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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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軍属勧誘

馬と鹿には相性が悪い、アル君

(あれはマズイ!どこを蹴られた!)


 ダッドが駆けつける間にアルは兵士達に囲まれていた。


 仰向けで倒れた彼を助け起こそうとしている。


「待て!触るな‼」


 この中で医学知識があるのは、自分の他は准尉だけだ。


 しかし触るなとは言ったが、戦場で幾多の死を見てきた経験上、あれは助からない。


 頭を蹴られていたら言わずもがな、

 胸部なら肋骨全損、

 腹部なら内蔵破裂、

 こんな山中で、応急治療しかできない設備では、助かりようがない。


 ダッドは兵士を押し退けてアルの顔を覗いた、呼吸の確認だ、最悪即死も有り得る蹴りだ。

 顔を覗き込むと、

 アルと()()()()()


「こんのクソ馬ァァぁァァ‼」


 アルは飛び起きると、馬に殴りかかった。


 馬は、いや軍馬として調教されている馬にはあり得ない事だが、


 彼から逃げ出した。


 そもそも人を蹴飛ばす気性では牽引馬になれない。人の動きに驚いては軍馬になれない。


 そんな珍しい光景を、一堂ポカンとした表情で眺めた。


 アルは頑丈だなあ、と言う呑気な准尉の言葉が耳に残った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「本当に平気なんだな?」


 散々馬と追い駆けっこをして、へばったアルを捕まえて言った。

 簡単に診察した所どこも骨は折れていなかった。


「ウンコ2号があるからな。ババアの何だかって必殺技も防いだし」


(頭を蹴られたか?意識が混濁している?マズイな)


「そうかい?私には三発で()された様に見えたけど」


「そういう戦いだったの。俺勝ったの。ババアの負けなの」


(……これが常態なのか?幼なじみの准尉殿の態度から判じて。・・・天才にはダ.リンチのような満遍ないタイプと、彼のような常識が欠落したタイプがあるということか)


「昨日何があったんです?それに、何故彼は無事なんですか?」


「……一口ではとてもね」

「鳥兜飲んだり、ババアに蹴られたり、ババアに縛られたり、ババアと勝負して勝ったり、ババアにスカウトされたり。そう、ウンコ臭い守護があるから俺は無敵だとも言っていたな。キチがいだな、あの親子は」


 ・・・言葉が通じない。コレをスカウトするのか?・・・嫌だよ。・・・


 結局、牽引馬は車両と連結出来なかった。馬がすっかりアルに怯えてしまったからだ。


 仕方ないので、応急修理を終えていた壊れた車両を牽引させた。空荷ならば動くのだ。


 幸い人手なら分隊人員がいるので、荷物は手押しとした。


 荷物の積み込みは完了している。


(本当に軽いな)


 アルの怪我の可能性を考慮して、車両は砲兵科が押した。輜重兵は牽引馬の(くつわ)取りだ。

 車両の制動のために、アルは手押し状態の車両の押し取手部分に並んで歩いていた。

 減速の為のレバー操作をする為だ。


 下りの山道のため、勢いがつきすぎない様にである。


 制動装置というと大仰だが、実に簡単な構造で、手前にレバーを引くと、最後輪に太い円棒が押し当たって車輪を摩擦減速するというものだ。


(これは良いな、軍で採用しないかな、いや

 火砲の移動架台の車輪に、転用できるのでは?やはり、開発に欲しい人材か)


 アルの操作を見て覚えてしまった、実際操作させてもらい減速の力加減も把握した。


「軍曹は覚えが早いね、運送屋でバイトするかね、費用持つなら軍曹用の車両作るよ」


 アルのスカウトを命令されていたので、兵卒では無く、自らが押手を買って出ていた。


 操作の為に、車両と並んで歩くと言っていたからだ。


「それより、アルが軍にくるか?軍にくれば衣食住が只だし、金は貯まるぞ。借金があるんだろ」


 アルは“軍曹らしい軍曹”であるダッドに最初から好意的だったので、


 軍曹。アル。


 と呼び会うまで時間はかからなかった。


「借金なら、この仕事で返済がほぼ終わるしな。遊ぶ金稼ぐ為に軍に入隊しても、遊ぶ時間が無さそうだし」


「それもそうだな。特に下士官以上は休日も半待機だしな」


 ダッドも、ナザレまでの2日でスカウトが成功するとは思っていない。雑談混じりに感触を探っているだけだ。


 そこに、レオンが加わった


「それなら、軍属ならどうだい、輜重科じゃなくて砲兵科の運搬専属の」


「ああ、軍属なら基本民間人だから、時間は取れるな」


 軍曹がフォローに入る、レオンが続けた。


「この車両の特許申請も、軍部からなら早いし、兵器工厰に直接発注できるから、後々楽だよ」


 民間の工厰~軍審査~採用~発注数の算出~予算調整~決定~工厰発注までの流れで、

 競合他社との競いあいに負ければ、当然採用までたどり着けない。


 軍内部からの特許申請なので、製品化しても競合相手がいないのだ、

 上層部に根回しをしておけば、兵器工厰に直接発注できるとは、こうした事だった。


 アルは「それなら悪くも無いな」などと言っていた。

 どうやら感触は悪くないようだ。

今日からまた、朝方投稿になります。書き貯めたらまた、放出する予定です。

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