宮殿に泊まらない巡訪団
北境の巡訪団は六人、剣一本、幼竜一匹、荷物二十三個。
うち十五個がフィアのものだ。
「観測機材は荷物に数えない」
「酸果の壺三個は」
「緊急補給」
ベリーが車頂から頭を出す。
「重さを減らす手伝いはできる」
「手伝うから、壺に錠を掛けた」
最初の宿は狼人の商路だ。
カロは石堡の最上階の客室を用意していた。断ったあと、尻尾が明らかに苛立って二度、床を掃いた。
「普通の家に浴室はない。衛兵もいない」
「見に来たのは、ないものだ」
その夜、路傍の皮具店に泊まる。
店主ノヤはカロの妹だった。猟はせず、長槍も振らない。皮箱に色の派手すぎる裏地を縫うのがいちばん好きだ。
「晴風から武器を買うのは反対」紫の花の皮箱を僕のベッド下へ押し込む。「護路隊が新しい槍を得ても、商隊はあの壊れた橋を通る。槍三百本は橋にならない」
カロが門口で刃を研ぐ。
「槍がなければ、橋を直す者は河まで着けない」
「毎回、先に刀を買う」
「お前が毎回、先に布を選ぶからだ」
その夜、僕は棚の横で寝た。貨物車が通るたびに、床が揺れる。未明に扉を見るとき、ノヤが内側に銅鈴を三連、掛けているのを見つけた。
最近、一人で夜を守れない、と彼女は言った。
二番目の宿は樹霊の根林だ。
林廷は自分で花が咲く樹屋を用意したが、アオカエデは林縁の低い木屋へ僕たちを連れていった。家主のエルカンは蜂箱を営み、封山を固く支持する。孫のコナラはドワーフの鉱隊で測水をしている。
食事のとき、二人は鉱塩一杯で争い始めた。
「鉱がなければ、塩はどこから来る」コナラが聞く。
「根林がなければ、塩で切り株を漬けるのか」
アオカエデが僕の盃へ、痺れるほど苦い樹液を足す。
「林廷も、すべての鉱を止めたいわけではない。東側の新鉱が地下水脈に当たった。ドーンは井図を公開しない」
「あれは山城の資産だ」コナラが言う。「公開したあと、盗まれた鉱脈は誰が弁償する」
同じ食卓で、鉱を止めることにはすでに三つの意味があった。
三番目の宿は石背山城だ。
鉱務官ドーンが銅門の広間に赤絨を敷いた。ガルドは赤絨を一目見て、職人宿舎へまっすぐ曲がる。
「こっちのベッドは硬い。湯も制限だ」と彼は言う。「山城をよく代表する」
「仕返しに見える」
「嘘だ。若い頃は毎日、冷水で洗っていた」
宿舎では、ガルドの姪ドウリンが恋愛悲劇を稽古している。仮ひげを着け、鉄舗の跡を継ぐのを拒む王子を演じている。
ドーンが門口に立ち、顔色は鉱石より硬い。
「古い鉱庁を劇場にはできない。拡鉱すれば少なくとも四百戸が食える」
ドウリンが仮の王冠を外す。
「東鉱の爆破のあと、宿舎は一日六回揺れる。すでに百七十戸が引っ越したがっている。掘っているのは鉱夫ではなく、空き部屋だ」
ガルドは第一幕を真面目に見終え、最後に一句だけ評した。
「王座の荷重が足りない」
四番目の宿、竜谷。
ブルームの洞窟は宿屋三軒を入れられるが、人間が使える盃は二個しかない。
僕は幼竜の世話係の石屋へ泊まると譲らなかった。結果、扉が小さすぎてベリーが入れず、窓の外で半夜、抗議した。
竜谷の長老ソウヨクは白脊山の空域独占を求める。
若い世話係ランゼルは賛成しない。
「幼竜には安全な空域が要る。だが独占は、羽民の郵隊が雷雲を迂回することになる。先月迷った幼竜二匹は、羽民の信標を見失った」
ソウヨクが彼女を見る。
「竜は誰かの後をつける必要はない」
「迷ったときは要る」
ベリーが窓の外で頷き、頭が窓枠の半分を落とす。
破損登録に、また一行足す。
五番目の宿は河民の水郷だ。
船主デラは客室を細い船の上に用意した。ジェリーは甲板の半分まで嬉しそうに広がり、セインは一晩中、公文書箱を抱えて浸水を防いだ。
水利師ソウヨウは樹霊と融雪河を共同管理しろと支持し、波止場の商人はさらに高い堰を築きたがる。
「水権は体裁がいい」商人が算盤を叩く。「春の水が留まらなければ、夏に船渠へ水を出すのは誰だ」
デラが死んだ魚を一匹、卓へ投げる。
「堰をもう一尺高くすれば、魚は上がれない。そのときは算盤でスープを煮ろ」
古い閘を初めて開けたとき、泥が側渠を塞ぎ、水が河辺の洗濯場へ流れ込んだ。半日かけてシーツを掬い戻す。
ジェリーが泥砂を飲み、去年落とした銅貨を九枚吐いた。
すばやく銅貨を体の下へ押さえる。
「公共の浚渫所得は記帳すべきだ」セインが言う。
「ぽ」
「反対だと言っている」と僕は言った。
六番目の宿は羽民の高地だ。
レイシュウが崖の巣屋へ僕たちを連れて上がる。普通の羽民の家には高い窓があるが、ベッドはなく、梁の下に軟らかい網が下がっているだけだ。
夜中に寝返りを打ち、網から二度落ちた。
フィアは一度も落ちない。小さな風の輪で自分を支え、翌日、家主に追加の魔力照明として銅貨二枚を取られた。
リシャは鉱塔を壊せと支持し、姉のレイシュウは反対する。
「手紙を送るには追い風が要る」リシャが言う。
「高地救援を持つ私には、暴雪の中で見えるものが要る」
母親が横で堅い麦餅を焼き、論争にはまったく入らず、晴風が高地の酸っぱい梅を買い取れるかだけ聞いてきた。
「今年、なりすぎた。政治は飯にならない」
七番目の宿は牛角牧場だ。
ガンドの家には広い扉が三枚と、異常に狭い食卓が一枚ある。娘のザクロは牧をせず、裏庭で木の鳥を彫り、羽民の高地で風鈴を学びたがっている。
「冬の牧道は十二丈残せ」ガンドが言う。
「八丈で牛の群れは通れる」ザクロが反論する。「残りの四丈に固定の市場を直せば、毎年羊を山城へ追って塩と換えなくて済む」
「固定すれば、草地が壊れる」
「だから全部を固定しない」
七日でベッドを七床替え、朝食を七種類食べ、同じ公函の裏に少なくとも二十の意見を聞いた。
八日目、白脊山の南口へ着く。
赤盾公国の測量旗が牧道の両側に立ち、旗竿のあいだに赤い綱が張ってある。赤甲の測量兵が数人、石へ界標を鑿っている。
セインが前へ出て、王国巡察の徽章を出す。
「ここはまだ係争区域だ。各方の確認なしに、永久界標を置いてはならない」
隊長が七つの印章を押した許可書を広げる。
「七族は、こちらが商道を守ることに同意している」
カロは一目見て牙を出す。
「狼路議会の印ではない」
ドーンも顔を沈める。
七つの印章は、どれも本物に見える。
同じ紙に押され、互いの間隔がきれいに揃っている。
宿屋の団体宿泊表を見たことがある。
本当に七家が別々に署した文書は、墨の乾く向きまで揃わない。
アランが鞘の中で低く言う。
「天野陸、山の向こうに新しく開いた軍路がある」
赤い旗を越えて北坂を見る。
積雪のあいだに、平らに圧された道が赤盾の国境へ向かっている。
道に商車はない。
轍が同じで、間隔が揃った大型の軍車だけがある。




