第6話 最強が最強なワケ
「……ふぅ、大漁大漁」
私は森の小道を歩いていた。
結局、でっかい兎のボス様は、ただ図体に比例して体力が高かっただけで、攻撃はのろま。仮にも兎の頂点なんだから、せめてネザーランドドワーフくらいにはキビキビ動いとくれよ、張り合いがない。とはいってもそこそこ重さのある攻撃ではあったよ。いっぺん動かないでわざと当たってみたら、HP半分くらい吹っ飛んだ。というわけで、ハエの止まるようなスピードの攻撃を鼻歌交じりでかわしつつ、懐に潜って短刀と長刀で連打してたら、ぶっ倒せちゃいましたー。以上で赤いウサギさんの話終わり。
それ以降は、というかついさっきまで、ちょっと開けたところに立って「挑発」をやって、集まってきたのを範囲攻撃で皆殺しにして、範囲攻撃の強化にいそしんでいた。そのうち要領がよくなってきて、大体のモンスターはワンパンで倒せちゃうようになったけれど(ウサギはモンスターの中ではかなりの雑魚だったらしい)、そのせいで範囲攻撃と挑発ばっかり上達して他のスキルはさっぱり上がらない。もともとそのためにやってんだから問題はないけれど、やっぱりこう、スキルの欄に「挑発」「範囲攻撃」しかないのは寂しい。
とかなんとか思いつつちんたら歩いていたら、頭上がふと暗くなった。
上を見上げると、なんとでっかいチョウチョ様登場!
クロウバタフライ
非常に大きい蝶。ゲーム内のカラスに匹敵するほど大型で、現実のカラスのように知能が高く、倒すのに非常に苦労することからこの名がついた。
カラスと同じくらいって、このチョウチョ様、羽が私のリーチよりでかいよ?こっちのカラスってそんなにでっかいのね。とりあえず「挑発」してみると、チョウチョ様、こちらに向けて鱗粉をばさり!
「うわっぷ!」
これは、間違いなく私の注意不足だね。
たちまち体の周りにエフェクトが立ち上り、体全体に何とも言えない不快感が充満する。毒の鱗粉か。よくある話だけれど、こちらのゲームの状態異常に慣れていない私にとっては結構大変な敵だ。しかも、こちらの範囲攻撃の届かないところを飛んでいらっしゃる。確かに頭はいいみたい。こりゃ、逃げても空から追跡されるな。こっちの攻撃も届かないし、どうしたものか……
少し思案し、心臓から肩のあたりに意識を向ける。気配を全部吸い込むように。……おお、成功!体が、胸からどんどん透明になっていく。ただこれ、状態異常の中でやってるってこともあるだろうけど、なかなかに難儀だな。いったん解く。この、透明になったり戻ったりの時間が長いのも考え物だ。そう思いつつ、また同じ場所を意識する。今度は、透明になるまでが少し短いように感じた。おお、こうやって練習していけばそのうち、瞬時に透明になれる日がくるのでは!?
と、殺気が上から近付いてきた。とうとうチョウチョ様が業を煮やしてとびかかってきたらしい。いや、こんな調子だったら、そんな日が来る前に倒されちゃうわ。このゲーム復活ありだからいいけど。とりあえずよけながら刀を入れてみた。すいっと切れて透明な液体がボタボタ落ちる。HPはちゃんと減っている。体力はサイズに似合わず紙装甲なようで。
といっても、切り付けたのはほんの一度。チョウチョ様もしばらくは警戒して降りてこないだろうし。
えいえい、とどけとどけ!
そう思いつつむなしくジャンプを繰り返していると、一瞬の浮遊感があった。
え?
再びジャンプ。また、少しの浮遊感。視界が普段のジャンプより高い。よし、この力が手に入ったなら……。
三段跳びの要領で、ホップ、ステップを踏み、そして全力でジャーンプ!
おお、チョウチョ様のすぐ横まで届いた!よし、切り付けるぞ!
空中での自分の様子が手に取るようにわかる。体勢変換なんてお茶の子さいさいだ!体を軽々と反転させ、チョウチョ様の本体にがっぷり切り込む。今度こそ、チョウチョ様はHPを削り切られて昇天した。
スタッと地面に軟着陸し、素材を拾い集め、意気揚々と別の広場へ向かった。
そのあといくらかの敵を葬っていたら、インベントリがいっぱいになったので、素材を売っ払いにギルドに行った。ここのギルドは、現実世界のフリマも兼ねているようだ。
事後報告だけ。
あの後、さらにダチョウ様にも遭遇したので頑張って追いすがって馬乗りになってボコったところ、「俊足」と「怪力」を手に入れましたー!
さらにお猿さんとも遭遇し、取っ組み合いの喧嘩を繰り広げて勝利を収めたところ、「格闘」とか、そっち系統のスキルを一通り習得しましたー!
というわけで、今回の探索の成果は、インベントリいっぱいの素材と「挑発」「範囲攻撃」「透明化」「跳躍」「空中行動」「俊足」「怪力」「格闘」「突き」「蹴り」といった、脳筋っぽい感じのスキルたちでーす!ま、ただ暴れただけにしちゃ上等かね。というか、格闘から足を洗ったはずなのにまだ格闘してる……。ま、どんなゲームでも、基本体の動かし方は変わらないから、格闘系統の体の動かし方は、一度覚えると比較的いろんなゲームで通用しちゃうんだよね。
あ、そうそう、素材をテーブルに並べてみたら、受付のお姉さんに若干引かれたわ。何でだろ?探索って、インベントリいっぱいまでするもんじゃなかったっけ?




