第310話
第310話です。
曲の合間はMC役を務めるカオリさんが喋っている間に、アスナさんがチューニングを、そしてメグさんはカオリさんの既にチューニングの済んだギターとの交換に動いていた。
すっかりおなじみになったカオリさんのラジオ風MC。ライブが始まる前に、事前に集めたお悩み相談などをここで話して解決していくというものだ。基本は自分の行くライブ会場のみメッセージを送ることが出来るので、他会場に行く人のお悩み相談が読まれることはない。また、ライブチケットがあって初めてメッセージが送れるので、倍率は極端に上がることはない。
とはいえだ。ライブ会場には余裕で万を超えた人が入っている。際限なく人が応募する可能性が無くなるとはいえ、それでも結構な数だ。
「それでは次のお悩みー!えーと何々?私は結婚願望が強く、彼氏の前で積極的に某結婚雑誌を読むのですが、彼氏は中々そのことに気が付きません。どうしたらいいでしょうか。という事ですが、私も結婚してないよっ!!うーん……結婚してない人間なりに言えるのは、もう思い切り伝えるとかかなぁ。ほら、逆プロポーズってのも悪くないでしょ?」
こんな感じで話はとんとんと続いて裏での作業の時間を稼いでいる。何個か前には、とても純粋なライブの楽しみ方を教えてくれというのもあったし、時々ドロドロしたやつが来ることもある。
けれど、これはChatnoirのライブで、メッセージを選ぶのもChatnoirのメンバーなので、そこら辺の検閲がされることはない。いや、むしろあえてその検閲しないことで、リアリティのあるChatnoirからの答えというものも聞けるし、何より人はそういったものが案外好きだ。ファンからは受け入れられている人気コーナーなので悪い事では無いのだろう。
「続きましてー……って、あれもう次の曲?はーい」
マイクをオフにした状態のアスナさんにそう言われたカオリさんは頷くと「みんなお待ちのあの曲始まるよ!」と言って少し後ろの定位置に戻った。
会場は再び暗転し、モニターにとある映像が流れる。
数年前にヒットを飛ばしたドラマの映像だ。
そして、これはChatnoirの出世曲が生まれたドラマでもある。
映像の最後にチョコレートの雫が弾けるようなCGアニメーションが流れたと同時に、一気に照明とレーザーが会場を照らした。そしてカオリさんが囁くように曲名を告げる。
「bitterbitter……」
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は8日です。