第303話
第303話です。
キムチ鍋を盛大にパーッとしてからの後のお話。
2人で一緒に後片付けをしてしまってから、私達は各々の仕事に取り組んでいた。私は作詞で、後輩くんは動画の編集。いつも通りの平常運転。
番組の放送までまだ1時間ほどあり、それまでの間を潰すのにはもってこいの作業だ。
黙々と取り組む中で過去の出来事や、最近の出来事を元に作詞を進める。私から出てくる言葉は、私が体験した事からしか出てこない。なので、他の人よりも少しでも多く人生経験は積んで置いた方がいいのだ。
けれど、恋愛に関してはこれが最初で最後がいいかな。後輩くん以上に私の事を知ってる男の子なんて絶対にいないし、それに普段の私を受け止め切れるのもきっと後輩くんだけだし。
紙の隅に私作の後輩くんのイケメン過ぎる似顔絵を描きながら、私はにんまりと笑う。そんな様子が後輩くんの視界にもしっかりと写ったのか、後輩くんは指をさして尋ねてきた。
「これ、犬ですか?」
「……えっ」
「えっ?」
「こ、これ……後輩くん」
「え……うそ」
お互いに顔が段々と青白くなっていく。
きっと後輩くんは間違ってしまったことに対して。そして、私は私が思っているほど絵が上手くないという事実に対して。
け、結構自信あったんだけど……人間ですらないの?
なんとも言えぬ空気に苛まれながら、私達は切り替えるためにまた無言で作業に戻り始めた。
自信……本当にあったんだけどなぁ……。
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