第六話 飛竜狩り-3
同時に飛竜狩りを提案した俺とカンナだが、その動機は全く違うところにあった。
「飛竜は、目撃情報だけで《WWU》が謝礼を出すレベルの幻獣だよ。倒せればそりゃ一番だけど、せめて鱗の一枚でも手に入れて持ち帰りたいよね」
カンナの動機はあくまで国と世界の利益。単にあの圧倒的な存在に「挑んでみたい」というだけの俺とは大違いだ。
テトは完全に俺寄り。マリアは、竜素材なら武器も防具もとんでもない強化ができるだろうという打算。胸の内はそれぞれでも、俺たちの意志は一つになった。
緊急クエスト『飛竜狩り』の始まりである。
決して目を離さすように見張っていたが、飛竜は山の周り上空をしばらく旋回したのち、やがて山の裏側に姿を消した。それからは一向に現れず、完全に見失ってしまったわけである。
「向こう側へ飛んでっちまったか?」
テトの言葉を俺は短く否定した。
「たぶんアイツ、この山に住んでる竜だと思うぜ」
「マジ? なんで?」
「あの存在感を見たろ。間違いなく生態系の頂点にいるはずなのに、それにしては山の周りを何度もぐるぐる回って、何かを警戒してるみたいだった。見つかったら殺されそうなくらい、すげえ殺気立ってたし。この火山にたまたま立ち寄ったって雰囲気じゃなかった」
カンナが頷く。
「私もそう見えた。ナワバリ意識っていうか、外敵から何かを守ろうとしているみたいな。もしかしたら……卵、とか」
おおっ、と三人同時に色めきだった。
「竜の卵なんて、持ち帰ればとんでもない成果になるわね」
「でっけー目玉焼き作れるな!」
「絶対やめろ!」
テトの頭を引っぱたくと、「いてぇなぁ」と何故か嬉しそうに笑う。
「じゃあ、目指すは竜の巣だな」
「どこかに足跡や体毛が落ちてたりするかも。痕跡を探しながら慎重に進みましょう。とりあえず、竜の消えた山の反対側を目指して」
「おー!」
山を登りつつ、ぐるりと回り込むように進路を定め、行軍を再開。環境調査は後回しでひたすら進む。これほどの大山だから途方もない道のりが想定されたが、三十分ほど黙々と登ったところで思わぬ幸運が広がっていた。
焦げついたような赤黒い山肌に、一点、巨大な風穴が空いていたのだ。人が並んで五十人は優に通れる広さの天然トンネルである。中は黒い大地の上を赤熱した溶岩が龍脈のように這っており、強烈な陽炎で視界が揺らぐほどの熱気で満ちていたが、山の向こう側に行くには大きな近道に違いない。
俺たちは迷わず、風穴の中へ踏み入った。




