第302話
第302話です。
片手にパンの入った袋を持ちながら、もう片方の手で後輩くんと手を繋ぐ。感じる温もりは非常に心地が良くて、落ち着く。きっとそれは私の苦労も悩みも見てきた後輩くんの手だからであって、他の人だとそうもいかないのだろう。
後輩くんのもう片方の手にはスーパーで買い足した食材の入った袋がある。
家に帰ればキムチ鍋。いい汗をかきながら私の出演したテレビが放送されるまで、ゆっくりと待つのだ。
「今日見る番組で先輩は何してきたんですか?」
「ん〜?それはお楽しみにー」
「気になるじゃないですか」
「ここで答え聞いちゃったら、楽しみが半減しちゃうでしょ?だから教えなーい」
後輩くんは「えぇ……少しくらい、いいのに」と不満げに唇を尖らせてそう話す。
ふっはっはっはっ……本当は別に言ってもいいけど、もし万一話した内容と違う所しか放送されなかった場合恥ずかしいからやっぱり言わないに越したことはない。
「とにかくお楽しみなんだよ!私から聞くよりも、きっとテレビで見た方が楽しいからさ」
これは本心。嘘偽りのない、まっさらで綺麗な気持ちそのものだ。
この真っ直ぐさだけはちゃんと伝わってくれたのか、後輩くんも納得して頷いてくれる。
「分かりました。気にはなりますけど、放送まで待ちます」
「うん、それがいいよ」
そんなこんなで私達はマンションに戻ってくるのだった。
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は22日です。