十二都市の部屋表
最後通牒の三日は、ベッドを運ぶのに使った。
帝国軍は三千人、装甲魔導車二十四台、移動砲台六基。先遣軍主砲「晨鐘」は二十里先から普通の城壁を貫ける。
十二都市共同防衛軍は合わせて一万を超える。
だが一万という数字に意味はない。石梯堡は鉱坑を守らねばならず、断橋鎮は水閘を守らねばならず、月泉城の医師は全員が剣を取れない。三日以内に都市間で動かせる兵力は二千七百だけだ。しかも未修復の炉門五座に隔てられている。
セインは全員を晴風へ集める命令を出さなかった。
「帝国の目標は道路だ」と、彼は地図に十二の赤点を引いた。「どの都市も主攻になり得る。各都市は自衛権と撤退決定を残す。連合軍はいちばん薄い位置だけを埋める」
月泉城代表が聞いた。「晴風が死守を命じたなら」
「晴風に命令権はない」
セインは共同防衛条項を四頁目まで捲った。
「都市議会が、どこまで守るかを決める。私は撤退にも道があるようにする」
旧風笛亭は総収容所になった。
僕とルミラは全部屋を戦時用途へ変えた。一階は軽傷、二階は老人と子供連れの家庭、三階は輸送員。貴賓室は大ベッドを外し、狭いベッドを六台入れた。ヴィザー使節はなお合法な宿泊契約を持っている。僕は九号室へ移室を知らせに行った。
「総管理人は私を拘留するつもりか」
「物置へ替えるつもりだ。元の部屋は医務室に近い」
「拒否できるか」
「できる。なら退室だ」
彼は窓の外に集まる帝国軍旗を一目見た。
「物置に窓はあるか」
「半分ある」
ヴィザーは移った。
間者も登録係を続けるよう手配された。いまでは十二都市の部屋型を現地人より速く書く。セインは守衛二人を付け、ついでに名簿を照合させた。
戦争の第一項の資源は矢ではない。
ベッドだ。
十二都市宿屋網は合わせて七千四百台のベッドを空け、学校が床敷きを一万二千敷き、公共浴室を洗傷所に変えた。ルミラは各都市へ、ベッドごとに収容人数、用水量、いちばん近い厨房を記せと求めた。「多く収容できる」だけでは報告禁止だ。
糧食は十四日分で準備した。
月泉城は生産を戻したばかりの耐蝕瓶をすべて戦傷薬瓶へ回し、普通瓶は一時停止した。ガラス工は新産業を祝う暇もなく、戦争への供給を始めた。
ガルドが魔導車を点検する。
本線にはまだ許可印が二段、解除されていない。再び鎖されない賭けはしない。車を東西二組に分け、各自安全区で走らせる。客車の床に担架槽を足し、貨車は素早く卸せる標準箱に分解した。
「装甲は」と誰かが聞いた。
「金もない。時間もない」とガルド。「速い、丈夫、安い。二つ選べ。俺たちは速さと直せるほうを選ぶ」
反響レンガの通信鎖が線路沿いに敷かれた。
一塊が記録できるのは一分だけだ。そこでゴブリン信号隊が固定書式を決めた。都市、時刻、敵情、損失、需要。英雄の一言を一句多く言えば、次の駅の負傷者数が落ちるかもしれない。
ギグが自ら見本を示した。
「晴風、第三刻、騎兵二百を発見、北西前進、損失なし、風路偵察を要す」
言い終えて、僕を見た。
「これじゃ、ちっとも胸を打たない」
「生きて戻ってから延長版をやれ」
最後の夜、十二都市が順に公開説明を開いた。
宣誓ではない。
都市議会がリスク、避難路、糧食点、降伏条件をすべて貼り出した。月泉城は外壁を守らず、戦線を温泉溝まで縮める。石梯堡は奪われる可能性のある昇降機を二基封じる。松針城は住民避難前の森林点火を明確に禁じた。
去る人間もいる。
三千人あまりの住民が、まだ使える炉門と土路で北境へ退いた。帰巣炉は暗くならない。去れること自体が、牢ではない証拠だ。
フィアが旧風笛亭の屋根に総風図を架けた。
十二の風標が旅灯を通し、リアルタイムの気流を送る。彼女は三日、まとまった睡眠を取っていない。卓上の酸果核が小さな塔になっている。
「帝国主砲は風冷よ」と、彼女は晨鐘砲台を指した。「発射のたびに熱を高空へ送る必要がある。風路を変えれば装填は延びる。だが砲腔を爆発させられない」
「なぜ最後の一句を強調する」
「ガルドが四回聞いたから」
僕は予備の外套を彼女の肩へ掛けた。
「未来計画にも、三日連続で寝ない予定を入れたのか」
彼女は外套を押さえた。
「四日目に私を寝かしに引っ張る人間を、一人入れてある」
「予算、通過」
夜明け、帝国の期限が来た。
国境に号角はない。
先に灯ったのは、まだ外していないすべての許可印だ。黒線が再び軌を鎖そうとし、総ギルド解除隊が同時に隔魔挟板を押した。三線が消え、二線はなお鎖された。
続いて、晨鐘主砲が発砲した。
第一発は晴風の城壁を打っていない。
荒原を越え、断橋鎮の総水閘を撃った。
黒い光柱が閘塔の半分を河へ吹き飛ばした。洪水が下城へ流れ込み、反響レンガ三塊がその場で黙った。
三十息後、石梯堡北井が装甲車の奇襲を受けた。
さらに二十息、羽民高地に帝国空艇が現れた。
彼らは一座の主都市を選ばなかった。
十二都市が、同時に戦闘へ入った。
僕は炉火を押さえ、感知の中で十二の灯が十二の黒い手に同時に掴まれた。
セインの命令が反響レンガを通し、各線へ広がる。
「各都市の事前計画を執行しろ」
「晴風の救援を待つな」




