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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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道路は印章のものではない

帝国先遣軍は、先に城へは入らなかった。


境界沿いに、尺で切ったように整った野営を張り、「僑民保護所」を立て、帝国証を持つ人間へ糧、薬、復路切符を無料で配る。


ヴィザー使節は、なお旧風笛亭九号室に泊まっている。


毎日七時に降りて朝食を食い、部屋代を払い、廊下で帝国軍歌を歌うレンガを一度苦情にする。礼儀正しくて、国境の三千副の鎧と同一人物だと思いにくい。


「帝国市民は保護を受ける権利がある」と彼は言った。


「保護に主砲は要らない」


「荒原には魔物がいる」


「主砲の口は駅を向いている」


彼は茶を一口飲んだ。


「方向は調整できる」


僕たちは帝国僑民を追放していない。十二都市の登録は千六百二十三人。多くは商人、技術者、家族だ。セインは任意退去を開き、残りたい人間の就労も認めた。軍事人員だけ身分申告を求める。


三百人あまりが去ることを選んだ。


残る人間のほうが多い。


月泉城のある帝国技術者が登録表に書いた。「娘は明日も学校へ行く」


帰巣炉が認めるのは、この言葉だ。パスポートではない。


帝国軍が入った第五夜、すべての許可印が同時に起動した。


僕はアランの悲鳴で目が覚めた。


言葉ではない。剣身が壁から落ちたときの裂ける音だ。


窓の外の魔導軌道が黒く灯る。黒線が倉庫の戸軸、橋梁の継ぎ目、炉門外環から這い出し、無数の細い鎖のように東方へ張り詰めた。


旧風笛亭の帰巣炉は、まだ燃えている。


炉門が開かない。


「断橋鎮が接続を求める」と当夜員が叫んだ。


「晴風は同意する」と僕は手を炉環へ当てた。


もう一端も明らかに同意している。金色の門隙は半寸だけ開き、すぐ黒歯に噛み合わされた。許可印が壁に帝国通用文を一行、浮かべた。


|道路総署の戦時許可を得ていない。|


同時に、魔導車は全線停車した。


夜車二列が城外に鎖され、薬品車一列が巨人谷で止まる。吊橋は自動で上がり、東倉庫の扉が中の当夜工を閉じ込めた。帝国は僕たちが買った安い軌件で、十二都市の動脈すべてに同時に鍵をかけた。


攻城ではない。


路が誰のものか、と宣言している。


総ギルドは事前計画どおり動いた。職人が隔魔挟板を外し、冒険隊が予備の土路を歩き、羽民は発着場に頼らない高空信号へ切り替える。これまでの洗い出しは無駄ではなかった。だが印は見つかった数の倍ある。


断橋鎮の吊橋の下で、夜航の客船が洪水に押され、閉じた橋門へ向かっていた。


僕が旅灯で着いたとき、河妖はすでに乗客を救命浮き袋へ上げさせていた。立って僕を待つ人間はいない。


フィアが橋頂で逆風を掴む。


「橋錠が現地制御を受けない! あと九十息で衝突する!」


ガルドの徒弟が歯車を外している。


「機械閘は開く。契約閘がまた押し戻す!」


僕はアランを抜いた。


黒線が視界の中で、橋梁から東方へ伸びる広い道になった。それは本物だ。鋼材は帝国が作り、契約は製造者の保守を許していた。許可印はその短い同意を借り、「保守」を永久所有へ広げた。


アランが言った。「切れる」


「橋はどうなる」


「所有権が切れ、機械構造は残る。契約層を間違えれば、橋全体が帝国製品として斬られることもある」


船首にもう乗客の顔が見える。


僕は剣を振らなかった。


先に職人の構造感覚を借り、本当に荷重を受ける蝶番を探す。次にフィアの風感覚で、契約魔力がどの縫を流れるか見る。最後に河妖舵手の水路判断を借り、船に要る高さを確認する。


三つの技能が順に重なった。


黒い道路の中に、いちばん細い線が浮かんだ。


橋のものではない。橋を建てた人間のものでもない。毎日渡る住民のものでもない。


印章が主張する権利だけのものだ。


「右から三番目の歯を斬れ」と僕は言った。


アランが古代の罵りを一句吐いた。


剣先が落ちる。


爆発はない。


遠いところで、紙が裂ける音がした。


黒線が橋から弾けるように外れ、東方へ退いた。ガルドの徒弟が機械閘を叩き下ろし、吊橋は最後の二十息で上がった。客船は橋底を擦り、マストが半尺削れた。全員が無事に通った。


アランの剣脊に、ひびが一道増えた。


「痛いか」


「伝説の聖剣は——痛い痛い痛い、そこを触るな!」


僕は鞘へ収めた。


最初の強制路権が斬られたあと、他都市は方法を見た。だが見様見真似で斬ってはいけない。許可印が噛む構造は一道ごとに違う。総ギルドは解除隊を十二組にした。職人が実体を判断し、術師が術式を見分け、現地管理者が譲っていない権限を確認し、最後にアランか複製した断印道具で切る。


一晩中、働いた。


東倉庫が先に開き、断橋鎮の吊橋が戻り、予備軌道三本が再び通った。炉門がいちばん難しい。黒印は古代炉環へ絡み込んでいた。アランが連続で三座を斬ったあと、古いひびから金色の砕け光が滲んだ。


僕は停止を命じた。


「まだ八座ある」と剣が言った。


「先に土路を使え」


「敵軍のほうが土路より速い」


「剣が折れれば、どの道もない」


夜明け前、十二都市のうち五座はなお完全に隔てられている。だが帝国が欲しかった一撃麻痺は成功しなかった。羽民、龍運、旧王道が臨時輸送網を組み、人は遅く、荷は少ない。少なくとも動いている。


セインが国境報告を送ってきた。


帝国軍が、許可印で鎖された拠点の接収を始めた。


同時に、龍谷から薬品、子供、僑民の復路者を運ぶ龍運隊商が発着場案内を失い、黒印に誘導されて帝国支配区へ不時着した。


青年龍九頭、乗員四十七。


全員が捕まった。


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