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第5話 コユキ=アオバ

まずは玄関を出る前に、見た目を変える。

今の私は、ゆで卵みたいな白い肌に優し気な顔立ち、すらりとはしているけれど出るとこは出ている、癒し系のゆるふわお姉さんって感じだ。ピンクの白衣とか着たら似合うだろうな。これが「コユキ」としての姿。

いくらかのゴールドを払い、それらを以前ゲームで使っていた見た目、私の現実での姿に近づけていく。項目を次々いじり、容姿を確定させる。イメージ図を見ると、つり目のきりりとした顔、頭の後ろでまとめ上げた長い黒髪、細身で出るところはさっぱり出ない体躯の少女が立っている。これが私の本当の姿、「アオバ」としての容姿だ。


覗き穴から、辺りに誰もいないことを確認し、シックな木の扉を押し開ける。ギィィという扉のきしむ音と、鈴の奏でるリーンという耳良い音が絡み合う。おお、素敵。病院とか整体院よりは喫茶店のドアっぽいけれど、雰囲気があっていい。

しっかりと施錠し、歩き出す。地図を見ながら商店街に向けて進み、ある店を探す。途中で、ひとりのおっさんとすれ違った。おっさんは私を一瞥した後、自らの目を疑ったのか、こちらを凝視してくる。こちとら見せもんじゃねえ、そんなぶしつけな目でじろじろ見んな。


「あ、あの、あなたは、もしかして……!」

おずおずと声をかけてよこすが無視。私の記憶にはこんなおっさん存在しない。大方、以前私にサクッと負かされた雑魚か、噂を知っていて取り入ろうとする雑魚のどっちかでしょ。構う理由がない。

「その、どうか、そのお顔を」

「うるさい。邪魔するな。」

コユキのときよりいくぶん低い声で告げる。

「そんなつれなくしないで、どうかお知り合いに……」

ああ、うざったい。

「殺すぞ?あ?」

さっきよりトーンを下げた声で脅すと、相手はすくみあがって退散した。案の定雑魚だ。


移動を再開し、目的地の武器屋に到着する。がらんとした店内には人気がない。

「すみませーん。誰かいませんか?」

奥に向けて声を張ると、暗闇の中からクマのような体格の人が出てきた。

「おう、すまんね嬢ちゃん。して、何が入用だい?」

ふむ、この人は私のことを知らないようで、全く普通に応対してくれている。ああ、近すぎず遠すぎないこの接し方、この距離感が欲しかったんだよ!

心の中で思い切り叫ばれる快哉はさておきと、私は注文を始める。

「私のこの手に合った長刀と短刀。それから、出来合いの長刀を一本頼みます。」

「まかしとけ。ちょいと手、触らしてもらっていいかな?」

言われるままに手を差し出すと、クマのような体格の人(以後クマさんと呼ぼう)は自分の豆だらけのごつごつした手と並べ、大きさを比べた。

「嬢ちゃん、腕は細いのに肩はしっかりしてんなぁ。短刀は軽くして小回りが利くやつ、長い方は刃のしっかりした馬力のあるやつがいいな。多少重くたって、その肩だと振り回されないだろう?」

さすがはプロ、全部お見通しだ。

ちなみにこのゲーム、スリーサイズは変更可だが筋肉量は変えられない。コユキとは体型もやや違うが、筋肉の付き方を見れば、わかる人にはわかるかもしれない。コユキがアオバと同一人物だとわかれば、私の平穏なゲームライフが台無しになる。体型のわかる服装は極力避けよう。

「はい、それでお願いします。いつ取りに行けばいいですか?」

「一週間後ってとこだな。ほい、出来合いの長刀はこれでいいかい?」

「大丈夫です、ありがとうございます。」

「おう、毎度あり!」


目指すのは街の北の森。腕が鳴る……!

そう思いながら、私はクマさんの武器屋を後にした。


北の森の入り口は、低木やツタが絡み合い、一歩入ると急に薄暗くなった。あたりに注意を払っていると、斜め後ろに一組の赤く光る目。左手に持つ長刀の刀身と、右手に持つ短刀の柄を、ガーンと打ち合わせる。「挑発」の方法は、どのゲームでも大体一緒だ。案の定、その目はピュッと近寄り、私のすぐ前にピンクの毛並みのウサギが着地した。


シュラビット

あまたの修羅場を経験してきた兎。普通の兎が出会うと道を開ける。兎の上位存在だが、上には上がいるらしい。


ふむ。その辺の兎よりはよっぽど強いけれど、最上位の存在ではないということか。腕試しには手ごろかな。そう見定め、軽く長刀を何度か振ると、兎は跡形もなく消え去った。後には素材が残されるのみ。うーむ、あっけない。そう思いつつ、また歩き出そうとしたとき、ふいにたくさんの視線を感じた。さっきと同じ赤い目が、今度はかなりの数の赤い目が、私を見つめているのだ。これ、いっぺんに相手するのめんどくさいなあ。となれば……。

腰を低くして丹田に力を込め、長刀を横に構える。短刀の柄でその刀身を再びガンと叩くと、20匹くらいのピンクウサギがいっぺんに出てきた。

空気をたたくような感じで長刀を一閃させる。手ごたえ自体は空気だが、何かを思い切り打ち付けたようなズバンという音が鳴り響き、ピンクウサギの集団は素材の集団に変わった。そいつらを回収しながらさらに奥へ行く。

薄暗い道に足を踏み入れたところで、ピンクウサギとは比べ物にならないほど強い気配を感じた。もはやウサギと呼ぶには大きすぎる体躯を持った真っ赤なモンスターは、のしのしと歩き、私に近づいていく。


ブラッディラビット

数えきれないほどの戦火を潜り抜け、鍛錬を重ねた兎。すべての兎が恐れをなしてひれ伏す、兎の頂点に君臨するモンスター。


おう、兎のボス様の降臨だ。

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