臨時管理人の「臨時」はいつまでか
王都調査団が旧風笛に泊まった初夜、要求は三つだった。
部屋が静かであること。
湯が時間どおりであること。
証人が互いに隔離されていること。
第一項がいちばん難しい。
調査官は二号に泊まり、隣はゴブリン舞台に真正面だ。ギグは一日公演を止め、ガルドは雲毛布を二層、壁へ釘で打った。
夜半、風が院壁を通る。
点検漏れのいびきレンガが一つ、鳴り始めた。
調査官は翌日、隈を乗せて開廷した。
公開審理は市場に置かれた。
バルド男爵は紫の礼服を着、髭はきちんと整えられている。まず被害住民へ遺憾を述べ、次いで駆獣の術師は個人の違法だと強調した。
「黒茨領は、誰にも晴風を攻撃せよと命じていない」
セインが駆獣碑の出庫記録を提出する。
道路署長は印が盗まれたと言う。
王都の財政官が支払いの写しを出す。
金は「北部道路維持費」から術師三人へ移っている。
署長は用途を部下が改竄したと言う。
コルが公開で証言する。
命令を受けた場所、日付、参加者を説明する。男爵の弁護士はすぐ、コルは罪を軽くするために嘘をついている可能性があると指摘した。
単独で見れば、どの一項にも説明がつく。
セインが最後に反響レンガを出す。
封じ番号、立会の署名、晶紋の状態をすべて皆の前で照合する。
あの一分の声が、再び鳴る。
道路署長の命令。
男爵の私設秘書の注意。
「男爵が欲しいのは接収だ。廃墟ではない」
男爵の顔色が、やっと変わった。
それでも認めない。
「秘書が独断で推測したのかもしれない」
調査官はさらに、宿屋の土地購入から七日目、黒茨領内部が提出した代管申請を示す。
申請の添付で、帰巣炉は「領地が制御できる古代道路施設」と評価されていた。
日付は、晴風が五十人を超えるより早い。
違法な集住を臨時に見つけたのではない。
接収条件が揃うのを、ずっと待っていたのだ。
証拠の鎖が、やっと閉じた。
審理は丸一日続いた。
誰かが一言で男爵を黙らせたわけではない。
印、支払い、証言、反響レンガ、あらかじめ用意された代管文書が、逃げ道を一つずつ塞いだ。
夕方、調査団が処理決定を読み上げる。
バルド男爵は魔物の荒野の管理権を取り消された。
違法な税務は王都の再審査へ移す。
事件に関わる財産は、晴風の住民、止められた商隊、公共施設の損失の賠償に充てる。
その場で処刑されることはない。突然の懺悔もない。
去る前、僕だけを見た。
「臨時に集まった者たちでは、鎮は支えられない」
「先に賠償を払え」と僕は言った。
男爵は車に乗って去った。
罰金と賠償の総額は金貨二百枚。
鎮庫へ全部入る棚ぼたではない。
五十金貨は王国の罰金。
九十金貨は一覧どおり、被害世帯、負傷者、商隊へ賠償する。
六十金貨は公共修復金として六期に分けて支払う。
第一期の入金は二十金貨。
交易の余り八枚を足し、緊急修繕の五枚を引き、晴風の鎮庫は金貨二十三枚になった。
ガルドはその日、金貨二十八枚の建設予算を提出した。
「認めん」と僕は言った。
「五枚足りないだけだ」
「鎮庫を一度に空にはできない」
「なら便所の頂部の見張り塔を削る」
セインが傍らから顔を上げる。
「便所に見張り塔は要らない」
「今要らないことと、将来要らないことは違う」
審理が終わっても、自治は終わっていない。
王都の検収官が三日かけて項目ごとに検査する。
法定の常住住民、五百八。
一人ひとりに登記、住所、任意の滞在確認がある。短期の商人を数字へ混ぜていない。
