私が?
「ララ!ララー!!大変なの!!」
「ルルどうしたの?」
妹のルルが部屋に泣きながら入ってくる。いつも明るく元気なルルが泣いているなんて珍しい。
「お父様がお見合いに行けって言うの!」
「ルルがお見合い?誰と?」
「そうなの!相手はリヒト様だって!あの誰も寄せ付けない冷徹の貴公子様よ。絶対無理…。」
「リヒト様は怖くないわよ?」
「そんな事無い!いっつも冷たい目しているもの!」
リヒト·フォルクレ様は同じ学園を卒業した公爵家の嫡男で、前から婚約者探しが難航しているとは聞いていた。銀髪紫眼で垂れた瞳が甘く見え、王子様のような整った外見から様々な令嬢が近寄っていたが…皆ギッタギタに打ち砕かれていた。誰にも心を許さない難攻不落の貴公子様。
「何故我が家にお見合い話が?」
「高位貴族にはお見合い相手がもう居なくて伯爵の我が家まで話が来たみたい。同じ学園を卒業したのだから話も合うだろうって。無理だよ。あの人令嬢と話さないもの!」
「大丈夫よ。話せば合うかもよ?」
「怖くないなんて言うのララだけだよ!…あ、どうせ断られるのだからララが行ってよ。それだわ!我ながらいい事考えた。」
「は?」
「私のフリして行って断られてきて!一生のお願い!」
ね?お願い!と涙ながらに頼み込まれる。私はリヒト様とは入学してから何回も話したことはあるが、優しく微笑んでくれていたし怖いイメージは全くない。何故冷徹と言われているのかわからない。
「んー…絶対バレるよ?」
「そんな事無いよ!私達そっくりな双子だよ?親も教師も間違えるんだからお見合いの間くらい大丈夫だよ!」
「公爵夫人になれるかもよ?」
「いや!リヒト様と結婚して公爵夫人なるくらいなら結婚しない方が良い!愛されない夫と暮らすなんて最悪だわ。」
「…今回だけよ?ルルは早く嫁ぎ先探さないといけないのよ?」
「ありがとう!!ララ大好き!お婿さんは決まりそう?」
近々会う予定よとルルをソファーに座らせる。姉の私は婿取りで妹は嫁ぐのだと、幼い頃から両親にずっと言われている。双子なのだからどちらでも良くないか?と子供ながらにずっと思っていた。
「ルルの方が領地経営向いてるのにね。なかなかしっかりしたお婿さんを探すのは難しいわ。」
「ララが公爵夫人になってもいいのよ?」
「リヒト様から断られるわよ。あの方はどんな令嬢ならいいのかしらね?皆ことごとく断られてたよね。」
「護衛騎士のミュート様と噂あったよね?」
「あった!見目麗しい2人が距離近いって令嬢達が盛り上がっていたわ。え?本当にそういう事なのかしら?」
2人で散々盛り上がった後に、お見合い明日だからねー!と去る妹にため息をつく。代わりに行くなんて言わなければ良かった。
「明日ルルにドレス借りればいいか。」
私達は昔からよく入れ替わって侍女達をからかっていた。大きくなってからはしていないが、学生時代も皆よく間違っていたのでそっくりなのだろう。
「リヒト様を騙すのは気が引けるけど…まぁ断られるために行くのだし大丈夫か…。」
でも久しぶりに会えると思うと少し喜んでしまう。ルルの代わりというのが寂しいが、今どんな感じになっているのか楽しみになる。学生時代少なからず私もリヒト様に憧れていた…あの柔らかい甘い微笑みに惚れるなって方が無理な話だ。でも私は婿探しをしないといけなくて嫡男のリヒト様は絶対無理な手の届かない存在だった。私が妹だったらって思った時もあったな。本当懐かしい。
「はい!ララこれ着て!」
翌日朝から楽しそうなルルが可愛らしいドレスを持って現れる。普段あまり着ない感じのドレスで戸惑ってしまう。
「凄くルルっぽいドレスね。ありがとう。」
「代わりに行ってもらってごめん。今度私も代わるからいつでも言ってね。」
ドレスを受け取り侍女に用意を始めてもらう。支度が進むにつれルルになっていく。あぁ…鏡の中にルルがいるのに、隣にも本物が居て不思議な気持ちになる。
「用意出来たか?行くよ!」
「お父様どうでしょう?」
「いいじゃないか。ではルル行こうか。」
はいと頷きルルとアイコンタクトを取りながらお父様の後をついて行く。やっぱりお父様は気づいていないな。入れ替わりで今まで1回も気づかれた事が無いから大丈夫だろうけど…リヒト様にはララで会いかったな。
「え?ララ嬢?!」
まさか公爵家に着いてすぐ、リヒト様に会った瞬間バレるとは思っても居なかった。




