↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/83

斬るのは路、人ではない

オードランの第一撃で、僕は一つのことを理解した。


彼は僕より強い。


少し強い、ではない。


アランを横に構えても、黒剣は護手を押し、剣背が胸へ当たる。体が十数歩滑り、背が許可柱にぶつかり、ガンドが横から支えてようやく止まった。


「肋骨は」とフィアが聞く。


「まだあるはずだ」


「戦えるか」


「戦えない」


オードランは追わなかった。


黒日の核心の前に立ち、剣先を下げ、話を終えるのを待っているようだった。


「都市領域内での記録は驚くべきものだ」と彼は言った。「噂は、個人の部分を誇張していたらしい」


「宣伝部門も飯を食わねばならない」


再び立つ。


虎口は裂け、右腕が痺れている。


アランだけが、目に痛いほど明るい。


「吾に任せろ」とそれは言った。


「脚がない」


「持剣人を替えればいい」


ガンドが一歩出る。


オードランが剣を上げた。


一つの動作だけで、彼は止まった。


恐れではない。


黒剣のまわりに、数百条の命令道路が浮かぶ。進む、退く、受け、撃つ。持剣者の取りうる方向を、先に封じている。生涯をかけて秩序を剣術へ練り込んだ人間だ。


「五十七年前、生まれた行省で九年戦った」オードランは言った。「通貨が七種、地方法が十二、領主が三十一人、それぞれが路を封じた。糧車は関所で腐り、兵士は隣県へ行けば盗賊になった。母は病院から三里のところで死んだ。二都市が互いの通行証を認めなかったからだ」


「だから大陸の誰も拒めない通行証を作った」


「少なくとも三里先で止められる者は、もう出さない」


「他所へ行く選択も、もうできない」


「選択か」彼が後ろの炉灰管を見る。「飢えた者に選択はない。弱い都市に選択はない。地方の習いで縛られた異族にも選択はない。法を統一し、通貨を統一し、道路を統一して、はじめて誰もが同じ秩序を得られる」


「同じ部屋は、家ではない」


「家とは、管理に失敗したあと、自分を慰める言葉だ」


再び剣を出す。


今度の標的はフィアだった。


黒い光が向きを変えるのが見えただけだ。アランが自分で僕の手を引き、剣身の羽民紋が高所の視点を捉え、牛角の槌印が衝撃を受け、樹霊の活木膠が剣脊を曲げても折らせない。


十二城が、この一撃を止めた。


僕は止められなかった。


手首が外れたような痛みで、膝が地面へ落ちる。


「言ったはずだ、替えろ!」アランが叫ぶ。


セインが柄を受けた。


剣術は僕より厳密だ。三合のあと、それでもオードランに挑ね飛ばされる。ガンドが剣を受け、力で正面から押す。オードランが身をかわし、彼を黒日へぶつける。フィアが魔力のない風帆を二枚開き、核心の上昇気流で引き戻した。


一人では勝てない。


交代を始めた。


僕は路を見る。セインは規則を判断する。ガンドは重撃を受ける。フィアは立ち位置を変える。インクは許可柱の底の固定栓を外す。アランは各人の手で、違う再鍛の技術を使う。


オードランは、なお優勢だった。


黒剣がガンドの肩甲を裂き、セインの左脚を傷つけ、フィアの風帆まで二つに斬った。


僕たちは、彼に触れていない。


「無能を協働と呼ぶのか」オードランが言う。


「宿でもそうだ」息を切らしながら答える。「一人では料理も、屋根直しも、シーツ洗いも、夜番もできない」


「だから管理者が要る」


「勤務表が要る」


インクが、ようやく最初の固定栓を抜いた。


許可柱が半寸傾く。


黒日の内部に、極細い金線が見えた。


アランが急に静かになる。


僕も見えた。


核心へ通ずる路ではない。


核心がすべての都市へ強いた路だ。無数の地方道路が同じ方向へ押し潰され、最終的にオードランの足元の帝都印章へ集まる。


印章がある限り、黒日には唯一の主人がいる。


「アラン」


「見えている」


「斬れるか」


「斬れる。だが彼が遮る」


オードランにも、聞こえたらしい。


黒剣が初めて許可紋をすべて点け、力はこれまでのどの一撃より重い。核心のまわりの壁、扉、風、炉灰が、すべて僕たちへ押せと命じられる。


出口が後ろで閉じる。


金色の道路が闇に呑まれる。


アランを握り、左へ踏む。


オードランが左路を先に封じた。


セインが右から飛びかかり、黒剣が横に払い、彼を盾ごと壁へ叩き込む。ガンドが許可柱を抱え、全身の重さでさらに傾ける。フィアは術を使わず、残った半枚の風帆を開き、核心の熱流を僕の足元へ送った。


風を借りて上がる。


オードランの剣のほうが速い。


黒刃が外套を貫き、肋の脇を長く裂く。バランスを失い、アランが手から飛んだ。


落ちなかった。


再鍛した剣鍔の人狼の夜路紋が点き、羽民の校正線が核心を狙い、反響煉瓦の粉が澄んだ一声を出す。アランは自分で、十二城が共に示した方向へ一間ほど飛んだ。


ガンドが一握りでそれを掴む。


剣を振り、オードランへ斬る。


黒剣が防御へ戻る。


アランは最後の一瞬で方向を変えた。


剣鋒がオードランの肩を掠め、肉には触れず、背後の帝都印章へ落ちる。


金光が爆ぜた。


帝都印章の一角が裂ける。


黒日は激しく震えた。崩れはしなかった。


オードランが返しでガンドの胸を撃つ。彼は飛ばされ、アランが再び落ちた。


「俺を殺す機会はあった」オードランが、金光で切られた肩の生地を見る。


アランを拾う。


「斬りに来たのは路だ」


「俺を殺さねば、黒日は動き続ける」


「殺しても、次の誰かがこの位置に座る」


「それがお前たちの軟弱だ」


「修繕の経験だ。漏りを管から直さず当直を替えても、意味がない」


オードランの顔に、初めて怒りの色が出た。


両手で剣を握り、黒日が道路の所有権をすべて剣身へ押し込む。


この一撃は、受けられない。


アランも受けられない。


二人とも、わかっている。


「天野陸」フィアが後ろから呼ぶ。


振り返らない。


彼女が風向紙を一枚、背中へ貼った。


「今のお前は風路の総責任者ではない」と僕は言った。


「あなたも総管理人ではない」


「正式に辞めていない」


「先に慣れろ」


核心の上に風の音がする。


フィアの魔力ではない。


遠く多くの場所から来る気流が、自ら点いた分火を一つずつ伝い、ここを探している。


最初の一筋が、封じられた核心へ吹き込む。


オードランが顔を上げた。


漆黒の壁面に、ごく小さな火が一つ点く。


次いで二つ目。


三つ目。


それらは僕の命令を聞かない。


どこから来たかさえ、わからない。


だが大陸の各地で、人が自分で扉を開けると決めている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。