ケチャップ
ケチャップ好きです。
デパートの洋食屋のウィンドウに
ならんだごちそうを ぼくは忘れない
マッシュルームとグリンピースのスパゲティ
ひとくち すすると ケチャップの真っ赤なあの味に
ほっぺたまで赤くしたぼくを
おやじは薄いコーヒーを大事に飲みながら
見守ってたっけ
それを覚えてるからぼくにとって
ケチャップはごちそうの味
毎年の誕生日におふくろが
つくってくれたのを ぼくは忘れない
チキンライスをふんわりくるんだ卵焼き
ひとさじ すくうと ケチャップで真っ赤がてんこもり
ケーキなんて知らなかったぼくを
あんたは赤い米だけの小皿を 微笑んで
つついてたっけ
それを忘れてねえからぼくにとって
ケチャップは想い出の味
やがて ぼくも稼ぎを持ち帰る年ごろになって
たまにゃあ ふたりに
なんか食わせてやりてえなと連れ出せば
年甲斐もなくはしゃいだ ふたりが選んだのは
ナポリタンとオムライス
それが笑えちまうからぼくにとって
ケチャップは幸せの味