表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
311/311

最終回第311話

第311話です。

 ライブ帰りの電車はどこを見てもChatnoirの服を着たファンの人達で埋まっていた。スーツ姿の仕事帰りのサラリーマンはおそらくChatnoirという単語が頭から離れなくなってしまうだろう。

 どこもかしこもどの曲が良かった、あの演出が良かった、メンバーの誰がやっぱり可愛かった等々、各々感想を話している。


「やっぱり俺はベースのアスナが好きかなぁ。クール系だし可愛い」

「クールならメグを忘れたらダメだろ。あのミステリアスなクールビューティは外せないって」


 ふーん、君達はそう思うのかね。俺はカオリさん一択だけどな。

 俺の背後に立つ2人の会話に耳を澄ませながら1人そう思う。

 カオリさんは可愛いのだ。どうしようもないほどに。

 普段は元気ハツラツ、朝と夜はふにゃふにゃガール。けれどギターを持たせれば一流のアーティスト。そんなギャップが堪らなくいい。そして、そんなところにどうしようもなく惚れている。

 なんて、1ファンの戯れ言などはどうでもいいのだ。

 今日は帰って寝る。それだけの話だ。

 揺れる電車に身を任せながら自宅の最寄りまで向かうことにする。

 揺られて揺られて、家に着くと部屋の電気をつけた。同棲しているので大学時代の時と住んでいる場所は違う。具体的に何が違うのかと尋ねられれば、単純な部屋数と広さだろう。あとはかなり立地がいい。おかげで家賃も安いものではないが、その分幸せも貰えてるのでいいのだ。

 そんな同棲相手はまだ帰宅していない。メッセージにはもうすぐ帰ると5分程前に来ているので、あと30分もあれば帰宅するだろう。それまでにお風呂を空けなければ。

 ライブでかいた汗を流すためにサッとシャワーを浴びて清潔にしていく。

 全て終わればラフな格好でリビングのソファに座った。すると数分もしないうちに玄関から扉の開く音がした。裸足でぺたぺたと近付いて「おかえりなさい」と声をかける。


「ただいま〜。疲れた〜!」

「頑張ってたもんね。今日はゆっくり休んでくださいな」

「うん、そうする。あ、でもその前に……」


 帰ってきた彼女はそう言うと俺と一瞬だけ口付けする。


「ただいまのちゅー忘れてたよっ」


 にひっと笑いながら彼女、つまるところChatnoirのカオリさんは笑ってリビングの方に走っていった。

 不意打ちはいくら彼女でも良くないな、なんて思いながらも、それが嬉しかったりして、結局は単純な俺なのである。


「お風呂、湧いてるんでしっかり浸かってくださいね」


 ほんの少し頬が赤くなっているのを自覚しながら俺もリビングに戻った。ギターを部屋の隅に置いた彼女は「うん」と幼子のような返事をしてから「また後で」と言って脱衣所に向かうのだった。

 自由気ままでマイペースな彼女。

 時折置いていかれそうになるけど、そんな時は高校生時代の自分を思い出して必死に追いつこうとする。

 付き合えてこうやって同棲にまでステップを進められたのだ。今更追いつけないだなんて弱音を吐くつもりは無い。

 これまでも、これからも、俺は必ず彼女の隣に立ち続ける。

 そう決めたのだから。

 けれど、それを証明するためのこれを渡すのだけは、もう少し俺に勇気が出てからになるらしい。

 左手に持たれた小さな箱と、その中に光る小さなリング。この証そのものを俺は大事にギュッと握りしめてから、彼女に見つからないところにしまっておくのだ。


「いつか、いつの日か。できるだけ遠くの日にならないように頑張るので、待っててください」


 そんな言葉は誰もいないリビングに寂しくこだまする。



 この物語は、俺が先輩の人生計画に関わり、そして含まれるお話。もとい、俺が憧れたあの人の隣に立つ話だ。

 なんでもないただのエンディング。

 けれど、これはただのエンディングに過ぎない。

 これからもきっと俺達の話はどこかで続くし、死なない限りはちゃんと証だって渡す。

 だから想像していて欲しい。願っていて欲しい。

 おこがましいかもしれないけれど、俺達の幸せをどうか。

 何も返せないけど、それでもそう思う。

 せめて、先輩の幸せは願って欲しいな。

 まぁ、最後に長ったらしくいくのもなんだろ。

 簡潔に行くか。

 これにて俺と先輩の物語は一旦終幕である。

 けど、俺達は死んでいない。だから、またどこかで会えたりするかもな。その時は、またよろしく頼む。

 なんて、意味があるのか無いのか分からないセリフで締めくくりとする。


「またな」


 突然の最終回です。

 いや、もうそろそろ最終回とは何話前かに報告はしましたが、それが今回となりました。作者が書いてきた作品、特に連載作品はこれが2作品目ですが、完結を迎えたのはこれだけです。もう1作はまだ頭の中に物語が残ってるのでしばらく終わりません。

 にしても、最終回ってのはなんだか変な気分ですね。

 元々は1作目のスピンオフというか、別キャラの深堀りストーリーとして書き始めた今作ですが、書けば書くほどChatnoirにも京弥にも愛着が湧いたものです。最後こそ、かなり駆け足となりましたが、本当はもっと早く終わる予定だったんですよ?ただ、作者が話の流れを考えると、そこしか書かなくなって異様に文が短くなるので、合間の時間稼ぎに勤しみすぎたせいでこんなに長くなっただけで。

 まぁ、ともかくこの物語はおしまいです。

 嬉しいことにこの作品にポイントをくださる方や、ブックマークをしてくださる方もいて作者は本当に嬉しい限りでした。ほとんど宣伝をしてきていないからこそ、この作品と出会ってくれたことに感謝しかありません。

 と、京弥のモノローグのごとく、作者も最後の挨拶が長くなりがちですね。そろそろここも終わりますか。

 作者は1作目の方で動いてるので生きてるこいつを見たいと思った方はぜひそちらへ。

 さて、約1年半の連載ですかね。ここまで着いてきてくださり、ありがとうございました。Chatnoirも京弥も幸せだったこと間違いなしです。

 それではまたどこかで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