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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
「磔の男」作戦
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「磔の男」作戦 12

1958年 ドイツ第三帝国 ウィーン

 フリードリッツドルフの南部に森林地帯では、発進準備を進めていたJu52がほかのスタッフと共に待機していた。

 「本当に来るのか?途中で捕っていないだろうな」

 パイロットが不安交じりに加えている煙草を床に捨てて黒鉛の上がるウィーン市街を見つめていた。

 その様にパイロットたちが不安がっている頃、ルセフら一行は何とか橋を越えて中洲の方へと向かう道中を走っていた。

 Sd.Kfz.222は、橋でパンツァーファウストを食らった事で走行不能になり、途中から徒歩にて移動していた。

 アルバン達は、予定通り反対側に向かってトラックを走らせて敵の攪乱を実施していた。

 「さっさと飛行場に迎え!」

 大尉が持ってきたFG42を乱射しながら、向かってくる親衛隊員を薙ぎ払う。

 親衛隊員もKar98kやMP44にて射撃するも大尉が張る弾幕と燃えている装甲車が影響し、なかなか決定打を与えられない状況となっていた。

 「貴様ら!一体何をしているんだ」

 後ろに到着した装甲車から、親衛隊将校が前線兵士に怒声を浴びせる。

 「申し訳ございません。しかし、あそこにいる男の弾幕とSbが邪魔で中々先に進めなくて」

 「馬鹿野郎!たった一人にこれだけの者たちが止められているだと。貴様らの忠義はその程度か」

 その様に親衛隊がもめている頃に大尉は、手元にある煙幕弾を転がして後ろへと下がっていく。

 「大尉。早く来てください!」

 全国指導員が慣れていないルガーP08を適当にぶっ放しながら叫ぶ。そのうちの一発が大尉の近くをかすめた気がしたが、それどころでない光景が彼女に移る。

 全速力の大尉の後ろに腕の長い化け物が近づいて来ており、煙幕越しではあるものの、その体躯が人でないことを示すしていた。

 「早く!なんか来てる」

 全国指導員がそう伝えると同時に大尉の目の前にその一匹が跳ね落ちる。

 「くそ!あの時、橋にいた奴らか」

 大尉が慌ててFG42を構えるも、圧倒的腕力でそれを叩き落とす。

 「やばっ!」

 大尉は、慌てて胸元にしまっているルガーを引き抜こうとする。

 「大尉!」

 「のけ!」

 全国指導員を脇に追いやり、貴社がワルサーP38にて、化け物を打ち抜く。

 聞いたことのない悲鳴と共に大尉が抜いたルガーが近距離で頭を下から脳みそぶちまける。

 大尉は、呆気にとられる間もなく3人の下に走っていく。

 「すまないな文屋。助かったよ」

 「そんな事はいいから早くいきますよ。こんな所で死んだら意味がないですからね」

 4人が走って茂みの中に飛び込んで行くと、その後ろから今までより早い射撃音がけたたましく唸りを上げる。

 「ルセフ様!こっちです」

 土嚢の上に乗ったMG38汎用機関銃を撃ち降ろしながらルセフたちを招き入れる。

 土嚢越しの者たちは、つなぎ姿であったが、その動きはそれなりにしっかりとしていた。

 「早く上がりましょう!あの人たちが足止めしてくれてますから」

 4人が走って丘を上がっていくと、そこには発動機をうならせながら一台の飛行機が待機していた。

 「早く乗ってくださいよ!ここまで大騒動になるなんて思っていなかったので」

 タラップから声をかける整備員の下に向かうと、ルセフたちを引っ張り上げるように機内へと乗せる。

 「ルセフ様!よくご無事であられました」

 パイロットは、ルセフ一行が到着してすぐにタラップを片付けてから、暖まっていた3つの発動機を吹かしながらJu52の重たいからだを引っ張り上げる。

 「おい!ヴィルヘルム閣下たちはどうなのだ?」

 「私は何も聞いていませんが、なんでもウィーン駐留の親衛隊員が抜け出すのに手を貸したらしいので、問題ないかと思います」

 パイロットは、手元にある情報を彼に伝えると落ち着いたのか、そのまま席に戻る。

 「なんとも厄介な任務でしたな」

 記者がそう言いながら、今まで取ってきた写真のフィルムをケースにしまい込む。

 軽快に空を走るJu52がオーストリアを抜けてドイツの首都ベルリンにたどり着くのは、すでに日没であり、滑走路の照明がまぶしく光っていた。

 ヨハニスタール空港に滑り込んだルセフ達は、闇夜の中でありながらも滑走路の脇にいるルドルフ・ヘスらルセフ派たちが待ってくれていた。

 「ルセフ閣下!よくぞご無事でお帰りになられました」

 「副総統閣下。お初にお目にかかります。ルセフ・ヒュルールであります」

 二人の握手を必死に記者が撮影を行っている。

 疲れ切った大尉はタラップのて腰を下ろしながらその光景を眺めていた。

 「お疲れさまでしたね、大尉」

 全国指導員が近くのウォーターサーバーからとってきた水を大尉に手渡す。

 「本当だよ。これなら、ヴォルシェビキとやり合っている方がまだましだったよ」

 二人は、少し笑いながら、ベルリンの夜景を眺めていた。

 翌日の朝刊では、ドイチェランドを先行に「ドイツ第三帝国に光る新生『ルセフ・ヒトラー』がベルリンに降り立つ」という一面の元に空港でとられた写真とベルリン総統府からの正式発表を載せるものであった。

 しかし、これをひっくり返すような一大事件がこの後に起こるとは思ってもいなかった。


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