持っていた。

 「閣下。もしかして昨晩はお楽しみに?」

 記者が冷やかし交じりにルセフへと問いかける。

 「ははは。そうなればと思うだろうが、あいにく三人とも家に挙げた途端に各々の寝床を確保して寝てしまったよ。彼女には私のベットで寝てもらい、私は大尉の反対側のソファで寝ていたんだ」

 ルセフがそう答えて指をさすと、彼が昨日着ていた着衣が無造作に脱ぎ捨てられていた。

 「ところで閣下。昨日の話ですが、いかに考えておりますか?」

 大尉が、昨日の話を蒸し返す。

 「まぁ、そのことは朝食を食べながら考えましょう。今から作っていきますね」

 そう言ってルセフがキッチンに向かい、それと入れ替わるように記者が近づいてきた。

 「大尉。昨日聞いたばかりの事なんですから、彼なりに納得いく替えが出来なんですよ。あんまり無理強いは、頑固になって余計首を振ってくれなくなりますよ」

 記者は、ルセフの気持ちを察してか、大尉の焦りを諫めた。

 ルセフがいるキッチンからは、こぎみよい包丁の音と鍋が煮えたときに上がる湯気により蓋を揺らす金属音が心地よく聞こえていた。

 「彼は、ああゆう事をするのが好きなんですね。すごく手際よくやっていらっしゃるみたいだから」

 全国指導員が二人にコーヒーを入れて持ってきてくれながら呟く。

 「ありがとう。しかし、彼にはこの国の統治者としての使命がかかっている。さもなければ、我らの未来は血塗られた十年よりも悲惨なことになる事だろうよ」

 大尉は、彼女が入れたコーヒーを口に含みながら呟き返す。

 「うっ!」

 大尉は口に含んだコーヒーを頑張って飲み込むと、ムッとした顔でコップを近くの机に置いた。

 「どうしたんですか?」

 「このコーヒーはどれで入れたんです?」

 尋ねられた彼女は、机の上にあるコーヒーポットを指差してつづけた。

 「あそこに置いてあったコーヒーを直接入れたわ。彼が擂ってくれたコーヒー豆よ」

 「なるほどな」

 そう聞いた大尉は、キッチンに向かうと棚にしまってあったドリップ用の紙を取り出して、コーヒーを入れ直した。

 「おいおい、大尉。一人だけずるいですよ」

 記者は、彼の後でそのコーヒーを飲んだようで、苦虫を噛んだような顔をしながら大尉へコップを差し出していた。

 「あいにくだな。自分でやってきてくっれ」

 嫌な笑みを浮かべながら、大尉が自分の寝ていたソファに腰かける。

 「しかし、あんた。ほんとに自分の業務以外できないとわな。もしかして、料理とかもダメだったりするのか?」

 こし直したコーヒーを口に含みながら全国指導員へと尋ねる。

 「そ!そんなことないですよ。たまたまこすのを忘れていただけです!ドリップぐらい知っていたすよ」

 彼女は、動揺しながらも大尉の言った事を否定する。

 「動揺がひどいぞ。そんなに気にするなよ」

 大尉がそう言ってコーヒーを上げると全国指導員は、顔を赤面しながらその場で縮こまる。

 「大尉。そんなに彼女をいじめてあげないで上げましょうよ。ほら、朝食ができましたよ」

 ルセフがリビングにいる三人に向かって声をかける。

 キッチンに向かうと元々自身と母親が座る程度の小さな机に四人分の料理が並べられていた。

 オーストリアの代表的なパンであるカイザーロールが薄肌色の焼けた生地を見せており、皿に並べられたベーコンと両面焼いた卵焼きがきれいに並べられていた。

 「さあ。皆さんでいただきましょう」

 彼の言葉に従うように三人も皿に置いてある料理を味わい始める。

 「ところで、本日のご予定は何ですか?」

 全国指導員がルセフの今日の予定を伺いながらカリカリのベーコンを口に運ぶ。

 「そうですね。昨日のことを整理したいのもあるから、少し整理したく思っているんで・・・・」

 ルセフが次の言葉を発しようとした時。玄関のチャイムが遮るように鳴った。

 「こんなに朝早く。一体誰だろう」

 そう言ってルセフは、ゆっくりと玄関へ向かい扉を開ける。

 「ルセフ・ヒュルールさんでよろしいかな?」

 チェーンで止められた扉の向こうには、みなれたSSの軍服を着るジュンタースらが書類のようなものを確認しながら圧をかけていた。

 「一体何の御用ですかジュンタース殿。今日はお招きしておりませんが」

 ルセフがそう言って扉を閉めようとするとジュンタースは足をねじ込んで制止する。

 「あなたになくてもこちらにはありましてね」

 「そんな横暴をしてただではすみませんよ!」

 お互いの押し問答をしているのを見た三人も互いにできることを準備し始める。

 「ルセフさん!ここは俺が抑えます」

 そう言って大尉が思い切り扉を押し込むと、ジュンタースの足が抑えられずに引っ込み、そのまま扉を閉めることができた。

 しかし、SSを締め出すのに一般家庭の扉では、そこまで持つわけもない。

 彼らは、持っているMP38の改造モデルMP44を扉越しに発砲する。

 瞬く間に扉はハチの巣となり、周囲には木片と弾丸、ドアノブの残骸が飛び散っており、とどまっていたらミンチが確定していた。

 「派手に撃ってくるね。さてと、このままじゃまずいから」

 大尉は、ルセフの手を引くとそのまま奥へと走っていく。

 奥では、全国指導員と記者が非常出口がないか探していた。

 「ルセフさん!ほかの道はどこかにありませんか」

 全国指導員の問いかけにルセフさん無言で首を横に振る。

 「皆さん。さっさと飛び降りるよ」

 そう言って、大尉がキッチンの窓をこじ開ける。

 「何言ってるんですか!SSの奴らが外も見ているに決まっているじゃないですか」

 「そんなことは、百も承知してるっていの」

 全国指導員の指摘に大尉は、持っているルガーP08とキッチンに置いてあったキッチンナイフをもって答える

 「言っていても仕方ないでしょう。さっさと行きますよ」

 記者がそう言うと同時に玄関の扉がけ破られる音が響いた。

 「大人しくしろ!貴様らの拘束命令がすでに出ているんだ」

 SS兵士の声とともに近づいてくる足音が大きくなっていく。

 「ああ!もう」

 4人は、一斉に窓の外へと飛び出す。

 「いたぞ!窓から出てきた」

 外に待機していたSSが彼らを指差しながら銃を向ける。

 「お土産だよ!」

 大尉は、持っていたナイフを投げつける。

 ナイフは、SS兵士の手に刺さると、その場でMP44を落とす。

 「おのれ!」

 その声と共にMPの鈍い金属製の発砲音を唸らせながら鉛球を吐き出す。

 「容赦なしだよな!だったら」

 大尉がそう言うと上の階にある窓を射撃してガラスの破片を降らせる。

 ガラスの破片は、SS兵士むき出しなとこをに向かって降り注いでいき彼らの射撃を鈍らせる。

 「急いでください!早く」

 4人は、裏路地に飛び込むと、直ちに後ろからSSが飛び込んでくる。

 「あれ?あいつらここに入ったようだが」

 「馬鹿野郎!早く追うぞ」

 SS兵士たちはそのまま走っていく。

 「連中は言ったようだな」

 そう言って、近くのマンホールと横にある窓が羅のぞき込む人たちが小さい声で確認する。

 「ご無事なようで何よりです。閣下」

 「あなた達は、いったい・・・・」

 ルセフたちを助けた者たちは一体?SSの目的とは?

 

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