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1. 勇者の素質


「お〜い!笑 勇者の素質も無い落ちこぼれ〜!笑」

「俺だったら恥ずかしくて生きていけないわ〜笑」


遠くから嘲笑が聞こえる。

慣れたもので、毎日聞かされていると特に何も感じなくなるそれに、今日は挨拶で返してみる。


「お、おはよう!」


「うわ、落ちこぼれに話しかけられた!落ちこぼれが伝染るぞ〜!!」

「逃げろ〜!!」


そう言って、笑いながら同い年の村長の孫とその取り巻きが逃げて行ってしまった。


仲良くなろうとしてもなかなか上手くいかず、今日もまた失敗したことに悲しみを覚えながら歩を進める。


「う〜ん…どうしたら仲良く出来るんだろう…」


考えても答えが出ない問題に頭を悩ませながら歩いていると、目的地に着いた。


「お邪魔しま〜す…リムおばさんはいますか〜?」


そう声をかければ店の奥からドタドタと聞こえてきて、そうして僕の顔を見て嫌そうな顔をしながら口を開く。


「なんだ。フィンかい。忙しい時に来るんじゃないよ!全く…まだ野垂れ死んでなかったのかい。」


手厳しい言葉に苦笑いで返すしかなく、これ以上嫌味を言われる前に僕は端的に目的を伝えた。


「パンが5つと、肉を2ブロックください!」


「金はあるんだろうね?」


「はい!」


そう言って僕は銀貨を2枚取り出し、カウンターに置く。


「ふん。ピッタリだね。あんたには銅貨1枚まけてやんないからね。二度と来るんじゃないよ。」


「リムおばさん、いつもありがとうございます!」


「チッ、さっさとどっか行っちまいな!」


その言葉を最後に追い出されてしまった。

リムおばさんは僕に対して嫌味が止まらない人だけど、お金を払えばちゃんと売ってくれるからこの村だとかなり良心的な人だ。


店に入れてくれない人もいるし、話しかけても無視してくる人も少なくない。


端的に言うと、僕はこの村で村八分にされている。

理由は簡単で、僕に両親はおらず、そもそも僕がどこから来たのか分からない。ある日、村の付近の森に1人で寝ていたそうだ。全く素性の分からない僕は物心がつく前から邪魔者扱いされていた。


それでも、あの日までは僕の面倒を見てくれる人が何人かいたんだけれど…


あの日、勇者の素質を調べた日。

ルミナリア王国では、8歳になると勇者の素質を調べる慣習がある。基本的に親が片方でも王国出身の人だったら勇者の素質があると判定されるのだけれど、例外もある。


稀に、勇者の素質を持たずに生まれてくる人もいる。王国調べでは素質を持つ人は約100%とされているから、そんな例外は本当にごく少数らしいんだけどね……


そんな数少ない例外に僕も当てはまってしまったらしく、さらに気味悪がられ、今では村で普通に話してくれる人は誰もいなくなってしまった。


流石にこの話を聞かされた時は、僕どうしようもないじゃん!って悲しくなってしまったけど……

あれから2年が経ってもう10歳。いつまでも悩んでいても仕方が無いし、皆とできるだけ仲良くなろうとしつつ頑張って生きている。


そういえば、勇者の素質の判定と同時に、自分の魔法適正についても調べることができるんだけど……

僕はたいへん珍しい無属性に適性があることがわかった。これに関してはラッキーって思ったんだけど、無属性ってまだまだ分かっていないことも多くて、教えられる人がほとんど居ないらしい。


まあ、この村に教えられる人が居たとしても教えてはくれないと思うんだけどね……


折角の魔法適正も宝の持ち腐れで、とりあえず魔力を練る練習と初歩的な魔法技術の練習だけ欠かさず続けて、あとは狩りでお金を稼いでなんとか暮らしているという訳だ。


村に居てもこのまま生涯を終えてしまいそうだし、何とか村を出て王都とかに行ってみたいな。

宛がない僕では、王都で生きていけないと思うけど。

唯一宛があるとすれば、才能さえあれば誰でも入れる全寮制の王立学校。身分も関係なく、実力で入学の可否が決まるらしい。


基本的には15歳で入学だから、僕が挑むとしたら5年後。それまでに何とか無属性魔法を使いこなせるようになって、王立学校に入学しなければ…!


そんな何回意気込んだか分からない目標を改めて定めていると、いつの間にか家に着いていた。


ボロくて今にも崩れてしまいそうな、村のはずれにある家。これが僕のマイホームだ。


中に入ると外装よりは幾分かマシな室内で、でもギリギリ人が住めそうにない雰囲気が漂っている。


僕が現在住んでいるのは、何十年も前に村から出ていってしまった人が当時住んでいた廃屋だ。これでも自分で1から家を作るよりかはだいぶマシで、ありがたく使わせてもらっていた。


手際よく買った食材を簡易冷蔵庫に入れて、またすぐに家を出る。


今日はお金を稼ぐための狩りの日だ。

僕はわくわくしながら、家の裏手にある深い森に向かった。


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