中学一年生 〜安達秋の告白〜
そして、JSC木田に到着。
「ゴメン。」
安達秋の呼吸は荒くなっていた。
「合唱コンクールの準備だけは必要だろ?」
「でも…」
「近くのファミレス入ろう。それなら大丈夫だろ?あと、まず落ち着こうぜ。」
四季はいたって冷静だった。なぜなら、このことを知っていたからだ。泉子はとても姉の秋のことを尊敬していて、大好きだったため、水泳を辞めてしまった姉を、もう一度泳がせるためにはどうしたらいいのかを、四季に相談していた。その時に、「お姉ちゃんはプールに近付くと過呼吸になったり、急に倒れたりする」と言っていた。
「あんたは、一昨年のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、泉子の姉が安達さんだとは知らなかったし、コーチが移転した理由までしか知らないよ。あとは、うちのエースが辞めたこと。」
「そっか。ゴメン。ファミレス行こ?ここにこれ以上居れそうにない。」
四季がそのまま歩き出そうとしたとき、「大丈夫ですか?」といいながら、涼介は手をのばしたが、
「触らないで!」
安達秋は大声をあげ、その手を振り払った。
「ゴメン。帰る」
「ダメだな。」
すぐに返したのは四季だ。
「帰ったらだめだ。早く強弱とか、そういうのの打ち合わせとかするんだろ?それに、返ったら乗り越えられないぞ?」
「何があったか知らないのに乗り越えるとか言わないで?あなたにはわからない。絶対に。」
「す…すいません。」
「でも、合唱コンクールの打ち合わせには賛成。だから、早く行こ?こっちであってるよね?」
そう言って、安達秋は信号を渡ろうとしたが、「逆だぞ?」という涼介の声に一瞬顔を赤くしたが、「ありがとう」と、先ほど四季が受けたばかりの笑顔を涼介に向け、今度は涼介の顔を真っ赤に真っ赤に染めていた。
ファミレスにつき、二人はドリンクバーを注文し、四季はカルピスを、安達秋はコーヒーを持って来た。
「で、強弱って、何を話すんだよ?」
先生からもらった楽譜にはすでにクレッシェンド、デクレッシェンド、フォルテ、ピアノ、スタッカートなどの表現の部分が当たり前のように書かれていた。
「あんたもするって言ってたでしょ?」
「いや、あれは、何て言うんでしょうか?えーっと…」
「分からないなら、聞けば良かったのに…そのくらい考えてよ。あんた外部だから頭はいいんでしょ?」
「すいません。」
簡単に言うと、詩の意味からどの言葉を大事にするか、微妙にためたを作ったりする部分を作ると言った、どのような「詩」としてとらえるのかを考えていた。
「ごめん。俺には詩の美しさとかわかんねぇわ」
「それで終われるわけないでしょ?それよりも…」
☆★☆★
四季には安達秋の言葉を理解することはできず、本日の打ち合わせは終わった。
「役立たず。」
「こんなこと普通するのかよ。俺こんなの知らねぇぞ。それと、もう大丈夫か?さっきの過呼吸」
「大丈夫よ。大丈夫じゃなかったら、こんなこと出来ないし。」
そういいつつも、安達秋は目線を完全にそらしていたが、それについて四季は何も言わない。言ったところで、彼女が我慢しているなら無理に言う必要がないと思ったからだ。
「それよりも、私に聞きたいことがあるんじゃないの?あんたが、合唱について使えないことは分かったし、山Cにも何か教えてあげる」
何故、山Cと呼ぶのかを一番聞きたいところだが、それをぐっとこらえてなんとなくでしか知らなかった、安達秋の水泳選手時代の話を聞くことにした。
「なら、一昨年に何があったのか。もしくは、安達秋という選手がどんな選手だったのかが知りたいね。」
安達秋は明らかにいやな顔をして、
「どっちも答えてあげる。私はとても優しいからね。」
四季は一昨年にはすでに、選手コースで芽が出始めていたが、実は一昨年のことについては、「コーチが独立してチームを作ったときに選手を引き抜いた」というレベルでしか知らない。
「全部原因は私なのよ。」




