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まさかの邂逅


 リンドナー王国を縦断する形で北へ向かっていくヘルベルト達。

 王都を出発し帝都へと向かい、そこから帰ってくるとなると、実はスケジュールに余裕はほとんどない。


 何せ王都から北の国境へ出るだけで、通常半月ほど時間がかかる。

 帝都まで向かうことも考えれば、二ヶ月の間になんとかできるかは正直微妙なところだった。


 とりあえず移動の時間を削減するために、ヘルベルト達はあらゆる手段を取っていくことにした。


「ヘルベルト様、今回は遠路はるばるありがとうございます」

「助かる、ベルズ子爵。事前に言っていたように、歓待は不要だ。明日に響かないよう、俺達は身体を清めたらすぐに眠らせていただきたい」

「そ、そうですか。了解致しました、何かあれば遠慮なく申しつけください……」


 公爵家の嫡男であるヘルベルトは、爵位こそないものの将来には王国を支えるであろう大領主になる男だ。

 更に言えば彼は王国民のみならず大陸中において伝説とされているマリリンと同じ、あの時空魔法の使い手。

 かつての悪評など既に吹き飛んでおり、誰もが領地を挙げて歓待しようとするような存在と捉えられている。


 貴族社会で生きてきたヘルベルトとしては社交もやぶさかではないのだが、今回の帝国行は正直時間的な制約がかなりキツいギリギリのものになっている。


 帝国でどれだけ時間を取られるかわかったものではないため、少なくとも王国の中ではギリギリまで時間を稼いでおきたかったのだ。


 そのためヘルベルトはマキシムを経由して事前に断りを入れる形で、歓談やパーティーの席などの参加を最低限必要な物に減らしてもらうことにしていた。


 日が出ている時間はほぼ移動に費やし、ロデオやティナ達が同行しているので多少危険があろうともとにかくショートカットをして最短距離を突き進む。

 そして日が暮れたら近くにある領地で寝床だけ貸してもらい、日の出と同時に街を出る。


 今回ヘルベルトは供回りをケビンと二人のメイドの三人しか連れていない。

 彼らには多少無理をさせる形になるが、さほど人数が多くないこともあり、肉体的な疲労に関してはマーロンの光魔法で癒やして先へ進むことができた。


「よし、馬を入れ替えますぜ!」

「ああ、頼んだ!」


 そんな無理な旅路を行けば当然馬も酷使することになったが、ヘルベルト達はそこも強引に解決させてしまった。

 まず彼らが乗る馬車を最も馬力が出る六頭立てに固定し、更にすぐ後ろに人の乗っていない御者一人だけの馬車を用意する。


 そして六頭立ての馬車の馬を限界ギリギリまで走らせたら途中で馬を入れ替え、今度は疲れ気味の馬達の馬車にマーロンが乗り、光魔法でその疲れを回復させる。


 それを繰り返して馬達を本当の意味で馬車馬のように働かせ、完全に潰れてしまうために新しい馬に乗り換える。


 ヘルベルトがアクセラレートで馬車そのものを加速させたり、魔物の棲む領域を強引に切り開いて一直線に森を抜けたり、etcetc……常人であれば不可能なことを繰り返しながら、ヘルベルト達はとんでもない速度で移動を続けた。


(このペースで行けば……一週間以内に帝国に着くこともできるはずだ)


 ヘルベルトがこうまで無理をするのは、本来であれば明らかに二ヶ月では済まない帝国行を、夏休みのうちに終わらせる腹づもりだったからだ。


 今回は大国である帝国相手の交渉であり、更に言えばその内容も邪神の欠片という人類を挙げて解決しなければならないものだ。


 リンドナー王立魔法学院からはヘルベルト達はもし始業式に間に合わなかった場合でも、課外授業という形で一定の単位をもらえる約束をしてもらっている。


 だがヘルベルトは一刻も早く、学院に戻りたかった。

 一年の頃は学院を退学した方が……とも考えていた彼だが、今のヘルベルトにとって、学院での生活は以前よりずっと大切なものになっていたのだ。


「大丈夫さ、俺達ならできる。ちゃっちゃと終わらせて、学院に戻ろう」

「マーロン……そうだな」


 ヘルベルトはマーロンと話す時、以前より格好をつけなくなった。

 自然体でいることが多くなったおかげで、マーロンには内心を見透かされるようなことも増えてきている。


「ヘレネに会いたいもんな」

「ち、違っ……あいつは関係ないだろ!?」


 無論それはヘルベルトとて同じこと。

 マーロンが時折見せるホームシックな横顔の意味を、ヘルベルトはきちんと理解していた。 間違いなくこの腐れ縁は、今後も続いていくことになるだろう。


 更に系統外魔法を自重せずに使い続けること五日ほど。

 ヘルベルト達はとうとう最北の領地であるアラヒー辺境伯領へと辿り着いた。


 辺境伯とのパーティーを問題なく済ませ、次の日。

 彼らはようやく帝国の地へと足を踏み入れる。

 そこでヘルベルトを待ち受けていたのは……


「ヘルベルト様……会いたかったですっ!!」

「アリス……どうして君が、ここに?」

「そんなの、一刻も早く会いたかったからに、決まってますっ!」


 帝都ゴットバルトでヘルベルトの来訪を待っているはずの、アリス・ツゥ・ヴァリスヘイムだった――。


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