三ギルドが規約と独立帳簿を提出した。
農業ギルドには田、穀倉、雲毛の協同がある。
製造ギルドにはレンガ窯、鉱料契約、職人名簿がある。
商業ギルドには宿屋、市場、劇団、運送隊がある。
検収官は成員を数名無作為に尋ね、名簿へサインしただけではないことを確かめた。
水源検査は合格。
道路は二箇所、期限付きで補修が要る。
医務室は合格。
最後に公共便所へ来る。
一箇所目の色窓が七色を屈折させる。
二箇所目は扉を開くと音楽が流れる。
三箇所目の壁には便桶英雄の叙事詩が描いてある。
検収官が入口に立つ。
「誰の設計だ」
ガルドが誇らしげに手を挙げる。
「なぜだ」
「公共建築にも尊厳が要る」
検収官は評価の言葉がなく、表に印を押した。
自衛の検収は防衛戦の記録、反響の指令、施設の破損状況で共同に証明される。セインは晴風自衛隊長に任じられた。僕個人へ忠誠を誓わず、臨時議会と王国の自治法にだけ責任を負う。
三日目の午後、最後の印が落ちる。
|晴風鎮。|
王国内の合法な自治鎮。
開拓、交易、内部予算、自衛の権利を持つ。
鎮長の登記も要る。
検収官が用紙を長机の中央へ押す。
全員が僕を見る。
「だめだ」と僕は言った。
ルミラが聞く。「なぜです」
「宿屋を開きたいだけだ」
ガルドが言う。「鎮でいちばん大きな宿屋はお前のだ」
ギグが言う。「市場も最初はお前の庭だった」
ガンドが言う。「獣群の道はお前が開いた」
「アランにも半分ある」
アランがすぐ表明する。「吾は天野陸の鎮長就任を支持する」
「裏切り者だ」
鎮長の称号は受けない。
最終的に用紙へ書かれたのはこうだ。
|晴風鎮臨時管理人兼旧風笛旅館店主、天野陸。|
「臨時はいつまでだ」と検収官。
「ふさわしい者が見つかるまで」
「どういう者がふさわしい」
「毎日三ギルドの予算争いを見、綿雲羊の乱飛、ゴブリン公演の超過、ドワーフの便所設計を処理する気がある者だ」
彼は同情して僕を見た。
「長く臨時かもしれない」
夜、鎮の中心でやっと祝典が開かれる。
五百八人の住民が帰巣炉を囲んで食事をする。宿屋の広間では座りきれず、卓は入口から市場まで並んだ。
忠誠の儀式はない。
跪く者もいない。
僕が告げたのは二件だけだ。
晴風は正式に自治鎮になった。
旧風笛旅館は七日後に再開業する。
「終わったか」とガルド。
「終わった」
「なら飯だ」
炉火が笑声の中で上がる。
もともとばらばらだった向きが、繋がった気がした。
牛角族の力、羽民の視界、河妖の水流、フィアの風を、僕のものにしたのではない。
彼らが一つのことを共に終えたいとき、向きとリズムを互いにはっきり知らせられる、それだけだ。
火光の中に、新しい名が浮かぶ。
|家園共鳴。|
フィアが隣に座る。
「臨時管理人、気分はどう」
「鎮庫は金貨二十三枚。ガルドは二十八枚使いたい」
「ほかには」
卓の果てを見る。
三ヶ月前、雨を避ける場所すらなかった者が、今は同じ屋根の下で——正確には、同じ屋根ではもう座りきれない——自分で植え、自分で作ったものを食べている。
「明日はまず宿屋のシーツを干す」
「明日は西風よ」彼女は言う。「手伝う」
「大風は禁止だ」
「わかってる」
帰巣炉が火をさらに明るくする。
家園共鳴が掌へ落ちたとき、最初の共同任務はすでに現れていた。
五百八人が同時に盃を上げる。
違う向きの動作に手を持っていかれ、汁を零しそうになった。
新しい能力も、練習が要るらしい。




