離城を禁じられた客
翌朝、大使館の門外に王都衛兵が四十名増えていた。
隊長は丁寧だった。
「摂政院は天野陸管理人に、聖物争いが明らかになるまで王都へ留まるよう求めます」
「いつまで」
「明らかになるまで」
「チェックアウトしたあと、どこに泊まる」
隊長は最初の質問がそれだとは思っていなかった。
「大使館が引き続き接待します」
昨夜また壁皮が二塊落ちた窓台を見上げる。
「いい。部屋代は摂政院が払え」
「宿泊の協議ではない。離城制限だ」
「ならなおさら泊まり込みだ」
衛兵は前門、後門、馬小屋を封じた。
セインが公文を調べ終え、摂政院印だけで王国議会の再核章がないと指摘した。
「手続きに問題はある。だが王都で申し立てるには十日要る」
「十日あれば足りるのか」
「違う。残されることに慣れさせたいのだ」
フィアが三階の破窓に伏し、街上の巡回路を見ている。
「飛び出せる」
「それから」
「一周して、煙突から戻る」
「飛び出して何が解けると聞いている」
彼女は考えた。
「封じ方が甘いと証明できる」
アランが賛同の唸りを出した。
僕は一人と一剣を窓際から引きずり下げた。
王都を出るのがいちばん急なことではない。
第二炉は城内にある。
帰途感はおおよその方角しかくれない。厚い壁の向こうで誰かが杯を叩くのを聞くようなものだ。南区を指すが、そこに八千人が住み、巷は旧風笛亭の部屋番号より乱れている。
正門は通れない。衛兵を通らない道が要る。
アランがすぐ元気になった。
「ついに専門家の番だ」
大使館の厨房へ連れていく。
薪部屋へ潜らせる。
最後に漬物樽の前で止まった。
「道は下だ」
賄い女が杓子を抱えて扉を塞ぐ。
「触るな。この樽は十七年漬けている」
「十七年洗っていないの」フィアが一歩下がる。
「十七年の古漬けよ!」
銀貨二枚で漬物を半分買ったあと、樽底に銅環が見えた。
床下は王都の旧排水道だった。
セインが灯を掲げて先頭を歩く。
「大使館は王国資産だ。床を勝手に壊すのは、原則として——」
黒い水が一滴、襟元へ落ちた。
彼は少し止まった。
「例外条項はあとで探す」
排水道は城壁より古い。
多くの分岐は新しい家の基礎で塞がれている。アランはだが石の隙間の後ろに残る金線が見える。崩れたアーチ門を抜け、車輪の模様で埋まった壁の前で止まった。
「下水ではない」とそれ。
僕は壁の汚泥を拭く。
下から路碑が出た。
|南遷王道、第三避雨廊。|
古代の人は炉門を、すべてを空から越える魔法だとはしていなかった。
先に本物の道を直した。
のちに都市が路面を家で覆い、避雨廊を排水溝へつなぎ、塞がれた入り口から方向を読み取れるのはアランだけになった。
「こっちだ」とそれ。
壁の向こうで鍋とへらの衝突音がたくさんする。
誰かが叫ぶ。
「最後の二十椀! 受け取っていない者は木札を持って、一刻あとにもう一度!」
第二炉は反対側にあった。
出口を探そうとしたとき、上で急な風鈴が鳴った。
フィアの顔が変わる。
「晴風からの便りだ」
帽子の縁の内側から、羽民郵送用の風片を一枚抜く。薄い片が指のあいだで開き、急いで押された字が出る。
|王都の金縁公函が着いた。天野陸は帰巣炉の引き渡しに同意したとある。議会は直ちに炉庁を空け、教団車隊を待て。|
落款はルミラ。
後ろに一句だけある。
|原本の印章に誤りなし。返事を。|
セインが受け取って見る。
「摂政院は君の通行印の型を持っている。公函は形式上、本物だ」
僕は湿った冷たい石壁に凭れた。
晴風にあの僕はいない。
教団は、すでに承諾したと言える。王都衛兵を連れた車隊を街へ入れられる。どんな抵抗も正式公文への違反に書ける。
フィアはもう返信を書き始めていた。
「ルミラに、偽物だと伝える」
僕は風片を押さえる。
「待て」
「まだ待つ? 車隊はせいぜい二日で着く」
「本物の印章のついた偽公文が、僕の一言を待たねば見破れないなら、次はどうする」
筆先が止まった。
僕はこれまで、事が起きれば自分が決めた方が速いと思っていた。
だから鍵は僕の身にあり、最後の帳は僕の卓にあり、誰もが不確かなことがあれば先に僕を探す。
それは信頼ではない。
旅館の予備の扉を、王都の下水に詰まるかもしれない一人にしか残さないことだ。
「見たことを全部書いて送れ」と僕は言った。「制限令、文献、第二炉。どう決めるかは教えるな」
「本当に炉火を渡したら」
「それも議会の決定だ」
その言葉は、剣を抜くより少し難しかった。
アランは笑わなかった。
フィアは数秒見て、再び筆を下ろした。
信を風片に渡す。
薄い片は排水道を北へ飛び、一度壁に当たり、彼女が正確に旧王道の方角へ引き戻した。
「今のは試し風」
「聞いていない」
避雨廊の端から地上へ這い出た。
出口は南区の公衆浴場のボイラー室だった。
湯を沸かす叔父さんが、泥だらけの四人を見て、まず手拭いを渡し、それから聞いた。
「お前たちも余燼食堂へ飯を取りに来たのか」
街の向かい、塗りの落ちた木札が低い軒下に掛かっている。
入り口に百人以上が並ぶ。
ボイラー、蒸気、汁の匂い、帰途感がそこから一緒に溢れてくる。
第二炉を見つけた。
ちょうどそのとき、北から風片の反響が届いた。
ルミラは八文字だけ返した。
|了解。晴風議会が自ら表決する。|




