第四十話
怜利から手紙が届いた。
『 成羅へ
調子はどうですか? かなり動けるようになったとハルに聞いたよ。術はまだ扱えそうもないかな?
そういえば、こっちは鹿児島の屋敷に到着した。出雲も、諫早も協力はなさそうだ。
色々あったけれど、四国を周ってそっちに戻ろうと思う。
多分、成羅はうずうずしてると思ってる。当たってるかな?
近々出雲屋敷の、宮子ばあちゃんがそっちに行くから、それで京都の術者会の建物に。
八神 怜利より』
その手紙を読んだ私は、一瀬さんのところへ追い込み修業に走った。訓練場のドアを蹴り開けると、逆立ちで腕立てをする筋肉がいた。
「お。来たね成羅くん、今日は何をするのかな?」
一瀬さんは、深く息を吸い込み、いつもの匂いを出している。どうやらこの獣臭は身体強化をすると香るらしい。人間の体のまま獣化と同じようなことをしていると思うと、この人も人間じゃないみたいに思えてくる。
「鎌を使えるようになっておきたいんです。私がもらった武器なので」
一瀬さんは聞く前から無限鞄を開きだした。この前自慢していた愛刀の模造刀を取り出す。
「ほら、君のに呪力込めてあげよう、貸してみなさい」
腰に提げていた小さな鎌を渡した。
「ありがとうございます、」
「……任務に戻るのかい?」
一瀬さんは鎌に呪力を込めながら問いかけてきた。なんで分かったのだろう。
「はい、京都の会議所に呼ばれたんです」
「へぇ、誰から?」
「怜利です」
そう答えると一瀬さんは目を大きく開いた。
「へー。へー……。やるなぁ、怜利……」
「なにがですか……?」
軽く咳払いをした一瀬さんは大きくなった鎌を渡してきて、すぐに訓練場の反対側まで跳んだ。
距離は三十メートルほど。近づくほど一瀬さんの得意な間合いだ。
「じゃあ、来なさい」
模造刀がまっすぐ飛んでくる。妖力で操られたように軌道がまっすぐだ。
刀を鎌で捕らえて下に叩き落とす。床に落ちる寸前で足元を撫でてくる。危ない。念力だ。
「ふんっ」
全力で走っても一瀬さんのもとまで走っていけない。一瀬さんは同じ場所に立ったままなのに、刀だけが何度も何度も襲い掛かってくる。
鎌を振り回して、相手に向かって回転させながら走る。何時間も振り回してきたんだ。できないわけない。
「どうした? きついな?」
一瀬さんは笑いながら印を組んでいた。術とか念力は得意じゃないとか言ってたくせに。
一旦後ろに下がった。刀も一瀬さんの手に戻った。にしても鎌が重い。ずっと振り続けるのは無理だ。
「はは、一度休むか? 成羅くん」
「いいえ」
首を思い切り横に振る。息が切れて、返事なんか聞こえないだろうから。あぁ、自分の汗のにおいが臭い。最悪だ。
「……まあ、私の念力お試しは終わりにしようか。本気で来なさい」
一瀬さんが模造刀を投げ捨てた。床に落とした途端、ぼろぼろに崩れてしまった。
深く息を吐いて。胸いっぱいに吸った。
私は、久しぶりに冷えた胸の空気を感じた。
もう季節は冬に近くなっていた。
こんばんは。音神蛍です。
とうとう四十話になります。皆様が一話でも読んでくださることが原動力になります。
季節はどんどん流れて行きます。
成羅たちの時間は私たちよりも遅く、ゆっくりです。一日一日を書き続けることが私の楽しみになりつつあります。
近々、外伝のシリーズを執筆しようか考えている次第です。
本編に漏れた一日を描くことができれば、私も幸せです。
拙い文章ではありますが、この一話を読んでくださった読者様に深く感謝申し上げます。
今後とも読んでいただけると幸いです。
ではまた。




