第308話
第308話です。
東京の空は段々と薄暗くなっていく。
茜色の空に背を向けながらひた歩く人の波。その人達の大半は黒いTシャツに身を包んでいた。
歩く女性の中には頬に黒猫のシールを貼った人もいる。
目的地は東京の日本武道館。
人の波を避けつつ歩みをひたすらに進めて、見えてきた入口。その上には大きく「Chatnoir」と書かれた横断幕がかかっていた。
「刻っ!ついに来たよ!」
「だな。ライブ、当たってよかったな」
「うんっ!!」
近くにはそんな感じの会話をするカップルがいる。見た目的に大学生くらいだろうか。訛りからしても関西の方面らしい。懐かしい感じがする。
カップルの2人はウキウキとした様子でそのまま中に入っていった。俺もそれについて行くように入口に向かう。
今日は本当に有給を取っておいて良かったと思う。まさかこの大きな会場でChatnoirの演奏を聞けるとは思っていなかったから。
事前に用意しておいたChatnoirと書かれたバンドを手首にして、中に入る。チケットをQRコードで出すと自分の取れた席を探す。
日頃の行いが良かったおかげか、今回は最前列だ。なのでChatnoirの全員にも頑張れば認知してもらえる。
……なんて、そんな事をせずともあの3人は俺の事を十分知っているのだけれど。というか、1人は同棲だし。人には言えないけどな。
まぁ、ともかく、今日は彼女達の夢の舞台を全力で楽しむのだ。
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