第28話 初ダンジョンは光にあふれ
さらにダンジョンをおりていく。
「とにかく敵の数が多いねー。」
「1匹ずつ倒してたらキリがねえな……。」
「ならば、私が範囲攻撃ですべて始末してしまおうか?」
「へ!?」
「ほあ!?」
「一網打尽にしてしまえば、狙いを定める必要さえない。どうだ?」
「……じゃ、素材は山分けってことで、いいですね?」
「もちろん」
「よっしゃー、やっちゃってくださーい!」
ズバッ!
範囲攻撃をひたすらかけまくる後ろで、レンがサクラになにやら耳打ちしている。変なこと吹き込んでなきゃいいが。
ドロップした素材は、ジョーとレンが拾い集めてくれる。素材は気配も音もないから、なかなか集めづらいんでね。
そうして、そのフロアに降り立った。そうして気づいた。
このフロア、何か妙だ。
「青葉、避けて!」
ジョーが叫んだ。
「え?何を……きゃあ!」
聞き返す時間もないうちに、私の体は見えない何かに殴り飛ばされた。暗闇の中だから見えなくて当然だけど。
「大丈夫か!?」
「多分、大丈夫……」
「……アオバさーん、今回は、下がっててください。今、気配も何も感じなかったんでしょー?」
「え?あ、うん……。」
「さあさあアオバさん、俺の後ろに。レン、お前はコユキさんを守ってろ。」
「りょーかーい!よーし、サクラ、やっちゃえー!」
「はいです!」
「え!?サクラは、『暗視』を使えなかったはずでは……」
「さっき、アオバさんが暴れてるときに、レンが教えてたんですよ。」
「ああ、そうだったのか……」
「おぉーっと、サクラ選手、息もつかせぬ猛攻でボスに反撃のスキを与えないー!あっ、ボスが苦し紛れのカウンターだ、サクラ辛くも避ける、しかし体勢が崩れてボスに逆襲を許したー!」
レンが熱く実況を入れる。
「レンはまだ小学生ですからね。こうやって無邪気にふざけてると、可愛いもんです。」
「ジョーお前いくつだ」
「さあ。」
しかし、サクラは劣勢に立たされているらしい。大丈夫だろうか。
レンの実況は続く。
「サクラ選手、先ほどとは打って変わって防戦一方になっているー!あっ、サクラ、危ない、危ない!……えっ?う、うおお、うおー!」
「……もはや実況にすらなっていない」
「まあ、気持ちはわかりますよ。」
「どんなことが起こっているんだ?」
「簡単に言うと、サクラがあのでっかい剣を振り回して、ボスを追い詰めてるんですよ。」
「ほう。」
「イベント期間はまだありますから、きっとアオバさんも見る機会がありますよ。」
「そうだな。」
そうこうしていると、遠くにポッと明かりがともった。
「ダンジョンクリア、ですね。」
「サクラー、クリアしたのはサクラだから、サクラが取ったらー?」
「わかりました!」
足音がして、サクラの上気した頬が、オーブのほの明るい光に照らし出された。
「いやー、それにしても、ボスにかなわないアオバさんっていうのも、珍しかったな!」
「そうだねー、突き飛ばされたときとか、『きゃあ!』なんて言っちゃってさー!」
「かっこいいアオバさんもいいけど、ああいうかわいい系も、たまにはいいよな。」
「だね、だねー!」
「貴様ら、言わせておけば調子に乗って……」
「うわ、すみません!」
「でも、アオバは『暗視』が使えないから、俺たちの方がちょっと有利なんだよねー!」
「俺らは『範囲攻撃』の一つや二つでやられるほどやわじゃないですよ!」
「ぐっ……」
ジョーもレンも、相当な力量を持つプレイヤー。いっぺんに両方相手にするのは、この環境だと無理だ。
そんな私の葛藤と、ジョーにレンのニヤニヤをよそに、サクラの白い指がふわりと曲がり、オーブを包み込んだ。
まばゆい光がほとばしり、視界が途端に明るくなった。目がくらんで思わずぎゅっと目をつぶるが、それも一瞬。目を開けた時には、雲の上のような明るい世界が広がっていた。ところどころ浮かぶ雲さえも美しい青空には、特大の虹がかかっている。
「綺麗……」
思わず目を奪われていると、横からすさまじい悲鳴が聞こえた。
「ぐわぁー!」
「ま、眩しいー!」
「いたたたたた!」
レン、ジョー、サクラが、目を押さえて転げまわっている。
「ど、どうしたんですか!?」
ダミーコユキが問いかける。
「あ、『暗視』は、自分の感じる明るさを大幅に上げることで、暗い中でも目が見えるようにしてるんです……」
「だから、明るいところで使うと、明るさが足されて、めっちゃ明るく見えちゃうんですー……『解除』……!はー、はー、助かったー……ぎゃあ!」
丁寧に解説してくれつつ「暗視」を解除したレンの背後には、いつのまにか天使が忍び寄っていた。見た目は味方っぽいけど、ダンジョンにいるんだから敵モブだよね。
「アオバさーん、助けてー!」
「さっきやいのやいの言ってなかったら、助けたかもしれないな。」
「うわー、大人げなーい!」
「当然、私はまだ未成年だ!」
「謝る、謝りますから、助けてくださーい!」
ヤレヤレ。




